湖月わたるさんのお誕生日を心からお祝い申し上げます。

いままであんまり、こういうファンらしい年中行事をやってなかったんで、何となく居心地が悪いですが(苦笑)。ま、多分最後の機会だし、とりあえず書いとけ(笑)。

これだけでは何なので。
ちょっと古い話ですが、宝塚GRAPH6月号のコーナー「FANTASISTA」を見て、何だか、どんどん格好よくなってっちゃうなあ、とため息をつきました。この期に及んで。
格好よく、と言うか。どんどん自由になっていっているように見える。自由に、余分なものをそぎ落として、シンプルに。『Across』のときも似たようなことを思ったけれど。
いや、あくまでも「私が」そう見えているだけですが。

いわゆる退団者オーラと言うのとは違う気がする。いつものワタさんのまま。むしろ、より、いつもの、普段の、自然な。
熱く熱くテンション高くサービス精神旺盛に盛り上げる姿もステキだけれど、ごく普通の自然体の姿も魅力的な人だから。と言うか、自然体の真っ当さ、それこそが一番の魅力で。いや今更言うまでもないことだけれど。だから、「いつもの」感じなのにどんどん、より格好よく見えてきて。

……えーと、それでなおかつあの男前と言うか少年と言うかリアル男子ぽさは流石だと思います。(あ、逃げた)

今週ちょっと時間がないので調子が出ません(6月上旬中旬遊び過ぎで気もそぞろだったツケ)。
次からは(週末あたりか)通常営業に戻ります。

宛名の無い手紙

2006年6月27日 宝塚
今回は観劇感想でも何でもなく、ちょっとうざい話です。

白状しますと。
ワタさんの退団発表があったときこの日記に書く内容は、1年以上前からほぼ決めていました。あとはその日にあわせて具体的な数字やら何やらを入れるだけで。
褒めてくださった(?)方もいたので、用意した原稿どおりだったなどと言うと夢を壊すようで申し訳ありませんが(苦笑)。

そんな風に、いつ来てもおかしくない日だと準備していたのに、それでもいざその事実を聞いたときは手が震えて、仕事中でしたが(駄目じゃん)書きかけのメールを何度もタイプミスしたり、翌朝起きられなかったり。目覚ましの音に一旦起きてまた寝なおすことはよくあるんですが(駄目駄目じゃん)、気づかずに起きないというのは私にはとても珍しくて、そんなに目覚めたくなかったのかよ自分、と思ったり。
や、その時はそんなこと言いませんでしたけどね。見栄っ張りで不正直な人間なもんで(笑)、割と。

ええと、何が言いたいのかと言うと、いつもどこかで退団を意識しているトップのファンでもこんなに動揺するのだから、そうでない人の場合はどんなにか、と言うことで。
生半可にわかったふりをするのはかえって失礼かもしれないとは思うのですが、でも、お互い11月まで頑張りましょう(何を?)(いや色々と)。

更に、わたるファン(一応)として勝手なことを言ってしまうと、Acrossメンバーにはやめてほしくない、と思っていました。
私には、あれはある意味、ワタさんの「遺言」に見えていたので。(と言ったら友人知人にまだいるのにと言われたけれど、遺言は生きているうちに書くもんだろう)
「この子達はこんなに素晴らしいことが出来るんだよ。みんなステキでしょう」と、自分がいなくなっても彼らをよろしく、と言っているような、そういう意味での遺言。と同時に、ここで今までに無い経験をした、そのことを活かしてこれからもステップアップしてくれるといいな、と言う願望もあって。
本当に、勝手な願望です。

好き勝手言えるのは今のうち。
なので、次回公演ワタさんとふありひよりのミニマムかわいこちゃんズとの絡みがあるといい、更にワタみらんでチャイナドールを是非、と願望を述べておきます(サヨナラショーでもいいですよ)。
あ、でもしぃふあり、ちぐひよりの再戦(戦?)も見たい。
(以下引用)
2006/06/26
星組 退団者のお知らせ
下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。

(星組)
 しのぶ紫
 湖月わたる −すでに発表済み−
 高央りお
 青空弥ひろ
 大真みらん
 涼麻とも
 真白ふあり
 湖咲ひより

2006年11月12日(星組 東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団
      
(以上引用)

誰がやめてもかなしいのはわかっていたから、誰もやめないように祈っていました。
さすがにそれは無理だとしても、例えば、うんと下級生で宝塚に入ってみたものの合わないと気づいて新しい道を踏み出す、やめるのはそんな人だけならいいのにと思っていました。
でもやっぱり、月曜日はもう楽しかった馬鹿話のことなんて書く気分じゃないだろうなと予想して、昨日はコパの小ネタを夜中までかかってアップしてみたりしました。

しのぶさん、エンディ、やっひー、みらんくん、涼麻くん、ふありちゃん、ひよりちゃん。
やめるなとかずっといてくれとか言う権利は無いから。
ただ最後まで見送るだけ。
あなたがたの舞台を、最後まで。そして、ちょっと早いけれど、その先の新しい道へ踏み出す後姿を、幸多かれと。
書きたい事を書きたい順に、再び(笑)。

今更『コパカバーナ』の話。
結局、私としては全然見足りませんでした。
バウと梅芸の期間が被っていてどっちをどれだけ見るかすごく悩んでずらしてくれればいいのにと思ったものの、ずれてたら5週間通うことを考えてやはりこれで良かったんだと思ったのですが、でもやっぱりずれてくれても良かったなあと(わがまま)。

まずは、アドリブとか小ネタとか、気になったところから。

【アンコール】
最後はオーケストラの演奏で終るんですが、その最後の方で一旦引っ込んだワタさんが再登場します。
初日は「初日だからか?」と思い、その次に見た6/10(土)16時は「阪急貸切だからか?」と思ったのですが、どうやらその時点では既に、「皆さん踊りますよ〜」とワタさんの呼びかけに客席スタンディング〜その後「踊ってますか〜」と再登場、の流れがが恒例になっていたらしいですね。
毎回違う登場シーンを記憶の限りメモ。
・6/10(土)16時
 レインボーちゃんの羽扇(黄色だったと思う)を両手に持ってそれで顔を隠して登場。ひらひら踊ったりしつつ。
・6/17(土)12時
 頭に羽根つけて。残念ながら黄色じゃなかったです(笑)。白で3つに分かれてました。
・6/17(土)16時
 「エルブラボー」の人魚の青い岩のセットに乗って、あのポーズでちゃんと本を広げて。当然衣装は直前と同じ金スパン。途中で降りて踊って去っていったのでセットはセットだけするする引っ張られて戻っていったのが妙に可笑しい。
・6/18(日)16時
 ワタさんか、と思ったらまやさんが! おおーと客席が盛り上がる中、続いて出てきたのはグラディス…コスのワタさん!
 でも実は私は一瞬何の衣装だか良くわかりませんでした。スカートの下が細身の黒いズボンだったので(理由はそれだけか? ただ単にワタさんが着ると全然違う衣装に見えたってことじゃなのか?)
 このグラディスコスについてはモチ子さまが素晴らしいイラストで紹介されているので、謹んでリンクをはらせていただきます。本当に素晴らしいんです、これが。
http://mochiko.blog13.fc2.com/blog-entry-76.html

この一連のアドリブ(?)、星担、ワタルファン以外にひかれたらどうしようと不安になったんですが、そうでない友人知人にも大ウケだったんで、一安心(笑)。
……いやほんとすごいよね。そのサービス精神と言うか楽しそうなところと言うか。

【貸切挨拶って】
6/17(土)12時のJCB貸切。
開演前、司会者さんが組長からのご挨拶を告げる。袖から出てきたのは、既にグラディスの衣装の英真組長。
「煙草はいかが〜、葉巻はいかが〜?」「コパカバーナにようこそ!」「今日はJCBさんの貸切なんですって、すごいわねぇ」って、それ組長挨拶じゃないじゃん!(大笑)
「あら呼ばれてるみたい。それじゃ楽しんでってねぇー」とグラディスに言われて、この日のコパは始まったのでした。
あー楽しかった。この組長にしてこのトップあり。そしてこの組子あり。

【魅惑の振り付け師】
6/17午後の組総見の日だったか。
トニーのアレンジに「早すぎるわ!」とローラが文句を言うと、毎回スキップが黙んなさいよとばかりに威嚇しに来るのですが、この日は飛蹴りを喰らわせた!
これがまた華麗な飛蹴りで、すげーと客席大喝采。いや実際、あの狭い場所であれは上手いと思う、マジで。
毎回毎シーン確実に笑いを取っているこの場面、18日の前楽では「スキップ」と見かねたトニーが声かけて止めてました。

【マシンガン野郎どもと客の男】
リコとコンチータが来たコパカバーナでの下手小芝居が熱かったです。
最初はルイス=ゆーほ氏とミゲル=ともみんの凸凹コンビを愛でていたのですが、客の男=直樹じゅんの熱演に気づいたら目が離せなくなってしまいました(笑)。
ライトも当たっていないのに頑張る(そして毎回派手になっていく)彼らの小芝居劇場はこんな感じ。
・リコとコンチータ、子分のルイスとミゲルを連れてコパカバーナへ。
・ダイヤの指輪をかざすリコ。すかさず自分のスーツの襟を広げるルイスに、その襟でダイヤを磨くリコ。ミゲルも気合入れて構えるも、磨いてもらえない……。
・リコとコンチータは上手のテーブルに。ルイスとミゲルは下手へ。いい気分で楽しんでいた客の男を威嚇してどかすミゲル。不承不承席を移る客の男。
・ミゲルはリコのコートをウェイトレスに預ける。ここ、一度スーツのボタンにコートがひっかかっちゃったらしく、なかなか外せず四苦八苦してました。それをルイスと「何やってんだお前」「いやひっかかっちゃって、外れないンすよ」「(ウェイトレスに)何だよ見てんじゃねーよ、後で来いよ」という感じに、ミゲルとして一生懸命取り繕っているのがツボでした。いいぞ。
・だらしなくふんぞり返るまだ若いギャング、弟分のミゲルと、すっとさりげなく座っている兄貴分のルイスの対照がとてもいい感じ。
・ショータイム。色っぽいお姉ちゃん達に大喜びで立ち上がって拍手喝采のミゲルと客の男。女の子が寄ってくるとウハウハ(死語?)の二人、一度なんかミゲルはがしっと鷲掴みでした(…)。客の男の鼻の下伸ばしっぷりもすごいぞ。完全にオヤジ。
・しかし、気のない様子でクールに拍手するルイスの姿にはっとするミゲル。慌てて見習い、自分も気のない風を装います。でも客の男ははじけたまま。
・「その子なら埋めた場所にデイジーが生えてるワ」コンチータの言葉にうひゃうひゃと下品かつ楽しそうに笑うミゲル。調子を合わせて笑う客の男。でも顔をそらすと「こいつらやべーよ」と焦り顔。
・見張るように言われたウィリー=ゆかり、何故か客の男の膝の上に座ってお勘定(?)で顔を隠しリコの様子を伺う。何やってんだ、どけと猛抗議の客の男(美人でも男は要らないらしい)にも耳を貸さず。
・リコの様子を伝えに行こうとしたウィリーの背中に銃を突きつけ追い出すミゲル。その様子にびびって十字を切る客の男。(てことはウィリーを車に押し込み海に沈めたのはミゲルか)
・「コンチータはルイスと他の店に行く」と言うリコ。おっ、といきなり姿勢を正し髪を撫で付けるルイスがかわいい(笑)。
・ヤクザな連中が居なくなり、やっと羽を伸ばす客の男。酔っ払って隣の椅子を口説いてみたり。最後はぐでーっとなったままセットごと下手に消えてゆきます。

ここ、ともみんのチンピラぶりも素晴らしいのですが(だらしなくふんぞり返る座り方は絶品)、特筆すべきは直樹じゅんの「普通のオヤジ」芝居です。なんであんなにナチュラルにオヤジなんだ。まだ研3なのに(笑)。

【サンキューの男】
その直樹じゅんの同期、朝都まお。オーディション第1号のサンキューの男。お笑いでも何でもワンフレーズソロがある美味しい役で、しかもなかなか堂々たる歌いっぷり。段々遊び心が出てきて、コケ方が派手になったり気合入れて音はずしてみたり、そのやる気が楽しい。
ここ、ピアニストの大輝真琴も、ローラの羽根を見て頭の上で手をパタパタやるときの情けない顔とか、面白かった。
このとき下手では掃除機CMソングのオーディション。ぺったり七三分けと困惑真顔のマイクの男=一輝慎が可笑しいです。

海外ミュージカルと言うことで期待しなかった割には、下級生にも小芝居のしどころがあって、しかもみんなそれを逃すまいと全力で喰らいついているのが楽しくも愛しかったです。

【彼は美形キャラ】
天霧真世氏。85期のビジュアル系狙い。私的には同じく85期のぎんがみちゃんと並べると対照的な感じでなかなか美味しい(余談)。
今回役らしい役はなし、でいいのかな。
が、最初のコパカバーナの場面で客に言い寄ってひっぱたかれるプライドの高そうなコパボーイも、「俺の血圧を下げてくれ!」とブチ切れるピアニストも、どっちもはまってました。つか、彼がやるから「気位の高い神経質そうな美形」になるのか。

