昨日欄の続き。退団者のご挨拶から。
えー、今日日ご挨拶の様子はCSのニュースで捕獲できるし、それを紹介してくれているサイトさんもあるので、ボロボロの記憶力で再現しようなどと無駄な努力はしないことにしました。
憶えていることだけ。

東宝で、退団者は二人増えた。
ゆずちゃん。組からのお花は毬乃ゆいちゃん、同期からのお花は、多分碧海りま君。
このくらい下級生になると、すごく遠い花道からはるばる渡しにやってくる。ちょっと大変そう。
のんちゃん。組からのお花はひかちゃん。同期からのお花は、多分まりんちゃん。
ご挨拶が、すごく女の子声でびっくりした。こんな声だっけ? ヤンブラで台詞を言っているのは聞いたけど、それほど違和感なかったような。普段声ってことなのかな。

後の人のお花渡しは、大劇楽と同じ。
ひよりちゃんは、ももかさんとみなみちゃんから。小柄なひよりちゃんに対して、お姉様二人、と言う感じ。
お茶会での話のせいで、ふありちゃんへのお花渡しはれおん君が気になってしまった。ちゃんとしぃちゃんから受け取るのを待ってから、髪に花を挿していた。そう危なげなくやっていたと思う(笑)。
自分が渡してからもその様子を笑顔で見守っていたしぃちゃん、れおん君が渡し終えた後、身をかがめてふありちゃんの耳元で何かささやいた。とびきり優しい笑顔のままで。ご挨拶頑張ってとか、卒業おめでとう、とか、そういうことかな、と思ったけど、流石に何を言ったかまではわからない。ふありはちょっとうつむいていた。

みらんくん。大劇と同じ、ピンクの薔薇だった。
ご挨拶で「これで最後だと思うと辛くて辛くて身の引き裂かれるほど」と言ったのに、ちょっと驚いた。でもすがすがしい顔をしていたし、それが言えるというのは、本人の中では納得していると言うことなんだろうと思う。

エンディさんのご挨拶は、長かった。
「人生で一番素晴らしい瞬間」「志す気持ちを忘れません」「青春」という美しい言葉も「すさんだ気持ち」「天狗になりかけた」という綺麗事では収まらない言葉も、どれも真摯な響きを帯びていた。
真っ直ぐな思いを、真っ直ぐに、自分の言葉で伝えようとする気持ち。白く清浄な炎が見えていた。
そして、同期のトウコさんへの、万感の思いを込めた、でも笑顔での呼びかけ。
高央りおここにあり、と感じた。

しのぶさん。
温かいファンの皆様、温かいスタッフの皆様、温かい先生方、温かい同期……と、「温かい」の繰り返しが印象的だった。
しのぶさんにとって、宝塚は本当に温かいところだったのだろうなあ、と思う。

そして。
「わたるー!」と英真さんの声に「はい!」と応える声。
2階席なので、階段の上からは見えない。段々と下りてくる足元、そしてシルエット。
袴姿だった。
息を呑んだ。周囲も、空気がざわついた。
ムラは、黒燕尾だった。
熱いとかテンション高いとかいうイメージの割にはオーソドックスをよしとする人だから、袴かな?と思っていたら黒燕尾だった。
そうか、袴は最後の楽屋出で着るから、舞台の上では男役の正装である黒燕尾なんだ、と納得した。だから、当然今回も燕尾で下りてくると思っていた。
違うんだ。
もう、これで最後だから、違うんだ。
退団するから。

動揺が収まらぬうちに、あの人は階段を下りきった。組からのお花はとなみ、同期からのお花は、既に退団している伊織さん。
ムラのときのようにハグしたり等はせず、普通に受け取っていた。

ご挨拶。敢えて、記憶に頼って書く。
「大好きな舞台に、仲間達に、そして男役に別れを告げるときがきました。この退団公演は思っていた以上に寂しかったけれど、思っていた以上に幸せでした。
「白羽ゆりは、これから、星組での思い出、宝物を大切に、新しい仲間と頑張って行ってほしい。
「そして安蘭けいを中心とした私の愛する星組は、ひとりひとりより一層輝いてくれると信じています。
そんなような、ご挨拶でした。
簡潔で明瞭で、過不足なく意を尽くした、いいご挨拶だったと思う。
いつものように。

ワタさんのご挨拶の間、みらんくんが泣いてしまっていました。顎まで伝う涙を拭う、その、黒紋付の袖から出ている腕が、細かった。

最後の曲は、フォーエバー宝塚。これもムラと同じ。歌いながら退団者全員で銀橋。みんな笑顔(みらんくんも泣いてたけど笑顔)。

カーテンコール。
1回目。舞台上には全員。
ワタさん「この幸せは一生忘れません! ありがとうございました!」と。

2回目、
大阪、名古屋、そして日比谷公会堂で中継で見ている人へ、ありがとうございますとご挨拶。
「最高に幸せです!」と言っていた。

3回目
退団者、一言ずつ。
しのぶさんから。最初ワタさんが「しのぶさん」と声をかけたとき、全員だとはみんな思っていなかったみたいだった。次に呼ばれたエンディも戸惑って、暫く言葉を探していた。アドリブ弱いよね、エンディさん(笑)。Acrossのときもそうだった。でもそれがいいんだと思う。
みらんくんが「星組最高です!」と花束突き出し男前な声で言って、客席の歓声を浴びていた。トミーも「感無量です!星組万歳!」と。
ふありは「トランクは幸せで重すぎるので、引っ張っていきます」と言って、かわいー、とやっぱり歓声を浴びていた。