【最強星娘と包容力】
2幕、トロピカーナ。
きんさんに武器を持たせたら誰も敵わないと思う。でもそのきんさんとすっかり夫婦だったゆうほさとる氏の包容力を褒め称えたい。カップル通り越して夫婦。リコが撃たれた後の場面でとりすがるきんさんを支えていたその男ぶりと来たら!
トロピカーナでは、コンチータに「おばさん」と言うリコに「ひどいわっ」と自分のことのようにショックを受けるきんさんしのぶさんがツボでした。そして、その様子を眺めてびびる若い男の子たち、一輝くん、ドイちゃん、(あと一人誰か忘れた)が更にツボ(笑)。

娘役の皆さんもダンスナンバーがたくさんあって小芝居のしどころもあって大活躍で大層楽しかったのですが、特にグランド・セントラル駅で傘持って下手から飛び出してくるエレナ嬢にいつも目を奪われました。リアルアメリカンコメディドラマ。

【同期小芝居】
・コパカバーナにて、最初の場面。娘役一人を挟んだ朝都まおと直樹じゅんの関係が謎。一応朝都くんと娘役ちゃんがカップルなのかと思いきや(二人を座らせて自分は立ったまま乾杯する直樹氏)、途中彼が中座すると直樹氏が女の子口説いてないか?
・トロピカーナのダンサー、ドイちゃんとともみん。エルブラボーでエンディに怒られ、あっちだこっちだ、お前のせいだ等々やりあうのがカワイイ。つか、この身長差が(笑)。
話は飛ぶけれど、ドイちゃんは相変わらずバネを感じさせるダンスで目を引くなあ。

【バカップル万歳】
わたとな、トニーとローラ、スティーブンとサマンサについては後でちゃんと書きたい……。
個人的に一番ウケたのはスティーブンの「引っ越しましたー!!」です。んなベタな。つか無茶な(笑・大好きだ)。
あと冒頭のサマンサのシャワーシーン(シルエットですが)は反則。何だ「シャワーの時間よ(はぁと)」って!(笑・いやここも大好きだけど)

……いつになったら真ん中の話と舞台感想が書けるのやら。
見たものと書きたいことに時間が追いつきません。
1日24時間1週間168時間観劇と感想書きに使えればいいのに、という発想自体が社会人失格。甚兵衛さん(やらずの雨)も遊ぶのはいいが自分で働いて稼いだお金で遊べって言ってたし、怒られちゃうよ。

『コパカバーナ』は昨日の前楽がマイ楽です。6月は今までの行いが悪すぎて千秋楽をあきらめる羽目に陥りました(自業自得)。
アドリブ満載ノリノリが予想されるだけに残念至極ですが、あちこちで報告を読めることを期待して断念。とりあえず、前楽で「今日も駄目だったー!」と明日何かありそな前振りをしていたありがとうの歌手・朝都まおがどうだったか、マイクの男・一輝慎はやっぱりぺったり七三分けだったのか、リコの子分その2・ともみんは自分のスーツでダイヤを磨いてもらえたのか、どなたか教えていただけると大変嬉しいです。(よりによってそこなのか)

(ところで、一輝慎と言えばグラフの同期紹介に載っていて驚きました。だって星組これで4人目ですよ。いいのか86期。いや嬉しいけど)

書く時間がないが書きたいことリスト。

『フェット・アンペリアル』
・国語の時間−行間を読む
・おひさまとミラーボール−しぃすずみユニットのススメ(笑)

『コパカバーナ』
・だらだらと場面とキャスト語り(今更!)
・乗り遅れた−全体感想その1
・誰も彼もが恋に落ちる−全体感想その2

『やらずの雨』
・感想……書けるのか?
 組替早々の音ちゃんが元気でイキイキ頑張っていて嬉しい。つか可愛いな君!(超今更)

……きっと全部は書かない。いや全部書かないかもしれない。(タイトル並べた時点で満足した感もあり)
『コパカバーナ』湖月茶潜入してきました。忘れる前にとっとと書いときます。

会場後方の扉からワタさん登場。紫スパンの上着(ポスターでトウコさんが着
てるような奴)に頭に白い羽根つけて。場内いきなりヒートアップ(笑)。
かかっている「コパカバーナ」の局を口ずさみながら客席の間を練り歩き、壇上にたどり着くと、まずはお着替えをと言うことで一瞬退場、白ブラウス黒パンツ姿で戻ってきました。
改めて乾杯。「これからクロアチア戦もありますが、私達も盛り上がって行きましょう!」と。今回はシアター形式でお茶もペットボトル。その様子に乾杯後は「蓋閉めてくださいねー」等と。乾杯後着席、椅子が高いようで座ったら見えなくなっちゃうと心配していた後方席から安堵の空気が(笑)。いやお疲れのところ申し訳ないですが。

早速質問コーナー。覚えている範囲で。

『コパカバーナ』について。
からっと楽しくて、でも少し切なくて、こういうミュージカルコメディをやってみたかった。最初聞いたときは「コパカバーナってミュージカルになってるんですか?」と聞いてしまったけれど台本をもらってみると「まるで私のためにあるような作品じゃない?」(嬉しそう)(場内拍手喝采)

今回演じる上で苦労(工夫)している点について。スティーブンは普通の男の人なので、その辺を考えて靴を変えてみたと。いつものヒールのある短靴でなくて、普通の男の人がはいているようなベタ靴。そしたら「なんか、本当に男の人になっちゃったみたいで(苦笑)」は?「男役じゃなくて、男の人。見に来た人にも、どうしちゃったのって言われるんですよ」シルエットなんかも違わないようで違うんだとか。いや、確かにあの「日曜日のお父さん」的だらしなさのリアリティはすごいものがありますが(作りこまない方がリアル男性っぽいってのも…)。
その靴の履き心地はいかがですか?に対して「いいですよ。でも段々伸びてきちゃうみたいで、脱げないか心配」いやあと1回だから。
お稽古場でも「普通の人みたいで、でも格好いい」リー先生を観察してたそうです。そのダレン・リー先生。普段は大人しいのに踊りには情熱的で、すごいなあと。

梅芸の感想は?には、狸、全ツに続いて3回目だけれど、全ツでは2日間だけだったので、と言って「3階席まである劇場って珍しいですよね?」と。3階席までお客さんがいるんだ、と思うと、何だか嬉しいようです。「初日頃は音響が良くなくてご迷惑をかけたみたいですが」あ、改善されたのか(昨日は3階観劇で、噂ほどひどくないと思っていた人)。

トニーとスティーブンの演じ分けは?に対し「靴が違う?」。あまり演じ分けていない。スティーブンの理想の自分がトニーなので、とのこと。

ローラに惹かれたのは「田舎っぽいところですかね?」は?「その帽子それでいいの、って言うような。でも夢持っちゃってるんだ、みたいな」うん、何となくわかる気が。

失敗談。「今日出遅れました」VISA貸切の方で私は見ていなかったのですが、何故かゆっくりしてしまったんだとか。「ここあんまり時間ないんだよなーと思いながら飲物飲んでたりして、気がついたら舞台がシーンとしてて」反省、だそうです。

スティーブン、リコ、サムの中で結婚するなら誰?に対して、うーんと考えて「サムかな。チワワみたいで可愛いし」。そのサムは何故トロピカーナであんな格好をしているのですか、には「サムにとってハバナはああいうイメージなんです」ハバナ=リゾートだそうで。「単にそれだけです」

着てみたい衣装は?は「今日の2公演目を見ていただいた方にはわかると思いますが」そう、午後の回のアンコールで、いつもワタさんが出てくるところでマヤさんが出てきた!と思ったら、続いてグラディスコスのワタさんが!いや、スカートの下は黒の細身のパンツでしたか(宴会芸テイスト)。

トニーとスティーブン以外でやってみたい役は「サムは敵わないですからねえ」ローラのオーディションはやってみたいそうです。アンコールで一度ピアノに乗って出てこようかと思ったけれど、危なそうなのでやめたと(笑)。

好きな曲は?には「コパカバーナはやはり名曲だと思います」と言って、でも「夢ではない君」が好きですねと。「まぼろし」もいいし「スイート気分」も。結局全部好きです。

好きな場面。これも考えて「最後スティーブンに戻った後。あそこに向けて演じているので」。

最後階段の上に乗ったまま段が前に出てきますが、ご気分は?「最高です」。二人がかりで押してるんだそうですよ。人力なのに驚き。ちなみにエルブラボーの高速せり上がりも二人がかりなんだそうです。そこも人力なのか(驚いた)。

その次にゲームコーナー。3択クイズに答えて最後まで正解した人が残る、と言うもので、易しいのもありましたが「セットの楽譜の左端の音符は何?」とか「ローラがさらわれた後の場面でトニーは何回ハバナと言っているでしょう」等の難問も(わかんねーよそんなの・笑)。20問やって結局2人残り、最後ジャンケンで決めてました。

プログラムにはありませんでしたが、ここで握手コーナー。流れ作業的にスピード進行ですが、ちゃんとひとりひとり目を見て握手してくれます。ちょっと本当に格好いいお兄ちゃんて感じなんですけどあの人。

そしてこれもプログラムに書いてないけれど、歌のプレゼント。曲は「今の気分に合わせて」と言う訳で、「スイート気分」でした(可愛いよねこの歌)。
抽選のプレゼントコーナーの後、会場からのプレゼントは今着ている白いシャツ。くるっと回って見せてくれました。肩のところがウロコみたいな飾り布になっていて「何だか可愛いですね」と。

時間が余ったのでもう少し質問。
結婚5周年のプレゼントは何で、どこに隠したんですか?色々言ってましたが結論としては、用意してません、と。
スティーブンとサマンサの馴れ初めは?に対して、となみちゃんと色々話し合ったそうなんですが、話をしたのが随分前なので、結局何にしたんだっけ?と自問自答。スティーブンが音楽事務所(?)をやっていて、そこで働いていたしっかりした女の子、と言う感じだそうです。サマンサの方が少し年下だとか。

『Across』の話も。
念願のリサイタル、嬉しかったことは?に、1幕ではラフに踊らせてもらったこと、2幕も色々やらせてもらって、特に名倉先生の椅子の場面が嬉しかったと。ご自分でリクエストしたようです。以前『Switch』で嘉月さんと椅子の場面があったのだけれど、それの第2弾ということで。お稽古の最初は先生の振りに見とれてしまって、と。
東宝公演中のお稽古で大変でしたか?には「大変でなかったと言えば嘘になりますが、でも楽しかったです」と全然違う世界で、お稽古場も東宝にはないからみんなで移動して別のスタジオで、青春!って感じでした、と。
失敗談は?に「……ジーンズのチャックを3回ほど開けて出てしまいました」何でも、普段は横のファスナーが多くて早替わりで衣装の方がさっさと閉めてくれるんだそうで。しかも最初の場面は上から別のズボンをはいていて早替わりで引き抜くので、確認している時間がないと。でもさすがに3回目には自分でもちょっと、と思ったとか。後は、帽子が上手く飛ばなかったり。

オフネタも。
海外旅行について聞かれて、行ったところで印象に残っているのはイタリア。でも青の洞窟に目の前まで行って波が高くて引き返してきたらしい(残念)。言ったことのない場所ではキューバに行きたい。アルフォンソ先生に会いに。「モレーの頑張っている姿も見たいし」に会場から笑いが起こると「みなさん覚えてますねえ」と。コパカバーナ、いやトロピカーナもキューバですよ。
最近見た映画や舞台のおすすめは?に対し「見てません」そんな暇ないよねぇ……。これから見たいのはピンクパンサー、それに当然、パイレーツオブカリビアンだそうです。

忙しい中リフレッシュ方法は?に「アンコールですね」(笑)。
アンコール、楽しんでいただけましたか?に対して会場大拍手。私も楽しいですと。毎回違う登場の仕方のアイデアは、周りのアドバイスも取り入れて。みんなが楽しんでくれると嬉しい。たまに何が起こったんだろうと言う顔をしている男性がいると、すみませんと思うけど、でも皆さんいい顔してますよ、と(笑)。

最後の質問、だったかな?わたるさんは「お帰りはサンバステップで」と言ってますが見本を見せてください、に、いきなりその場で湖月わたるサンバステップ講座が!(爆)
当然「みなさん立ってくださーい!」ですよ。「手拍子だけじゃないんですよ」「基本的には123、123で」「上手いじゃないですか!」「これで明日はばっちりですね」……いや、私は出来ませんでしたけどね(運動神経皆無な人)。でも楽しかったです(笑)。

今後の予定。大劇場、TCA、ディナーショー『Passion』、東宝。「最後まで男役に磨きをかけて(ポーズつけ)行きたいと思います、最後まで走り続けます」と。
「皆さんと一緒に走れることを、光栄に思います」……(またそんな殺し文句を)。
「ついてきてくださいねー!」に拍手拍手。

いつもの、明るく前向きで誠実な、いつものワタさんでした。
まだ先があるからと思ったり、でもお茶会もあと2回と思ったり。でもこの人は最後までこのまま行くのかな、と言う気もしたり。
……ま、どっちでもいいかぁ(ローラ@となみ声で)(笑)。

そして私は大急ぎでホテルに帰って日本対クロアチア戦を見たのでした(結果はご存知のとおり)。
色々書きかけですが、公式に反応しておきます。

(以下引用)

2006/06/17
湖月わたるディナーショー(追)
※タイトル、その他出演者、詳細が決定いたしました。

<タイトル>『Passion』
<構成・演出>三木章雄 <制作>宝塚クリエイティブアーツ
<出演者>(星組)湖月わたる、白羽ゆり、南海まり、花愛瑞穂、音花ゆり

(以上引用)

相手役も出演、コーラスメンバーはオール娘役。
発表されてみれば納得の布陣です。
みなみちゃん、かぁさん、コロちゃんと踊れて歌える娘で揃えてきましたな。南海、花愛両嬢は前のディナーショー『Aqua』にも出てくれてましたよね。コロちゃんとワタさんの絡みは今までなかった(と思う)ので非常に楽しみです。
そしてとなみちゃんの出演が嬉しい。『Across』には出ていなかったのでDSには出てくれると思っていましたが、良かった(わたとな礼賛)。
……でもあのラブラブ(バ)カップルにはディナーショー会場は狭すぎる気もしますが。あてられに行こう(笑)。

演出は三木氏ですか。そういえば『Aqua』も三木せんせでしたね(多くは語らず)。

問題はチケット争奪戦か。東西あわせて5公演。
今回はキャラクタと出演者の話を。
プログラム順に参ります。

ウィリアム=立樹遥、については既に色々書いたしこれからまだ書くかもしれないので、ひとことだけ。
全編を通して一番格好いいと思ったのは、最後の方、膝をついてエンマを支えて、抱いている姿。
ここを格好いいなんて思って見てるなんて不謹慎の誹りを免れませんが、でも、もう二度と動かないエンマを膝にもたれさせてしっかりと支えている姿が、その大きさに映える赤い軍服、立てた膝の高さが強調されるブーツと相まって、本当に素敵だと思ったんだ。物語に没入する心の一部で。

エンマ=陽月華、についても既に色々書いたしこれからまだ書くかもしれないので、ひとことだけ。
本当にうめちゃんすごい。上手い。上手いと言うか、いい娘役と言うか、いい役者と言うか。『Across』のときも思ったけれど、ダンスは上手いけどガサツな現代っ子、と世間が思っている隙に、陰影を表現できる魅力的な女性になっていた。
エンマの表現。モルニー伯爵を引っ掛けたときのしてやったりと言う表情、シャーベットを諦めるときの無防備な女の子の姿、ケイティのカンカンに目を奪われて心底嬉しそうな顔、そんな表情の一つ一つが、すごく魅力的で、エンマの存在にリアリティを与える。

ニール=涼紫央
何そんなに口とんがらせてるんですか。かわいいじゃないかこいつ。
いやもう、今回のニール=すずみんは永久保存版ですよ。どっから見てもセレブと言う我々(我々?)がすずみんに抱いているイメージを満足させつつ、実は可愛い奴なんだよという一粒で二度美味しい、みたいな役で。本人念願の悪役でなくて残念だったけど、でもすげー楽しそうだし。よく「二番手はオイシイ」と言われるけれど、二枚目半のオイシイ二番手をイキイキと演ってました。「しあわせ、ですか」は名台詞。でもあんまり崩しすぎない方が好みでした。大野先生が「二枚目でやってください」と言ったのは正解かと。
シンシアとの恋の顛末も微笑ましいしねー。悲劇に終る主人公カップルとは別に、堅実に平凡に結ばれるこの二人がいるから、ほっとする面もあるわけで。
コメディばかりでなくて。私が好きなのは、母親のことを「どうして父に相応しい女じゃなかったんだろう」と言うウィリアムに「仕方ない。身分が違うんだ」と言う場面です。この言い方が、言葉に反してすごく優しいので。優しいと言うか、共感。「貴族の社会に馴染めないでいる(byシンシア)」馴染もうとしてそれまでの自分の世界との軋轢を抱えているニールならではの共感。でもそんなことを知らないウィリアムはニールの共感に気づかずに、自分の思いに入り込んだまま話を続けるのだけれど。
結論:やっぱりこの人上手い。

クロード・ブランメル=萬あきら
黒い軍服、黒い眼帯、そして「ダンディの末裔」。素晴らしい。書き込み不足な部分の多い役どころを、存在感で持たせた感も。
ワルツの場面で一人だけ段違いの滑らかさに感動しました。他と全然違う。

退任前のウィリアム=一樹千尋
最初と最後だけの出番という贅沢な使い方。でも良かった、ヒロさんが「その後のウィリアム」で。しぃちゃんのウィリアムの「その後」であることを意識してくれてますよね。表情とか喋り方とか。特に最後去り際の晴れ晴れとした笑顔が。
ナウオンで「お稽古中『仕事の最後の日はこんな感じなのかな』と思って泣いてしまったというエピソードに、あれだけの出番でそこまで掘り下げてくるとは、役者なんだなあと感嘆。

カウリー男爵夫人=万里柚美
占い好きのご夫人。浮気性の旦那に愛想を尽かし優雅に別居中。若くてきれいな男の子が好み。
『花のいそぎ』のときと似たところのある役どころですが、更に屈託のない女性。お笑いやっても品があって綺麗だから、上流階級の奥様というのに説得力あるよなあと。
カンカンに混じっているのが衝撃でした。いや素晴らしかったです。更にフィナーレでにしきさんとみきちぐを両脇に従え踊られた日には、一生の語り草に。

モルニー伯爵=にしき愛
すげーエロいです。色気だだ漏れ。前半の色好み全開な姿もすごいですが、後半のシリアス芝居、「実はわかっている」迫力もすごい。あまり説明はないのですが最後に洩らした言葉、彼は何に何故「傷ついた」のかずっと考え込んでいます。
カンカンではセンターパーツ前髪で若作り。その落差がまたすごい。

ロバート=美稀千草
さっきからみんな褒めてばっかりだけど、みきちぐもすごい良かったですよ。コメディ担当、顔芸だけで笑いを取っていく強者。だけど、アーサーとのやり取りではハートフルな芝居もしていて。上手い人なんだよな、やっぱり。
ウィリアムとの凸凹コンビは最高でした。同期っていいね!つか、同じ組にこんな対照的な同期で残っていたら大野氏ならずともコンビで漫才させたくなるよね(そうか?)。ちなみに私が一番好きなのは「うらやましい」と言ったロバートを「こいつです」とブランメルの前に突き出しておきながら怒鳴られるロバートに「うわぁ」という感じで見ていられず顔を背けるウィリアムと、そんなウィリアムにくわっと怒り顔のロバートです(細かいよ)。君ら小学生か(笑)。
途中暫く出てこなかったのでクリミアの前線送りになったのかと心配していましたが、1幕ラストで再登場して一安心(いきなり殴られてるけど)。
ところで、「英国では中佐以下の階級の売買が可能であったらしい」とわざわざロバートのプロフィール欄に書いてあるのは、要するにそういうことなんですか?(笑)

シンシア=彩愛ひかる
諜報機関の事務方。すごく有能そうなお姉さん。職場に一人ほしい。
手堅く有能で大人、なのに可愛い。ニールに対してもお姉さん的態度なのだけれど、告白のとこは可愛いのよ。このカップル、最初は意外だったけど納得でした。つかこの二人の場面がとても微笑ましい。少女漫画王道。そしてウィリアム=しぃちゃんがニヤニヤしながら微笑ましげに見守っている表情を見るのが好きでした(話ずれてる)。

パイーヴァ侯爵夫人=毬乃ゆい
出番少なくて、歌もここぞという聞かせどころでなくてやや勿体無かったですが。
ロシアに残した息子がいる、と言うのがね。ベタなんだけど、説得力があった。どこか陰と言うか不幸そうな雰囲気が。

ミス・ハワード=南海まり
すげー(圧巻)。すごくてつよくて上手くて可愛い。
79期二人を手玉に取る85期娘役(笑)。「初心な青年を翻弄する経験豊富なご夫人」の図に何の疑問も違和感もないのはどっちがすごいのやら。
堂に入ったものです。本当に上手い。
単なるコメディ担当ではなく、2幕では粋な気遣いを見せる大人の女性で、これまたあったかくて優しくてちょっとお茶目で粋でステキだった。あ、歌も良かったです。

アーサー=麻尋しゅん
その板についたいいとこの坊ちゃんぷりに震撼。そしてウィリアムとの微妙な距離感や機微の表現がすごく上手い。可愛い男の子なのに何かひっかかりのある演技をしてるの。
この、素直で可愛い弟、屈託がなさそうででも口に出せないことを抱えている、というアーサー、しゅんくんはもっと大人っぽい役に挑戦したい年頃かもしれないれど、でもしゅんくんでないと出来ない役だなあと。いやもう本当にねえ、微妙な傷つき方とか戸惑いの表情とか、すごく上手いよね。ロバートのところでも触れたけれど、言うか言うまいか迷ってロバートに視線を向けるところとかすごい好き。
アーサーが可愛い系の役な分(?)群舞ではギラっていてギャップがステキです(笑)。

ケイティ=妃咲せあら
かーわいー。
夢に真っ直ぐなちゃきちゃきした下町娘。若草色のドレスが似合ってた。いやもうほんとに可愛いよねー。可愛くて真っ直ぐできらきらしているからこそ、夢が絶たれたときに気丈に振舞う姿が泣けるのですが。ちなみに私もサトリさんもエンマとケイティのこねずみデュエットが一番の泣き所です。
うめちゃんエンマがシャーベット代を落としちゃったときに「急いで!」とアドリブ飛ばしていたのも驚きました。舞台度胸あるよな。
カンカンで一瞬すずみせあら(『それ船』カップル)が実現していたのが嬉しかったです。

ここまでがプログラムに扮装写真入り。
残りの中で、私的メインキャスト陣。

タチアナ=真白ふあり
かーわいー。
せあらとは違った意味で可愛い。強気でクールなのにちっちゃくてかわいい、ちっちゃくてかわいいのに強気でクール。『花のいそぎ』の呼子に続き、大野氏はふありちゃんにこういうキャラを振るよね。実際似合ってる。真紅のドレスも甘くない感じにすごく似合います。
しかし強気なのはいいけれどあれだけ体格差のある相手にわざわざ接近戦に持ち込まない方がいいと思うぞタチアナ。せっかく飛び道具持ってるのに。(それに対してウィリアムの「武器を持った相手に素手で格闘戦」率の高さと言ったら(笑)。タチアナ×2、ブランメル、サマービル)
ふありちゃんについては、オープニング後日譚パートのエミリーも可愛かったです。こっちはクリーム色のドレスで普通にお姉さん風。彼女も諜報部員だけど。
本編でクールビューティな分、フィナーレのカンカン(ツインテール!)のはじけっぷりも愛らしかったです。隣がみなみちゃんで、その身長差もたまんない。ここは毎回ふありに釘付けでした。

クリス=銀河亜未
かーわいー。
これまた別の意味で(笑)。可愛い弟くん、シンシア姉さんとのコンビは絶妙。「学校じゃないんだから」「…はい」が好きです。
何と言っても彼の見せ場はニールとシンシアが相思相愛とわかったときの狼狽振り。「何これ」「姉さん?」毎回確実に笑い取ってました。その後の「仲間じゃないか」のときも、最後まで一人だけ嫌そうなの(笑)。面白いな君。
でもコーヒーを持ってくるあたりの、普通に有能なフットマンとしての仕事振りも良かったです。
あとはフィナーレのカンカンで娘役ちゃんの側転補助に備えるところ。ズボンをちょっと引っ張って膝を曲げて構える姿が、本当に男の子みたいで可愛かった(細かいよ)。

サマービル=水輝涼
私的には今回のニュースター。エンカレ以来波が来てますよ彼。
実際「あれは誰?」と聞かれる率高し。(ふありちゃんもかなりだけど)
サマービルと言う役が、シリアスでクールな敵役で美味しい役ではあるのだけれど、それをちゃんとモノにした水輝くんが偉い。
格好いいよねえ、ナイフの取り出し方構え方、銃の扱い方。しかもこの公演期間で上手くなってる、更に格好良くなってるし。何か、人間味みたいなもの、ドラマを感じるようになりました。いや私が回数観てるからそう感じただけかもしれないけど。
群舞でもしゅんくんと対で使われていて違うタイプの二枚目で、見ていて実に楽しいです。あんなに堂々と演じていたのに千秋楽では学年相応に泣いちゃってたのもツボでした(失礼)。これからが楽しみだ88期。

その他の方々、印象に残った点を。

トーマス=紅ゆずる。
ニールとシンシアの息子。最後おいしいとこ持ってきます。2回目以降の観劇だと最初に黒服として彼が出てくるのが何気におかしい。そのせいか楽ごろは帽子をかぶって出てくるようになったけど、やっぱりおかしい(笑)。
そう言えば彼の初台詞を聞いたのはこのバウホール『それ船』。上手くなったなあ。

ヴァイオレット=羽桜しずく
かーわいー(またか)。いや本当に可愛いですよ。ピンクのドレスが良く似合ってた。台詞もすごく上手いって訳じゃないかもしれないけど、恋人を案じる若い娘の真剣さが感じられて、良かったです。

カスティリオーネ伯爵夫人=純花まりい
美人だけどどこか人形のような。「君はまだ若すぎる、あと2,3年待ちたまえ」と言われてしまうのが納得なのは、あてがきか故意かはたまた偶然か。