4回目は、最初ワタさん一人。
そして、退団者を呼ぶ……が、下級生がひとり下手から出てきちゃって、慌てて引っ込んでるよ!(爆)
ムラのあかしにつづき出トチリ。涙涙の大楽でほのぼのと笑いを誘う、これも星組クオリティなのか? ちなみに、多分海隼人くんだったんじゃないかと思います。違ったらこっそり教えてください。
とにかく、退団者全員で「皆様本当にありがとうございました!!」

5回目。
ワタさん一人。そして今度は全員呼ぶ。
「これからも愛する星組をよろしくお願いします」とワタさん。

6回目。
舞台にはワタさん一人。
「湖月わたるという男役が、皆様の心の中にいつまでも生き続けますよう祈っております。星組で卒業できて本当に幸せです」と。

この6回目、ワタさんはお辞儀をして、いつまでも頭を上げなかった。
緞帳は下り、終演アナウンスは流れたけれど、このままでは終われない。終るはずがない。

そして、7回目。
今度は恒例の、袖から登場。
「わたるさーん」「大好きー」「ありがとー」とたくさん、たくさんの声がかかる。それに対して「はーい」「ありがとうございまーす」「私も大好きでーす」と応えるワタさん。その度に歓声。
最後、投げキスして、ちょっとおどけてキザって、袖に入っていった。

再び終演アナウンスが流れても、拍手は鳴り止まず。
ついに、8回目のカーテンコール。今度は緞帳が上がる。
舞台には、出演者全員の姿。
全員で「ありがとうございました」。

これで、最後でした。

退団者ご挨拶の間、この場にいることが出来なかったサトリさんに「できたらしぃちゃん見てください」と言われたこともあって、結構しぃちゃんを見ていました。
いつも、こういうときでも笑顔でいるしぃちゃんだけど、ライトが当たっていないときはかなり目を瞬かせていたので、多分泣いていたんだと思う。基本的に口角が上がっているから、そんなに泣いているように見えないけれど。
下手側のトウコさんやすずみんは泣いてへの字口になってたし、ウメも涙を拭っていた。一人挟んで隣のれおんも、子どものようなべそかき顔だったんだけれど。
そして、ライトが当たっているときは、いつものように笑っていた。
笑っていてくれて良かった、と思った。
「泣くときは泣いてもいいのに」と言ったピュアファンサトリさんには申し訳ないと思うけれど、でも、しぃちゃんが笑顔でいてくれて、助かった。いや助かったも何もないんだけども。
あとフォーエバー宝塚のとき一輝慎くんがいい笑顔なのを見て、思わず暫し目を留めてしまったり。

どうも、私は笑顔に弱い。
いや、タカラジェンヌたるものきれいな笑顔は基本スキルで、後は好みの問題なんだろうとは思うけれど、それにしても。
思えば、初めてワタさんを見たときも、その笑顔に惹かれた。
ルキーニ役だった。男くさいのに爽やかで、ちょっと悪っぽいけどやんちゃ坊主のように人懐こく屈託のない、ぱっとその場が明るくなるような笑顔。
入りのとき側にいた人が、ほんの下級生のときに見初めたと言っていた。「オペラで脇の子たちをずーっと眺めていたら、笑顔が目に飛び込んできて。何が出来る子なのかわからないけど、笑顔がとっても可愛いなあと思って」。
随分後だけど、私も似たようなもんなんだ。
リアル男性みたいな格好よさだとか、ダイナミックなダンスとか、背が高いとか包容力とか。そんなことを認識する前に、笑顔に惹かれた。

ご挨拶でも、カーテンコールでも、ワタさんはずっとニコニコと笑顔だった。
ワタさんが舞台上で泣いたのを、私は2回しか見た事がない。
1回は、Acrossサンシャイン千秋楽。最後の曲「Anniversery」を歌っていたワタさんは、サプライズ演出のスモークを見て、泣いてしまったんだった。
泣くまいと思っていたのですが、すみません、と言っていた。
2回目は、今回の公演の大劇場前楽。サヨナラショーの後、ソーランでみんなの背中にも星ってついているのを知らなくて、みんな一生懸命振りを覚えてくれて、と。「すみません泣かせてください」と断わってから泣いていた。
思い出すと、いつもワタさんは笑顔だった。退団者のいる千秋楽も、退団者や退団者との別れに泣いている人たちを、支え包み込むように、いつも笑顔だった。
泣いちゃいけない、自分は泣くべきではない、と思ってるんだろうと思う。そして、それが無理でなく自然に出来てしまう人なんだろうとも。

ワタさんは、よく不動のものに例えられる人だなあ、と思う。
太陽。ポラリス。セーヌ川に敢然と立ち続ける舫杭(私は未だにワタさんの演じた役の中でアリスティドが一番好きだ)。
太陽のように、分け隔てなく全ての人に幸せを降り注ぐ。北極星のように明るく行く先を指し示す。舫杭のように心の拠り所となる。
もちろん、そんな大仰な話だけじゃなくて、みんなの先頭を切って走るやんちゃな少年のようだったり、来るもの拒まずの色男だったり、が基本なのだけれど。

この日も、舞台上のワタさんはずっと笑顔だった。あたたかく、明るく、気持ちのいい笑顔。
最後まで、ずっと。

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