エミール・ペレール=青空弥ひろ
もみあげに気合を感じました。千秋楽の真顔でアドリブもナイス。

カウリー男爵=美城れん
あごひげに気合を感じました。「火遊びと家柄しか能のない」駐仏大使を体現、柚美さんの旦那役も違和感ない。全ツモンゼットをやったことを考えるとすごい芸幅だ。バンケイさんが美女に囲まれている場面で、すずみんニールと毎回何やら遊んでいた模様。しぃちぐばっかり見てたんであんまり見られなくて残念。

何役もやってくれた涼麻とも君、人形のような美女でドゥミモンドのうつろさを体現していた白妙なつちゃん、最下級生なのにアドリブ頑張った千寿はる君、書ききれなかった人もみんなみんな、この作品を作ってくれてありがとう。出演者の皆様に心からの感謝を捧げます。
もう少し『フェット・アンペリアル』の話をします。

「それじゃまるで子供じゃない」
「ガキかよ」
何も考えていなかった、何故だか嫌だった、と言うウィリアムに、エンマとニールがそれぞれ言った台詞。
どちらの場合も、ウィリアムはそれに対して否定も怒りもしない。エンマには笑っているし、ニールに対しては「そうなんだ」と肯定して「はあ?」と呆れられたりしている。

それが必要だったんだろうな、と思う。
エンマについては既に長々述べたけれど、ニールだって実は窮屈な思いをしながら貴族社会の一員を演じている人間で。
ま、彼は楽しそうにやってるけど。でも、オッフェンバックの新作について薀蓄を傾ける貴族たちの間で、場末のミュージックホールのカンカンの方がよっぽど楽しいと思い、なおかつそんな自分をおくびにも出さないように猫を被っていたんじゃないかと。で、ついうっかりたがが外れてあんなことになったと(笑)。
「生きる世界が違うものを一緒に考えても仕方ない」「仕方ない、身分が違うんだ」と言う言葉も、実感であると同時に、そうではないと否定したいような思いを隠しているんじゃないかと。でも、そんなことは言わない。貴族社会の一員で、外交官で、大人なんだから。割り切ってそれらしく振舞うべきだから。

そんな彼の目の前に現れた、貴族らしくない貴族。「とにかく嫌なんだ」という理由で行動してしまった人間。
なんだあいつ。ありえない。だのに、つい手助けしてしまった。
良かったのか、それ。
いや、良くないけど。いつも誰もがそんなことをやっていたら世の中めちゃくちゃになるけど。でも、「とにかく嫌なんだ」と思うこと自体は否定しなくてもいいのか。理屈が通らなくても。
ニールだって「とにかく嫌」なことは色々あるだろう。例えば「見栄えのいい女なんていくらでも代わりはいるさ」なんて言ってるけれど、それだって露悪的に割り切った振りをしているだけなんじゃないの。ミュージックホールの踊り子のお姐さん(お上品なご婦人からは眉を顰められる人種)に淡い初恋を抱いたことだってあっただろうし。だからクリス君、あまり心配しなくていいと思うよ(笑)。
で、そんな自分を認めたら気持ちが軽くなってつい口も軽くなって、素直に色々喋って、シンシアに「その方がずっとステキよ」と言われると(笑)。

でも、ウィリアムが元々、思いのままに行動する人間だったのかと言うと、それは違うのだろう。
いや、本来の性質はそうなのだろうけれど。でも、思いのままに行動する人間だったら、異母弟とぎくしゃくしながら揉め事のない兄弟を演じたり、生母を避けて死に目に会えなくて後悔したりしない。
彼もまた、変わったのだ。

理由のひとつには「ここはイギリスじゃない」ということだあるだろう。異国、新しい環境、今までと違う人々の中で、意識的無意識的に自分を縛っていたしがらみから解き放たれる。。
そして、多分、きっかけはエンマだ。
エンマに惹かれたこと。何も知らないままに「きみのひとみにうつるかなしいかげをすべてそめあげることができたら」と、思ったこと。
そして、エンマの腕を取って走り出した瞬間。「とにかく嫌なんだ」「理由は後で考える」と、理屈の通らない行動を取ることを決めた瞬間が、彼にとってもターニングポイント。

と、今まで、ウィリアムの「とにかく嫌だった」がエンマへの恋心の発露であるかのように書いてきたけれど。
実はそうではなくて。少なくともそれだけでなくて、そんな単純な話ではなくて。
母への屈折した思いとか、それに囚われて会おうとしなかったことへの後悔とか、表面上は取り繕っていたけれど貴族社会でずっと居心地の悪さが消えなかったとか、そんなこと。説明しようとすると長い身の上話から始めなければならないような、そんなこと全てに後押しされて、「とにかく嫌」で走り出してしまったんだと。
エンマもそれを知ってか知らずか「あなたにだって言いたくないことはあるでしょう?」と言い、それを言われたウィリアムは「そうだな」と引き下がってしまう。

でも、それでもやはり、エンマの手を取って走り出した瞬間が、彼のターニングポイントであることには変わりはないと思うのだけれど。
段々と、自分に折り合いをつけていく過程の。

エンマには「いいたくないこともあるでしょう」と言われて黙ってしまったけれど、ニールに対してはその言いにくいことも含めて、行動の理由を彼なりに説明している。
そしてそれが、終盤の異母弟アーサーとの和解につながる。いや、和解と言うのも変だけれど、避けずに正直に向き合うことが出来るようになる。

……何だかこういう整理の仕方をするとすごくストレートな成長物語だなあ、若い青い(笑)。勿論この物語は色々な要素が詰まっているので、それはひとつの視点で切り取った物語に過ぎないのだけれど。

閑話休題。
アーサーとの関係はあまり書き込まれていないのだけれど、それでも最初の場面のぎくしゃくした感じ(笑顔で顔を覗き込もうとするアーサーと、なるべく目を合わせないようにするウィリアムとか。思わず笑いあっていたのが我に帰ってすっとぎこちなくなる瞬間とか)や、出征前もウィリアムが引き止めるまでの、何かありそうな緊張感が良く出ているので、何となくわかる気にさせられる。(アーサー=しゅんくん上手いなあと)
お互いに相手を嫌いだったと言い合った後、アーサーが「でも兄さんのは嫌いって言うより無関心でしょう?」と言うのが、個人的には一番ぐっときました。あー、それが一番嫌だったんだね、兄さんに関心を持ってもらいたかったんだねー。愛の反対は無関心と言う言葉がありますが、正にそういうことで。

ちなみにここ、ロバート=みきちぐもいいです。ウィリアムに「何か言いたいことがあるんじゃないのか」と言われたアーサーがどうしようと言うような視線を向けるのに頷き返すところとか。「お前が嫌いだった」とウィリアム言ったとき、ニールは「おい!」と声を荒げるのに対して、全てわかっている感じで見守っているところに、色々説明がなくても付き合いの長さを感じました。

更に余談になりますが、ウィリアムとアーサーは学校も軍隊も別々だけれど、そうなったと言うことはウィリアムがそれを希望して叶えられたと言うことですよね。
彼らの父親は話に出てこないので、多分もうこの世の人ではない、割と早くに死んだのではないかと。
代わりに出てくるのは、アーサーにウィリアムに会いに行くように言った「おじいさま」のこと。
多分このおじいさまが認めたんだろうな。良かれと思って息子の隠し子を家に迎え入れ、ワルシンガム家の人間として育てることにしたけれど。表立っては何も不満も言わず揉め事も起こさないけれど馴染むことも出来ないでいる少年と、その弟との緊張関係を案じて、例外を認めたんだろう。(厄介払い、と言うニュアンスはウィリアムからもアーサーからも読み取れなかったので)

この話の主筋であるウィリアムとエンマの物語については、基本的な理解は以前語ったことと変わっていません。
けれど、後半ウィリアム=しぃちゃんがオトコマエにより格好よくなってきた(と思う)おかげで、「誰も彼女を救えなかった、でも彼女にはウィリアムしかいなかった(けれど彼も彼女を助けることは出来なかった)」(「あなたが来てくれても私を救うことが出来ないなら、神様だって救えやしないわ!」from『椿姫』)から、「手を伸ばせば届いたはず」に印象が変わっております。
エンマは自由になれたのに、これからなのに。身分の差も、エンマの過去も心の傷も、ウィリアムなら全て問題じゃなかったのに。彼女を救えたのに。
どちらにしても、切ない話ではありますが。

ついでに、ブランメルのことを少し。
無政府主義にかぶれて国益に反する活動をやっていた、ことになっているようですが、その辺のことは描かれていない。と言うか、エンマを手駒にしてなおかつ失敗させて何をしたかったのか、さっぱり読み取れない。
決めてなかったんだね、と片付けるのは簡単ですが、非常に深読みし甲斐のある大野作品、それでは勿体無い(笑)。

彼もまた「とにかく嫌だった」人だったんじゃないかと。
親の不名誉による白眼視を跳ね返すため、殊更に愛国者として振舞った。でもいつしか、そんな自分が「とにかく嫌」になっていた。結果、無政府主義者になったけれど、別に無政府主義の思想に共鳴したわけではない。ただ、愛国者である自分が「とにかく嫌だった」から、それとかけ離れたものに近づいただけだ。
けれど、彼は「とにかく嫌」なんて理屈のつかない子供じみた感情を認めようとしなかった。だから、無政府主義者になった。そうすれば、今までの愛国的な行動を否定する理屈が立つから。
でも、所詮本心から動いているのではない彼のやることは、目的がはっきりしないほころびだらけのものになって。やがて、破綻する。
自分でも本当に何を求めているか、わからないから。
借り物の理屈や理念に頼らず、ただ嫌だっただけだと認めることが出来たら、そこを出発点に考えることが出来たらよかったのに。
それが出来るか出来ないかが、分岐点だったのかなあと。

そして「敬愛する閣下」がそんな風に破綻していく姿を見ていたサマービルの心中はいかばかりか……とそこまで思いを馳せてしまいました(笑)。

いや、本当に大野作品って「言わぬが花」的な部分が多くて、でもはっきり言わなくても色々と読み取らせる台詞や描写が多くて、非常に深読みのし甲斐があるんですが。特に今回、描写不足気味の部分が多いので、でも破綻はしていないので、つい色々脳内で埋めてしまいそれが苦にならず純粋に楽しいんですが。(破綻しているものを埋めるのは義務と言うか作業と言うか本能と言うか。いやそれも楽しいけど)
千秋楽。
1幕終盤カンカンの中での逃避行、サマービルに張り倒され踊り子さんに突き飛ばされるニール。いつもなら「しあわせですか?」と言うところ。
「しあわせ……」
何かやるんじゃないかと期待の空気。
「……♪なーら手をたたこう」
パン、パン。
……ちょっと待て何故客席全員が一緒に手を叩いているんだ。しかも一糸乱れぬ揃い方で。アドリブなのに。これも客席参加当然の星組クオリティなんだろうか(笑)。
面白かったのは、友人知人がみんな「何でみんな叩いてるのー!? 私も叩いたけど」と言っていたことです(笑)。

と言う訳で、本日のアドリブ大賞は客席参加のこれを。
やたらとアドリブの多い千秋楽でした。多すぎて憶えられない(笑)。
とりあえず憶えている範囲で書き出してみます。

・ワルツの稽古。エンマの態度に、いきなりルーシーが「プンプン」ポーズつき。
・ミス・ハワードに挑戦する凸凹コンビ。「たまにはお前が行け」とロバートに言われ、ウィリアム「あのー!」いつものロブと同じような高い声で。あちゃーと言う顔でロバート代わりに出てきて「ミス」とこれまたキンキン声。「……ハワードでいらっしゃいますか」で普通に戻る。
・ミス・ハワードの「マドモアゼル」発音口座。「唇を良く見て、後ろの人も」と二人まとめて手玉にとっております。終ったら「あなたはもう隠れてていいわ」とロバートを追っ払って。
・シンシアがクリスに「は・し・る」と言うところ、大真面目な顔で「スキップ」。大真面目にスキップではけていくクリス。
・大使夫人「あなた血液型は?」「B型です」何か言おうとするもアーサーに「僕もB型です」と言われ「B型にも色々いるわね」。改めて誕生日を聞いて本来の流れに。
・舞踏会。「大使」と呼びに来る黒服・千寿はるくんいつもいるかいないかわからないくらい地味に出くるのが、ビシッとキメポーズで「大使」。
・モルニー伯登場。「ロンシャンの宝塚記念で私の馬が」ロンシャンの宝塚記念て何だそれ(笑)。
・「伯爵ぅ〜」と寄ってくる黒服たち。「何で男性まで!」慌てて追っ払うパイーヴァ、カスティリオーネ両夫人。
・「あの台詞ひどかったわ」「文句は書いた奴に言ってくれ」ニール最初から顔を出して、僕の傑作を何てことだと大ショック。「悪かったな」は半べそ状態。
・浮気現場を押さえた大使夫人。当然「さそり座B型ね!」。
・しかしカスティリオーネ伯爵夫人反撃。「奥様は水瓶座のA型」「何でわかったのかしら!」
・ペレール氏。向かいの部屋に届けるのは、シャンパンとキャビアとフォアグラとチーズと(途中忘れた)、柿の種。「大変ね」とエンマ。
・「どうやってたらしこんだ」「知りたい?」「ああ」「鼻の下伸びきってるわよ」本当に伸びきってました。そ、そこまでやらんでも。
・当然去り際にウィリアムがニールに頼むのは「シャンパンとキャビアとフォアグラと、柿の種?」何か足りないような気がする。
・エンマとケイティのこねずみデュエット。去り際ずっとチューチュー言ってました(かわいい)。
・カンカン逃避行は前述のとおり。「じゃなくて!」とサマービルがびち切れた後、ケイティが「そうよ、しあわせー!」といつもの流れに戻してました。最後ニールはバレエのような爪先立ち小刻みのステップで退場。ちなみに11時公演はサンバステップで。

・2幕。「歌上手かったじゃないか」と嫌味っぽく笑って立ち去るサマービルの後姿に、キーッとステッキを振り上げるニール。と、サマービルがずんずん戻ってきた! ステッキを背中に隠したじたじのニール。「……しあわせ、ですか?」
「♪しーあわせっのーっ」って、サマービル、君まで! 大真面目に歌ってました。
・公園でウィリアムとエンマ。背後の踊り子達が妙に小芝居している(下手では何やら指輪を渡したりしていた)、と思ったら、いつも「時間よー」のところが「千秋楽よー!」
 この状況でいつもどおりシリアス芝居をしている主役二人は偉いと思いました。
・ニール。いつも座ったままのところ、やおら立ち上がり机に片足をかけキメポーズで「俺に口説かれるぞ」。決まったものの脚をあげすぎて釣ったらしい。
・ハンカチアドリブ連作。
 アーサーの出征。ハンカチを取り出して泣くニール。今日はシンシアも泣いている、ハンカチを渡すニール。大使夫人も泣いている、ハンカチを渡すニール。
 大使夫人は「大丈夫よ、アーサーはてんびん座B型だもの」「今日までは」とウィリアムの手を取ったときハンカチはウィリアムの手に。
 そこへロバート。泣き顔でウィリアムを見上げると、ウィリアムが「ほら!」とそのハンカチをロブに。
 その直後「仲間じゃないか!」は、ニールが二人の間に入って肩を組んで。「はあ?」の反応もいつもよりキツいような(笑)。

・エピローグ。ワルシンガム閣下。「君の父上もよく言われていたよ。能力はあるんだから焦らなくてもいい、って」
・トーマス君「僕は閣下を尊敬しています!」……って、これアドリブじゃなくてただ単に新しい台詞じゃないのか?

・フィナーレ。途中一旦はけるときのしぃちゃん、ウィンク、投げキス、ウィンクの3連コンボでした。
・フィナーレ最後、いつも舞台奥中央から登場のしぃちゃんが、下手側客席通路から(大騒ぎ)。
・最後は上から赤い花びらが降ってきました。柚長がご挨拶で「粋な計らいをしてくれたスタッフの皆様」に謝意を述べていました。

改めて書き出してみるとみんなやりすぎだ。特にすずみんのアドリブ率の高さと言ったら(笑)。でもそんなところも好きです。下級生までのびのび参加しているのも嬉しいね。
しかしひとつ心配は、スカステで放映するのは通常なら千秋楽なのに今回はアドリブが多すぎて作品本来の姿が伝わらないのではないかということです。他に撮っているならぜひそちらをお願いします(祈)。
つか、千秋楽アドリブ特典映像つきDVD売ってくれるのが、個人的には一番有難いのですが。買うよ?

・挨拶は、CSですぐ流れて、その方が正確とは思いますが。柚長、まずさそり座の皆様にお詫び(笑)。後は割と普通のことを言っていたのですが、萬さんとヒロさんをそれぞれ別の褒め言葉をつけて「ダンディ」と紹介していたのが上手いと思いました(の、割に具体的に何と言ったか忘れている)。
・しぃちゃんも、大野先生、音楽や振付けの諸先生、スタッフ、観客、共演者への感謝と、割と普通のことを言っていたのですが「皆さんあたたかくて」みたいな表現が印象に残ってます。あと、「みんなに支えられてここに立たせてもらっている」というようなこと。
・カーテンコールは3回で3回目がスタンディングオベーション、だったかな。スタオベのときのしぃちゃんの「うわー!」という感じで目を見開いた、びっくり嬉しい笑顔が、何だかこっちも嬉しかったなあと。見てる方も笑顔。

出もギャラリーしてきました。
立樹会の皆様は全員から薔薇の花を1本ずつしぃちゃんに、そして掛け声「(ウィリアム格好よかったです、これからも頑張って下さいみたいなことを言って)お返事は?」一呼吸置いてしぃちゃん「はい」。
すずみんは毎回たのしそーに振り回していたエンマのハンドバッグを持って登場。カードの配りものがありしかも当たりを引いた人は公演で使用したハンカチプレゼントらしい。会の皆様の掛け声は「しーあわせなーらてをたたこう♪」でした。当然その場にいたギャラリー含め一緒に手拍子。
だって、幸せだもんね(笑)。
6/10(土)11時公演観て参りました。
ちなみに午後はコパ。ノリもテンションもアップ中(初日からあんなにテンション高かったのにまだ上が。すげー)。

……どうしたのこのロマンチックは!

1幕ラスト近くのウィリアムとエンマのワルツが、えらくロマンチックになってます。前回見たときはまだ恋とも呼べない子供っぽさの残る淡い思いという感じだったのに、もうすっかり出来上がってますよ。そして、そのことに気づき恐れたエンマが、我に帰って離れる、と言う感じです。
……ときめいて切なくてきゅんときました。

この二人については、2幕も公園でのウィリアムの「少しだけ」が息混じりのかすれた声でどきっとしたり、最後のエンマの崩れ様が激しくなっていて、でも受け止めるウィリアムの明るさと力強さもそれを受け止めるだけのものになっていたり、色々と違ってきています。
とにかく、二人の間の空気、コミュニケーションと言うようなものが、自然に、かつ密度が上がっている気がします。(うだうだ書いてますがひとことで言うと「良かった」に尽きます)

その他メモ。
・みきちぐの顔芸が進化している。台詞のないところであれだけ笑いを取るのは流石としか。
・「ああ、コーラ!」のところでニール(シナリオライター)(それはあかしの役名)が一人にやついて頷いているのに気づく。「うんうん、ちゃんとやってるな」って感じ?
・ニールとシンシアのちょっとしたコミュニケーション(?)が増えております。1幕「確認しておきなさいよ」の後でシンシアが一度戻ってきたり、2幕でニールのハンカチ(赤いハート模様)をシンシアがちらっと見て、ニールが慌てて隠したり。
・サマービルに人間味が出てきたと思うのは私が見慣れただけですか? 1幕ラストでエンマから目を背けているように見えたのは気のせいですか? この人も何だか見ててやりきれなくなってきた。
・フィナーレ。黒燕尾で途中一旦下手にはけるとき、しぃちゃんが投げキスしてました!(先週はウィンクだけだった)
・フィナーレ。これ生オケじゃないから!録音だから! ついでにそれじゃ手拍子入れられないから! ←すずみんのタメまくりノリノリ歌唱に対して。でも実はそういうところ大好きです。見てる方もつい笑顔になる。

そう言えば、先週見たときも3日目くらいで台詞が増えてました。モルニー伯爵の「大英帝国も人が悪い」。これは増えたおかげでわかりやすくなっていました。

日々の変更点等はサトリさんがまとめてくれてます。
あ、ウィリアムとニールのじゃれあい、私が観た回はやってくれませんでしたー。私には見せてくれないらしいです(違)。

***

何を見るときでも個人的な知識、記憶のフィルタはかかってしまうものですが。
私の『フェット・アンペリアル』の見方は、オペラ『椿姫』の影響があるかもしれません。
元々ドゥミ・モンドと聞くと『椿姫』を思い出すのですが、それだけではなくて。
だって「あの青年があなたに(いいんだ友達じゃないか!)」「初めての方ね」から始まるんですよ、このオペラ(笑・100%正しくはないが、嘘ではない)。大野先生わかってやってるんじゃないのかと。
その後も、1幕ラストのエンマの髪型と衣装にマリー・デュプレシ(ヒロインのヴィオレッタ(原作のマルグリット)のモデルとされる人物。よく使われる肖像画と似てた)の姿を思い出したり。
そしてラストも。これからじゃないか、とヒロインをかき抱く主人公の姿に、つい、だぶって見えてしまう。
いや、全然違う話なんですが。6/8分日記に書いた「心の壁を突き崩すには、計算を知らない愚かなまでの真っ直ぐさが必要」って言うのは、椿姫1幕が念頭にあったみたいです。と他人事のように。
多分相当回数見ている『椿姫』が自分の中に染み付いてしまっているせいなんだろうと。
(もうひとつ思い出したものに『銀色の恋人』(こっちは小説)があるのですが、これこそ思い出しどころがピンポイントで誰にも伝わらないので却下(類義語『タイタニック』))

***

SS追加。ケイティ数年後。
http://kine.nobody.jp/fete2.html
多分公演終ってからも書くと思います(笑)。19世紀の英国上流階級の教育制度がわかるサイトとかあったら教えてください(何書く気だ)。

***

ジュンタさんがちぐ担カミングアウトしたので私からもリーク(笑)。
先週ムラ遠征中で、ジュンタさんとサトリさんとそのお友達とそのまたお友達とみんなで食事中、ウィリアムとロバートはいつから知り合いなんだと言う話になりまして。
ロバートは根っからの貴族にはあんまり見えない(失礼)。でもアーサーとのことを考えると、幼なじみ?と誰かが言ったところ、ジュンタさんは瞳をきらきらさせながら仰いました。
「ベルナールと公安委員と同じねっ!」
いや、そんな設定ないから! 誰もそんなこと言ってないから!(あんなもの書いた私に言われたくないかもしれないが)
「えー?オフィシャルじゃないの?」
総ツッコミを受けてとてもご不満そうなジュンタさんでした。えーと、それだけちぐ担でいらっしゃると言うことで。
でもパクちゃんも『フェット』遠征の決め手は「しぃちぐ同期コント有り」だったそうなので……意外と人気あるのかこのコンビ?(仲間内限定?)

ちなみにサトリさんからは「しぃふありは王道ですよねっ!」発言もありましたが、それも違うんじゃないかと思いますが。(あんなもの書いた私に言われたくないかもしれないが)
あ、でもこれは『歌劇』えと文オフィシャルなのか?(ふありちゃんのイラストについて3ヶ月言及が無かったのは何故でしょう)

結局理解の拠り所は個人的なものってことで(無理矢理まとめ)。
『フェット・アンペリアル』の感想をあちこち読みあさっておりました。何か評判良くて嬉しいんですけど。つか、こういう風に書けばよかったんじゃないかいい作品だと伝わるんじゃないかと目からウロコ。どうしてこんなうだうだした文章になるかなあ自分(軽く凹み)(いやいつものことなんだが)。
皆様もこんなとこ読んでないで『フェット・アンペリアル』でブログ検索してください。(Yahooのブログ検索って最近始まったんですか?)

と言う訳で、今回は感想はお休みして立樹茶潜入記です。
と言っても星組遠征バウ梅芸あわせて5公演見た後でへろへろ気味だったので、かなり記憶が飛んでたりしますが(すみません)、憶えている範囲で。

プログラムには手書き文字(のコピー)で「この公演の楽しい、いやぁ、苦労話(笑)などおしゃべりできたらと」。
……苦労話色々ありそうです。

いでたちは白いスーツに黒のインナー。
えーと、会場で販売していた去年の『長崎』のお茶会写真と似たような感じ。同じって訳じゃないと思いますが。

乾杯、まずは質問コーナー。

・歌が多くて大変。前回(ホップスコッチ)は3人主演だったけれど今回は一人なので、こんなに多いものなんだと。でもそれにしても多いらしい。
 物語の流れにあっていて、芝居のままの感情で歌える歌なので、歌いやすいです、と。

・みきちぐ扮するロバートについて質問が多かったそうで。
 同期なのでやりやすいし楽しい。この学年になると同期は貴重なので、こういう機会があって嬉しかった。でもみなみちゃんとの場面でロバートが一人で物陰から観察しているのは納得いかない、ずるい、だそうです(笑)。

・そのみなみちゃん、お稽古場では上級生も見ているし硬かったんだそうですが、本番になってからどんどんノリノリになっているそうな(笑)。

・みなみちゃんとは接近しすぎて、振向きざま本当にキスしそうになったこことがあったらしい(笑)。

・ちーくんとお稽古場での面白いエピソードはありますか?という質問に、うーんと考え込む。一度笑いのツボにはまって二人で止まらなくなったことがあるそうなんですが、それが、ニールのクリミア戦争講座の歌のイントロらしい。「コマーシャルの曲に似てて」と一生懸命に説明するも伝わらない空気に「次行こう次」(笑)。
 基本的にお稽古場では覚えるのに一生懸命であまり面白いことはないそうです。

・(相手役さんのドレスを踏んだりしませんかに対し)エンマの最初の場面の赤いドレスは広がっているので踏みそうになる。と言うか「本人も踏んでます」ってさらっとそんなことを(笑)。

・1幕ラストの場面は舞台稽古でいきなり追加された。ええー!という感じだったらしい。

・カンカンの場面の衣装は新調。宝塚のカンカンは黄色と黒が多いけれど、この時代の衣装は白と黒、という大野先生のこだわり。

・開幕アナウンスの声が低いのも、大野先生のこだわり。曲に合わせて、だそうです。

・一番好きな衣装は青の燕尾。青が好きなので。

・ウィリアムが途中で髪を切るのは心境の変化。色々あって。
 謹慎中だからですか?と言う質問に対して「それは関係ないです」ときっぱりはっきり答えてました。

質問コーナーはこのくらい。
でもいっぱい忘れているような気がする。「ウィリアムはエンマやニールや色々な人と会って成長して」って言ってたのは何の話だっけ?(そんな大事そうなこと忘れるなよ…)

写真撮影&握手コーナー。
参加者一人一人と結構長く喋っていました。(その様子を見て真剣にネタを熟考、結局「ウィリアムがエンマを見る目がとても愛情深くて毎日惚れ直してます」と仕込んで行ったものの「愛情深くて」のところでむちゃくちゃ照れられてその後の台詞を言えなかった人)
みんなの一言を真剣に聞いて逐一リアクションしてくれて、すげーいい人でした。いや、以前参加したお茶会でも割とそんな感じでしたが(参加者とコミュニケーションしてくれようとしている)今回は特に思いました。
そう言えばリアクションについては、タカラジェンヌの皆様は基本的にリアクションが大きいと、『歌劇』で樹里さんが書いていた記憶が。

その後はゲームコーナー。
ビンゴで、出演者名と作品のキーワードのリストがありお茶会が始まる前にその中から言葉を選んでマスを埋めておく、と言うものなのですが、本人が選ぶのかと思って色々ヤマを張ったものの実はくじを引く形式だったと言う。100%運でした(笑)。
本人も知らなかったらしく、最初に生徒名が出てきて「何これ、今回こういうのなの? 面白いねー」と言ってました。

キーワードを引くとそれに対しコメントが。司会者から特にそうしてくれと言われた訳ではないのですが、質問コーナーでは喋り足りてなかったらしいです。

・キーワードその1「裏切り」
「裏切りと言えばあの人でしょう」と。「ねー、びっくりしたよねー」って、んな直球な(笑)。

・キーワードその2「弟」
アーサーとの別れの場面は切ない。すごく切ない。そのまますぐ次の場面をやらなければならないのがつらい。だそうです。

・キーワードその3「ピストル」
ポスターで持っている銃は大野先生の私物。本物なのですごく重いらしく、ポスター撮りのとき(5時間くらいかけて撮るらしい)腕をあげているのが大変だった(と身振り手振りつきで)。でも実際に本編では(それを)撃つ場面はなかった、というオチで。

・にしきさんの色シケがはねて触角みたいになっちゃった回があって笑いそうになった、って話もここだっけ?

ビンゴの商品はご本人とのツーショット写真。当然私は当たらなかったんですが、撮影風景を遠目で見てても何か優しそーでねえ。(深みにはまらないために当たらなくて良かったんじゃないかと結論←またしても酸っぱい葡萄の論理・笑)

参加者からのプレゼントは旅行券。「どこ行こうかな、沖縄とかいいですね」。でも次の大劇集合日まであまり日がないんだよね。

最後、歌のプレゼントは「色々考えたんですが」お芝居の最後の場面の歌。「みなさんお芝居見ているときはじっくり聞けないかと思って」と。
シリアスなのに途中で「あ、歌詞間違えちゃった」って……(笑)。

最後ご挨拶では、この公演でとてもいい経験させてもらって、学んだこともいっぱいあって、これからの舞台にそれを活かしていきたい、と言うようなことを言ってました。
入場・退場とも目線配りながらテーブルの間を歩いてくれて、大サービスでしたわ。

全体通して、何だかすごくテンション高くて楽しそうで生き生きしててねー。公演充実してるんだろうな、チームワークいいんだろうな、と言う感じで、見てて楽しかったです。今回ちょっと日程的に無理して参加した訳なんですが、行って良かった。

ところで今回、販売写真で、ベルばらのベルナールとロザリーのツーショットがありました。
これが暗転直前、背景真っ暗で二人の顔しか見えない。
そして、すごい密着度。思わず「すげー」と指差してしまった。
ええ、買いましたとも。こんな貴重なもん(笑)。
「どうでした?」
『コパカバーナ』初日を見た翌日、サトリちゃんに期待に満ちた目で聞かれました。
いや、良かったよー。となみちゃんはあーぱーでピュアで無邪気で超キュートだし、トウコさんは素敵にオヤジだし、あすかちゃんはいい女だし、組長はすげーシンガーでダンサーでアクトレスだし、みらんのカマキャラは天下一品だし、ゆかりちゃんは制服美人だし。
「で、わたるさんは?」
……難しいんだよな、主役褒めるのって。
『フェット・アンペリアル』と『コパカバーナ』二日連続で痛感。主人公、割と普通だし。いや、そりゃ格好良いことは良いに決まってるんだけども、どうしても周囲の方がキャラ立ってるし、格好良いって言ってるだけじゃキャッチーじゃないし(いや別にキャッチーにする必要は)。いや、カリブの海賊(違)の登場シーンはマジで格好良かったですが。いや本当に格好良かった。

と、どさくさ紛れにコパもちょろっと語っておりますが、今回はまだ『フェット・アンペリアル』の話。
主人公ウィリアムと、それを演じる立樹遥氏について。

作中、何度「馬鹿」と言われ何度張り倒されたかわからない主人公(笑)(でもかっこいい)。
作品解説の時点で「新米スパイ」と言う設定にぐらんぐらん来ていたのですが、蓋を開けたら期待以上でした。
要するに、未熟な若者。完全でない人間。学年とかにとらわれずに持ち味にあった役であることに、まず感謝。

ウィリアムは、バランスが難しいキャラだと思っています。
彼自身も鬱屈を抱えている。けれど、エンマに対しては子供のような真っ直ぐさで彼女の心を動かす。そのバランス。

結論から言うと、舞台上で見られるウィリアムのキャラクタは、後者に寄っている。そして恐らくは、それでいいんだろうと思う。
脚本で描かれているエピソードの比率からして、彼の抱える傷、コンプレックスには最小限度の描写しか割かれていない(それでも、腹違いの弟で嫡男のアーサーに向ける視線には、言いようの無い屈折が見て取れて、もどかしいのだけれど)。
育ってきた過程で傷や翳りやコンプレックスを抱え込んではいるけれど、ウィリアムの本質は、真っ直ぐで優しくて温かい、あくまでも前向きなもの、なんだろう。

それは、演じるしぃちゃんの持ち味を存分に生かしたものであり、あてがきの結果なのだろう。そのまま、ではなく「持ち味を生かしたあてがき」であるところに、大野氏の上手さを感じるのだけれど。
とにかく、ウィリアムの、そして演じるしぃちゃんの、相手役に向ける真っ直ぐな愛情は得がたい持ち味だと思う。(いやま、ぶっちゃけ私の好みだってだけかもしれませんが)

そして、エンマというヒロインとの関係において、ウィリアムはそういうキャラでなければならなかったのだ、とも思う。

陽月華演じる、コーラ・パールことエンマ・クラッチ。
さばさばしていて、強気で、背筋を伸ばし誇りを持って生きる、強い娘。けれど、傷だらけであやうい、必死に自分のバランスを保っている、ひとりぼっちの少女。
(うめちゃんは本当にいい役者、娘役だと思う。Acrossのときも思ったけれど「ダンスは上手いけどちょっとガサツ」と世間に思われている隙に、いつの間にかすごく情感のある芝居をする人になっていた)

エンマの心の壁を突き崩すには、計算を知らない愚かなまでの真っ直ぐさが必要だったんだ。常識的な「大人」な人間が踏み込まない、踏み込めないところに、ただ善意と相手への思いやりだけで真っ直ぐに切り込んでくる愚かさが。
そして、その痛々しさを包み込むためには、やはり計算も何もなく、ただ相手の痛みを自分の痛みとして受け止めて包み込む、真摯さと優しさと大きさが必要だったんだ。

そう、本当に、愚直で「馬鹿」。でもそれでいい、それがいいんだ。そういう人間だから、エンマを変え、周囲を動かす力があるんだ。
エンマと言うヒロインを救う、少なくとも未来への光を見えるよう取り戻させるためには、ウィリアムは子供の素直さと少年の不器用さ、そして大人の包容力を兼ね備えた男でなければならなかったんだ。

と、ぐだぐだと述べたようなことは、
「ウィリアムは駄目な男です。でもエンマにはウィリアムしか居なかったんですよ」
と言う、しぃ担サトリさんの名言ひとことで言い表せてしまうのですが(勝手に引用ごめん)。「後で考える」と言って後先考えずに駆け落ち(違)できるような馬鹿な(どう贔屓目に見ても職業人としては失格だしエンマを救うことも出来ないのにそれをやってしまう)男でないと、彼女の自ら作った固い鎧を壊せなかったのです。

エンマもウィリアムも、素直に素顔を覗かせているときが魅力的だよね。
ウィリアムで言うと、ミス・ハワードとの場面は基本的にコメディだけれど、その中で「歌声が寂しそうだったので」「賑やかな場は苦手」と言う、自分自身の言葉で喋ってるときは、素直にいいな、素敵だなと思う。きっとミス・ハワード(みなみちゃん素晴らしい!)の「言うほど悪くなかったわよ」はその辺りがお気に召したのではないかと(笑)。

エンマはどこもかしこもそんな風なのですが、私のお気に入りはシャーベットを買いに行くと盛り上がった後で「だめだわ」と我に帰って言うところだったりします。すごく素の、無防備な感じで。
あと、追いかけっこのシーンでケイティたちの踊る姿に見とれて、嬉しくて楽しくて状況を忘れて立ち止まってしまう場面。輝く表情が、その前後の展開を思うとかえって切ない。

思えばニール=すずみんもシンシア=ひかちゃんに「素直にしていればいいのに」みたいなことを言われていました。
それもひとつのテーマかもしれない。この、表と裏の顔、外に見せている顔と自分だけが知っている顔の両方を抱える人々のこの物語で。

ウィリアムとエンマの会話で、何度も繰り返される台詞がいくつかある。
エンマがウィリアムに言う「馬鹿ね」「そんな目で見ないで」。二人の「返事は?」「……はい」。
物語が進み二人の関係が変化するにつれ、場面に合わせて言い方や表情を変えて繰り返される会話。微妙に色の違う紗の布が重ねられていくように、様々なニュアンスのリフレイン。

そしてもうひとつ、私の好きなリフレインがある。
それは、「少しだけ」。

2幕。心を隠して立ち去ろうとするエンマを、ウィリアムは「ごめん、少しだけ」と言って抱きしめる。
このとき、客席から見えるのはエンマの顔。そして、ためらっていたのが自分の心に抗えなくなったかのようにウィリアムの背中に回される腕。

こういう場面で、娘役の方が客席を向いているのは珍しいのではないかと。男役を見に来る人の方が多いから、という理由だと思うけれど、印象に残っているのは『1914/愛』のアデル=檀ちゃんのびっくり顔くらいだ。
ここではエンマの、決して手に入らないと思っている幸せをつかの間味わうような、絶望と希望の入り混じった表情が切なくて苦しくて、そうか、だからこの立ち位置でいいんだな、と思った。

けれど。
ラスト近くに、もう一度「少しだけ」がある。

今度は、そう言うのはエンマ。「少しだけ」と言って、ウィリアムに体を預ける。
そしてこのとき、客席から見えるのはウィリアムの顔と、エンマの背中に回され彼女の細い体を力を込めて抱きしめる腕。彼にはそれしかできないから。切なくて、苦しい。

そうか、そういうことか。
少しだけ。本当に「少しだけ」。
切なくて苦しいリフレイン。

***

とか書いてますが、しぃちゃん演じるウィリアム、月曜火曜を見た人によるとまた変わっているそうです。
駆け落ち(?)の後のワルツの場面でエンマを落としにかかってるですってー!?
私が見たときはお互いに恋愛感情を自覚していないような微笑ましくも甘酸っぱい場面だったのに。いつの間にそんなことに(笑)。

本当に、一回ごとに変化して、進化してるよねー。
今までも芝居は割と変わってくる人ではありましたが(だから観察し甲斐がある訳ですが)。
今回はフィナーレでも、私が観た金土日3日間の間に、どんどんセンターが板についてさまになってきて、もうどうしようかと(別にあんたがどうもしなくても)。

……週末また見に行くのが楽しみです。そしたらまた全然違う感想を語れる気がします。
まずは『フェット・アンペリアル』の話をします。
いや、だってこっち先に終わっちゃうし。コパはまた来週以降。

いやもうすごい良かったですよ。
見れば見るほど色々心に沁みてきて、実にリピートし甲斐のある作品です。
今回のバウシリーズ、これが星組に当たってくれて良かった。本当に感謝。

主な見どころはサトリさんがさくっとまとめてくれている(http://diarynote.jp/d/62774/20060602.html)ので、まずはそちらをどうぞ(宣伝・笑)。
私は私らしくうだうだと語らせていただきます。

2回目に見たとき、オープニングから泣かされました。
そうだ、大野作品はこれがあるんだ。忘れていた。

オープニングは、本編と地続きでないショーシーンであることが多い。主題歌で主人公登場、みんな出てきて群舞、みたいな(大くくりにすればベルばらだってそうだ)。
大野作品においてもそれは同様。私が実際に観たのは『花のいそぎ』『睡れる月』だけですが。
しかし、現実=本編とは地続きでないイメージ空間と言う意味では同様なのだけれど、ひとつ特徴がある。
それは、時間軸の設定。空間は無くても、時間は明確に設定されている、と思う。
時間の設定。すなわち、それは物語の終わり。
全てが終った後、主人公が過ぎし日に思いを馳せて歌う歌。
だから、これから起こることを知っていると、歌詞のひとつひとつが意味を持ってくる。
切なくて泣ける。

そう、切ない。これも大野作品の特徴。
主人公にも周りの人たちにも様々な思いや切れないしがらみがあり、それが切なくて、やるせない。登場人物に感情移入して思いを馳せすぎると辛く苦しくなる。(つまりリピートがしんどくなる)

の、だけれど。
今回は、それが「切ない」どまりだったように思う。
重苦しいだけでなく、すがすがしさがある。言い方を変えると、希望がある。
そう感じられる理由のひとつは、この物語が過去と現在の二重構造であること。
本編は過去。冒頭と最後を短い現代パートが額縁のように挟んでいる。
冒頭、現在のウィリアム=ヒロさんが現れ、彼の回想と言う形で過去のウィリアム=しぃちゃんの物語、すなわち本編が始まる。そして本編が終わり、最後は現代に戻ってエピローグがあり、物語は終る。
この構造においてオープニングの時間は、本編の終わりと冒頭と最後の現代パートの間に位置する、と思う。

だから。
若き日に様々な出会いと別れを経験し、決して取り戻せないものを失った主人公(本編)が、「君が教えた勇気を胸に」(オープニング)その後の長い人生を生き、「誰も見捨てたりはしない」と約束してそれを実現できる人間になっている(冒頭と最後)、ということ。(歌詞と台詞もし間違ってたらすみません。気がついたらこっそり直します)
その外枠の物語全体が、希望であり救い。
深い痛みを抱えてなお前を向いて生きることを決意した主人公が、誓ったことを成し遂げる、その未来が見えるから、

いや、本当に「痛い」ものが好きな方には物足りないかもしれませんが。でも私は過去の大野作品でも『睡れる月』より『花のいそぎ』がより好きな方でしたから。
ちなみに「理由のひとつは」と書きましたが、そのほかに理由と感じているのは主演者の持ち味です。これについてはまた項を改めて。

ネタばれしない方がいいか等と迷いながら書いた結果、何が言いたいのかわからない文章になった気も(苦笑)。
えーと、とにかく、短い公演期間でもう前半終っちゃいましたが、機会のある方は是非見てください。リリカルで切ない、でも温かくすがすがしい後味の佳品です。
そして、誰かさんも言ってましたが、できれば2回見てください。本当にオープニングからキますから。

と、これだけおすすめしておいて何ですが。
ごく正直に言うと、初日見たときはちょっと微妙な感想でした。
消化不良と言うか。いや、大野拓史作品と言うことで期待しすぎていたのか。
1幕と2幕のバランスが悪いなあ。1幕は遊びすぎて状況説明に終始し、2幕は駆け足で話が進んでしまった気が。いや遊び部分は楽しいんだけど。それを削って説明入れろと言うのも忍びないんだけれど、でも。

その時点で、主な不満は2つ。
・1幕で遊びの要素を入れすぎたためか、主人公をはじめとする登場人物の葛藤が描かれていない。伏線不足。結果、2幕の種明かし(?)が唐突に感じる。
・2幕の黒幕探しをダンスシーンで処理している。スパイものをやりたいなら解き明かし追い詰める過程をドラマで描いてほしい。つか、ここで主人公の有能さとか努力とか見せてくれないと、いまいち格好よく見えない……。(でもヅカって仕事の有能さを見せるエピソードはあまり出て来ないよね一般的に)

で、喜劇を目指してスベった?とか色々考えて物足りなさを感じていた訳ですが。
翌日2日目の午前公演を見てあっさり撤回しました。
全然違う。面白い。
話がどう転がるかわかってるから、という観る側の問題に過ぎないのではないかとも思いましたが、でも初日を見ていない人の反応を見てもやっぱり違う。そうじゃない。少なくともそれだけじゃない。

つまり、やっぱり初日はとっちらかってたんだなと。
初日、2幕でしぃちゃん台詞間違ったとこがあったんですよ。ニール=すずみんに対し「アーサー(しゅんくんの役名)」と呼びかけてしまって。
まあそのくらいなら良くあることだけれど、その後。
「ニールだよ」とすずみんがアドリブで返したのに「ありがとうアーサー」と念押し。きっぱりはっきり明瞭な発音で。
……あのー、もしかして、聞えてない? つか周り全然見えてない?
何事も無いように舞台は進行して行きましたが。進行するしかないですが。
実は初日で相当テンパってたってことなのかなあと。それまでトラブルなく無難にこなしているように見えただけに、観ている側としてもちょっと手に汗握りました。
その後、1幕のラストシーンは舞台稽古で追加された(それまで無かった)話など聞くにつけ、やっぱ初日は大変だったんだと。

2日目以降落ち着いてくると、不満その1の書き込み不足は気にならなくなりました。舞台が落ち着いて出演者が演技で埋めれば十分埋まるレベルの不足だったと。
一番気になっていたのはウィリアムと腹違いの弟アーサーの話で、二人の関係を描くエピソードが足りないため2幕の展開が唐突だと言うことだったのですが、それも気にならなくなりました。短いさりげない会話に、微妙な緊張関係や気まずさが見て取れたので。これはしゅんくんも上手いしすごくきめ細かい演技をしているおかげ。

不満その2、敵を突き止める過程が描かれていない件は……正直こちらは今でも不満ではあるのですが、でもま、いっかと(をい)。
「洋物をやるならスパイ物」と大野氏が言っていたと聞いて、だったら何故その過程を描かない、それが醍醐味じゃないかと思いましたが、でも違うんだろうな。
スパイ物で描きたかったのは「二面性のある人間のドラマ」「表の顔と裏の顔を使い分ける人間の葛藤」だったんだろうなと。いや、あくまでも推測ですが。
そう思えば、無いものねだりはしなくてもいいかと。恩田陸や京極夏彦の所謂ミステリと呼ばれている作品に、ロジカルな推理劇は期待しない、でもそれ以外の部分で十分魅力を感じているのと同じで。

切なくて、苦しくて、でもどこか優しい物語。薄い紗を重ねるように、繊細な言葉の積み重ねで紡がれる物語。抑えたリリシズムに貫かれた世界。(ちょっと前の少女漫画好きにはたまりません)
それで十分じゃないかと。

話が逸れました。
初日と2日目の差は大きかったですが、その後も回を重ねるごとにどんどん良くなっていて、引き込まれます。こうしている間にも変化しているだろうと思うと見られないのが悔しい。
ので、もし初日しか見ていないという人がいたら、やはりもう1回見ていただきたいと(勝手に)思ったりしています。

うだうだ書くと宣言したら本当にうだうだしてしまった。
まだまだ続きます。次はもうちょいてきぱきと出演者の話など。
梅芸バウ星組ツアーから帰って参りました。
いつからいつまでいて何を何回見たかはあえて明記しませんが(笑)、しぃちゃんのお茶会でジュンタさんと「何あんなに長話してたのよっ!」「そっちこそいつまで手を握ってるのよっ!」と、モルニー伯爵を取り囲むクルティザンヌ並みの争いを繰り広げたことは告白します(嘘)。

いやー、ベルばら終了以降演目の当たりが良くてうれしいね(ほくほく)。
『Across』『エンカレ』『YoungBloods!!』そして今回の『フェット・アンペリアル』『コパカバーナ』と、外れなしですよ。大喜びで浮かれております。

いや、正直見る方も疲れますが、2日連続で初日はちょっとしんどいですが、それも嬉しい悲鳴。
でもこのペースだと今までのような細かい感想は残念ながら書けません。
と言う訳で、書きたいことを書きたい順に。

http://kine.nobody.jp/fete1.html
いきなり『フェット・アンペリアル』SS。しかもウィリアムとタチアナ(をい)。
だって感想より先にSSしてもいいかって聞いたらサトリちゃん許可してくれたしー(他人のせいにするのはやめましょう)。
いや、今回はいつも勝手に書いているしぃすずが主役と二番手なんで私がやることは何もないと思ってたんですが。が。それならそれでネタはいたるところに落ちてるんだなあと。今回本当にあてがきがうまくてどの役もキャラの立ちっぷりが素晴らしいので、かえっていじるのが怖い面はあるんですが。
二次創作は認めないイメージ壊されるのは嫌だと言う方は読まないでくださいと、いつも以上に申し上げます。
文句が多くてすみません。
昨日分で散々書き散らしましたが、決して悪い芝居じゃないですよ『NEVER SAY GOODBYE』。
そうですね、もしこれが2幕ものでなくたかはなサヨナラでもなければ、佳作だと言っていたかもしれません。
なんつーか、1幕で力尽きた感もありますな。1幕も浅いし薄いしさらさら流れるのですが、2幕は更に一気に話が小さくなってるし。
なるほど曲はいいです。ジョルジュの「俺はデラシネ」の魂の叫びに胸かきむしられる。ジョルジュとキャサリンがお互いの思いを自覚しあう場面の、占い師の哀調を帯びた歌も耳から離れない。「カマラーダ」の旋律も、様々な場面で色を変えて使われるのが好きだ。特にラストの、仲間たちが倒れていく場面の転調。
個々には、いい場面もたくさんある。ジョルジュがアトリエでキャサリンに自分のことを語るところ、モノクロームの写真も印象的。キャサリンがもうジョルジュに会えないと絶望して、それでも愛を歌う絶唱。フィルムを渡してからラストまでの一連の流れは(ストーリーのつっこみどころは別として)、場面としては美しいと思うし、好きだ。
そう、決して悪い作品じゃないんですよ。ただ、野暮ことを色々言いたくなるだけで。
そう言えば、『Daytime Hustler』のときもそんなこと言っていたなあ自分。どうも私にとって、小池氏は野暮なツッコミをしたくなる演出家のようです。

もう1回は見たいと思っているので、出演者についてはそのときにまた書きます。
あ、でもひとことだけ。開会式のタニちゃんがすげー格好よかったです。本人が「見どころ」と言うだけある(ジュンタさん4/22日記参照)。
立見席代はこれで十分元が取れる、と思う私はやっぱりタニちゃん好き(笑)。

次回は6月下旬の予定。また立見かなあ。宙組さんはメイク薄いから2階の一番後ろからだとちょっと物足りないのですが。(ベルばらの見すぎのせいもある。あれは立見席からでもはっきりわかるメイクだった・笑)
『NEVER SAY GOODBYE』見て参りました。5/27に立見で。友会優先公演なので終演後のご挨拶もあり、お得でした。

実は既に、宝塚大劇場で1回見ております。
その時の感想は「こんなしょぼい作品でたかはなが退団なのか」という失礼千万なものだったのですが(すみません…)、今回だいぶ印象が変わりました。良かった、良くなってた。
それはやはり演じる側の熱気によるところが大きいかと。元々大きな不満点は「薄い」「書き込み不足」だったので、出演者の熱演で力で底上げ可能なんですな。

が、それと同時に、やはり私はこの話ノレなかったのも事実。
何故ノレないのか、その辺の理由を整理してみます。
あ、以前緑野さんにタカコさんの歌について私が難聴であるかのように言われましたがそんなことはなくて、芝居の歌詞はちゃんと聞き取れます。ショーはかなり難しいですが。たぶん集中力の問題だと思われます。芝居の歌詞は台詞と同じなので聞き取ろうとするけれど、ショーはどっちでもいいやと思うので耳に入ってこないんでしょう。(花組公演でも『パレルモ』は問題なかったのに『ASIAN』はさっぱりだった)ので、不満の理由は歌詞が聞き取れないから話がわからないと言う訳では無いってことで。

理由その1。
まず第一に「薄い」ということ。
出演者の演技のおかげでだいぶ埋められてはいるものの、それでも薄いのは否めません。
必要以上に歌を多用した結果、物語が間延びした感じ。普通に台詞でやれば短くすむ場面がすべて引き伸ばされ、水増しされているような。高名な作曲家に依頼したので元を取ろうとたくさん書いてもらったからかと邪推してしまった(苦笑)。

その一方で、もっとじっくり描いてほしいところが描かれていない。国を守るために戦いに身を投じる者の葛藤とか、同じ目的を持って集まったのに主義主張で分裂したやるせなさとか。そりゃ、エピソードをいちいち掘り下げて描いていたら散漫になるかもしれないし時間もないだろうけど、それにしても全部歌で流されている、と言うか誤魔化されている気がする。
少なくとも、オリンピアーダの仲間たちの仲たがいと仲直りは、ジョルジュの歌でなし崩しにやっぱり仲間、ではなくて、きちんと描くべきだと思う(ベルばらの子守唄じゃあるまいし)。そうしないと彼らの人間性が薄っぺらだし、何故ジョルジュが彼らに人生の真実を見出したのかわからない。ついでに戻ってきたタリックを受け入れるくだりも、かっこつけで終わらないでちゃんと台詞でドラマにして表現してほしかった。
そして一番「うわー何故そこを描かない!」と思ったのは、キャサリン救出の件。クスリで自分の意思を奪われ操り人形にされたキャサリンを、ジョルジュと仲間たちは救い出す。
で、どうしてその直後の場面でキャサリンは既に正気を取り戻しているんですか。ここは正気を取り戻すところこそ描くべきでしょう。
例えば。隠れ家に落ち着いて、ジョルジュに名を呼ばれてうつろな声でアギラールへの恭順を口にするキャサリン。思わず激高するジョルジュに、彼女は正気じゃないんだと止めるヴィセントたち。ジョルジュの必死の呼びかけがキャサリンの意識を呼び戻す。あなたにまた会えた!とキャサリン。抱き合う二人のデュエット。
美味しいシーンができそうじゃないですか。

第二に、歴史ドラマ、群像劇として見た場合の不満。
この物語において、敵は誰だ?
ファシストと反乱軍に決まっている、と言う人がいるかもしれない。でも、実際に舞台に敵役として出てくるのは、ヒトラーでもフランコ将軍でもなく、アギラール委員じゃないの? 実際に舞台で人々が苦しんでいるのは、反乱軍の攻撃のためではなく、内紛と粛清によってじゃないの?
敵はジオンだけれど連邦軍の偉いさんも日和見で民間人の主人公たちは翻弄されるばかり、と言う話なら、連邦の腐敗の前にジオンの脅威を描くだろう。敵は帝国だけれど同盟軍も目先の利益と保身しか考えない連中ばかりで主人公は大変、と言う話なら、まず敵である帝国を描くだろう。(例えがオタクですみません)ファシズムと反乱軍は、言葉として、観念としてしか出てこない。観念としては、ハリウッドの場面から盛んに口にされるけれど実体がない。
命からがら悪の権力者アギラールから逃れたあとに、ジョルジュの写真を出版したキャサリンが「ファシズムの脅威を全世界に訴えた」と言われても、え、そういう話だっけ?と思うよね。

あ、ファシズムのことはみんな知ってるから説明不要と言うのは、私的には却下です。
せめて、実体としての敵を出せばよかったのにと思う。例えば前半の少年が負傷する場面でも、彼を傷つけた敵兵を出すとか、その装備の強さと残虐さを見せておくとか。でなければ、小池氏得意のスクリーン映像でヒトラーとドイツ軍とかゲルニカ爆撃とか、効果的に見せておけばよかったのに。
どうしてこんなに観念的になってしまったんだろう。それもまた薄さの一因。

歴史ドラマとしてもうひとつ不満なのは、アギラールという人物の描き方。
だって、一幕最後でアギラールの言ってることは正しいじゃん!「バラバラでは勝てない」そのとおり。誰かが統制して指揮を取らずしてどうする。「俺たちは自由な意志で集まった、誰の指図も受けない」って、それぞれの意志で勝手に戦ってたら軍備の整った軍隊には勝てないよ。
たまたま、彼は悪人であることが後で明らかになりますが、この時点では正しいことを言っている、と私は思う訳ですよ。
ので、その後の「One Heart」に共感できない。「スペインを守るために立ち上がった我々が仲間割れしてはいけない」それは正しい。が、そのことを認めて武器を置いただけでは出発点に立ち返っただけで、問題は解決してない。なのに解決したかのように感動していいのか。

二幕でアギラールは私利私欲上等小悪党であることが明らかになります。どうしてそうしちゃうかなあ。粛清と弾圧の担い手である彼もまた、理想と現実のギャップに苦しんでいた。その重圧から愛する女性を求めたが拒絶されて逆上、誤った手段に走った。とかいう感じの人物にした方がドラマとして面白いと思うんだけどなあ。それが「俺とスペインを支配しよう」って、そんなボロボロのスペインをあんた……。

いや、彼を私利私欲上等悪役にするドラマもありだとは思うんですよ。でもそういう風に、仮にも指導者的立場の人物を矮小化する場合、歴史を描くより恋愛がテーマなのだとはっきりしてほしい。それならそれで、そういう話だと納得できるから。時代背景を三角関係の効果的な背景としてのみ使ったオペラ『トスカ』のように(ヴェルディは「プッチーニは良い題材を手に入れた」と言ったのに、当のプッチーニは愛国心や政治的要素をすっかり隅に追いやってしまったと言う)。
更に、怒涛の恋愛ものにして1幕に縮めてショーをつけてくれた方が、私は嬉しい。今のままでは、歴史的大作を狙ったけれど実態はラブストーリー、でも歴史的大作を装っているおかげで恋愛も書き込み不足、という気がして、どっちにしても物足りないです。

第三に、主人公・ジョルジュの生き様について。
彼が人生の真実を見出すもの、根無し草の根を下ろす場所は、何故民兵としての戦場だったのだろう。
「同じものを見ている」キャサリンとの関係では、何故いけなかったのだろう。

ムラで一度見たときから、ずっとその疑問が引っかかっていました。
彼が祖国を持たない根無し草としての自分に引け目や焦りを感じていたことは「俺はデラシネ」の歌でわかる。祖国を離れて自由な意思で集い戦いに身を投じる人々の姿に、祖国を捨てた自分でも仲間として居場所を持てると憧れるのもわかる。

でも、それじゃキャサリンはどうなる。
同じものを見る、と言ったキャサリン。彼の居場所、彼の「根」は「見る」ことにあったんじゃないのか。彼はカメラで、キャサリンは言葉で。彼らは恋人同士であると同時に、見てそれを表現する生き方を選んだ同志ではないのか。

と言う訳で、今回は何故ジョルジュが戦いを選んだのかに注目してずっと見ていました。
で、結論。
ジョルジュが「俺も(武器を取って)戦う」と言ったのは、キャサリンに振られたからだ!
キャサリンにアギラールの下でラジオの仕事を続けると言われて、同じものを見ていたはずの彼女に置いていかれたような気がして、寂しかったからだ。で、センチュリア・オリンピアーダに居場所を求めたんですよね? 外国人でも祖国を離れてもともに戦う仲間だと言っている彼らに。
なんつーか、底の浅い男だなあ。

いや、すみません。ひねくれたモノの見方して。でも本気でそう見えたんですよ。
キャサリン奪回もあっさり済んじゃうから、ジョルジュのキャサリンへの愛を示す場面が無いしなあ。その前の銀橋ソングで「男と女の間には越えられない川が」とか言ってるけど、男と女とか言う問題じゃないだろう、ただの独占欲だろう、って感じだし。
だからフィルムをキャサリンに預けるラストも、私的には釈然としません。

いやまあ、ヴィセントの選択(混乱するバルセロナを見捨ててどこ行くんだ、故郷のために立ち上がったんじゃないのか)等も考えあわせて見ると、ただ単に「男は戦うのがカッコイイ」って思想なんじゃないかと言う気もしますが。

結論として、浅いし薄いし歴史ドラマとしても恋愛ものとしても消化不良、言う感想。
ですが、なのですが。そのはずなんですが。

そう、そのはずなんですが。
物語の字面を追うと、ジョルジュは底の浅い男に見えるのに、それでも彼の「俺はデラシネ」の嘆きは胸を打つ。
物語の字面を追うと、ジョルジュはキャサリンを理解しておらず二人の愛はかみ合っていないように見えるのに、それでも二人が占いにお互いの思いを自覚し見つめあう瞬間、時が止まる。手渡されるフィルムにゆるぎない愛と信頼が見える。

和央ようかと花總まりに、負ける瞬間。
舞台は結局、役者のものなんだなあ。
星組『Young Bloods!!』の感想、1幕2幕とだらだら書きましたが。
結論として「今更ワークショップ?」と見る前は思っていた柚希バウは見事にワークショップであり、かつ興行として成り立っていました(と思う)。

これは既にある程度の経験を積んで自分の次のステップがわかっているれおんだからこそできたことだと認識していますが、かと言って「主演を経験したことのない人のための主演の場」としてのワークショップも必要だし、見たい。
だから、その場合、演出家に配慮があればいいのではないかと。演出家が主役中心に配慮する、又は演出家の人選(苦笑)に配慮する。主演者の魅力を引き出すことや成長させることに配慮する。
と、花と星の『Young Bloods!!』を見て思いました。
月は見逃して残念でしたが、日程が合ってチケットがあれば、雪と宙も見たいです。

と、真面目ぶった話はここまで。

気になった出演者については今までの途中でつらつら書いてきましたが、書きそびれた人について一人だけ。
アズ(『スカウト』に非ず・笑)こと壱城あずさくんが、見ていて目に付く、と言うか気になっておりました。何だか濃い客席アピールをしていて。
午後、隣の席で観ていたジュンタさんも思いは同じだったようで。
「あのアズって子、面白いね」
「うん」
「あの地味な顔でそう見えるってことは、きっと本人的にはすっごく気合入れてアピールしてるんだろうね」
……確かに!
例えば、みやるりのような目の大きいはっきりした顔立ちの子は、普通にやってれば表情豊かに見えるだろう。でも、アズくんは切れ長の瞳の黙って立ってればクールキャラだ。
それが、他人より暑苦しくアピって見えるってことは。
「きっと、人の3倍くらい気合入ってるよ」
「……面白いなあ」
「……面白いなあ」
と言う訳で、二人で壱城あずさくんにチェック入れて帰ってきました(笑)。

あ、アピール過多と言えばあかしですが、今回はあまりくどく感じませんでした。
私が慣れた(笑)と言うだけでなく、端っこでやっていると気になるアピールでも、二番手位置だと気にならないと、そういうことかなと。
いや、『長崎』のときに上手花道でガン見してたら見つめ返してくれた印象が強いもんで。嬉しかったけど、芝居中だからと言うかにもかかわらずと言うか、捕り手の格好で真顔でずーっと見つめられたので、犯罪者になったような気分で微妙に気まずかったです。
今回のあかしは、格好よかったです。普通に格好よくて物足りないくらい(笑)。
乾いた退廃の似合う黒タキ姿から、芝居ラストの暴走気味の熱血まで。良かった、面白かった(結局面白いのか)(いや興味深いと言う意味で)。

もひとつついでに、アピールつながりで。
星組の客席アピールは「楽しんでるかい?楽しんでってくれよな!」ということの表現のように感じました。「オレに惚れな」じゃなくて(笑)。弱肉強食でなくてお祭り上等と言うか。同じようにアピール過多でも、そこが花組との違いかなあと。あくまでも私見ですが(それ言ったらここで書いてること全部私見ですが)。

えーとつまり結局、楽しかったなあと(笑)。

***

ここからは恐らく私の感傷。

5/20の午後公演。幕が下りて一回上がる。ここまではお約束のご挨拶。
でも、拍手に応えてもう1回幕が上がった、そのとき、彼は客席に呼びかけた。
「若い血潮のたぎりを、感じていただけましたでしょうか?」(具体的な言葉は記憶違いがあるかもしれません)
客席からは肯定の拍手と盛り上がり。
知ってる。
私、その言い方知ってる。聞いたことがあるよ。

こういうときに真ん中に立つ人はどうするのか、何をどんな風に言うのか、ずっと見ていたんだろうなあ。
実のところ、本来の個性はだいぶ違うものがあると、私は見ているのだけれど。
でも、背中を見て育つって、こういうことなのか。

星組『Young Bloods!!』。
最近見たもので似たものを聞かれたら、花組『Young Bloods!!』ではなく『Across』を挙げるだろう。いや、2幕最後の場面のせいじゃなくて。
ダンスを中心にしたシンプルな物語と、バラエティショーという構成のせいだけでもなく。演出家に自分のやりたい要素もリクエストしてつくっていくこと、座長として他の出演者の成長も気を配ること。そんなことも含めてワークショップであり、センターで仲間を引っ張ったり支えたりすること(それを帝王学と言うのだろうか)も含めた新人公演のような、そんな気がした。
太陽が沈む。
きらめく星が昇る。とびきりの一等星が。太陽の残照を受けてもいるけれど、それとは違う色の、自分自身の輝きを持つ星が。
やがて君はもっと輝くだろう。自らの輝きにより磨きをかけて。
いつもと同じ夜が始まる、いつもと違う君、という歌詞に思いを馳せつつ、君の更なる成長と洋々たる未来を祈る。
次回星組大劇場公演『愛するには短すぎる』『ネオ・ダンディズム』の解説ページ出来てました。
http://kageki.hankyu.co.jp/revue/06/star_takarazuka_aisuru/index.html

ど派手なチャイナ服すげー……(嬉しいらしい)。
ソフト帽がチャイナマフィア風です。赤いチャイナのとなみんもゴージャスです。
あー、とりあえずポスターが楽しみに思える写真でよかった。

芝居の粗筋も出てました。ついに、最後にしてやっと、トウコさんと男役同士でがっつり組むマジな芝居が見られるのではないかと期待。

いや、わかってますけどね。初期の解説は当てにならないし過大な期待は禁物だって。
でも無駄に夢を見るなら今のうちというのも事実。それが楽しいのも事実(笑)。外れるとわかっていても期待はしておく主義です。

と、その前に星組公演、梅芸もバウもあるんですが。当然行くんですが。
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える
無疵な魂(もの)なぞ何処にあらう?

***

朝海ひかるさんの退団発表に際し、自分の言葉が見つからないので、いささか有名すぎる詩ですが引用させていただきます。

初夏に去る人。秋に去る人。クリスマスに去る人。
みんなみんな、最後まで充実した舞台生活を過ごされますように。

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