退団者の入りを見届けて、とりあえず何か食べに行く。どこへ行っても白い人でいっぱい。
12時ごろに劇場に戻る。ゲート前の広場で退団者の会が机を並べてチケット出しをしている。チケットを出している人も受け取っている人も白い服。向かって左側に下級生の会。右手にしのぶさんエンディさん、そしてワタさんの会。ワタさんのとこは更にプレートが白い花で飾られている。

13時。
開演アナウンス「星組の、湖月わたるです」で大きな拍手。
芝居は、正塚作品だから、千秋楽だからと言ってアドリブは無し。特別にアドリブが無い分、丁寧な思いを込めた芝居が心に沁みる。

一番サヨナラを意識したのは、実は「一日が終る」でも「フェアウェルパーティね」でもなく。
フレッドが歌いかけて「だめだ、忘れた」となって、バーバラが微笑んで寄り添う、その後の場面だった。ここで、すずみんの甘い声のソロが入ってくるのが私は毎回好きだったのだけれど、今日はいつもと違って。
物語の歌でなく、ワタさんを見送る歌、のように響いた。

夢ならどうか、見果てぬままに
醒めやらずに願えど


すずみん、和くん、ウメちゃん、

今はつかの間、ただこの時を
思い焦がれて、そのまま


そして、れおん。

声を詰まらせ、言葉少なに
片時も見落とさず、何一つ逃さず


勝手な思い入れかもしれないけれど、4人からの惜別の歌のように聞えて。
ちょっと泣いた。

ショー。
今日はワタさんを見よう、と思っていたのに。
「ダンディズムとは…」の場面で、しのぶさんが髪に、ふありちゃんがチョーカーに、それぞれ白い花を飾っているのに気づいてしまったら、目で追わずにはいられなくなった。
その後の「What’s ダンディ」では特に花をつけたりしていなくてほっとしていたら、最後に組長の「♪湖月わたるもお忘れなく」に不意を突かれた。ベタなのに、ベッタベタなのに、不覚にも泣かされた。何だよそれお忘れなくって何だよ何だよ忘れるわけ無いじゃんかよ(逆ギレ)(落ち着け)。
「恋する男はドンキホーテ」ふありひよりが手首に花をつけていて、それぞれドレスと同系統の小さい花で、そのさりげなさにしんみりしたりほのぼのしたり。
「All by myself」エンディさんとみらんくんが、胸に花を飾っていた。二人とも、とてもいい笑顔で。
実は、みらんくんについては、ちょっと心配していたんだ。芝居の最初、いつものように踊っていてもいつもの笑顔でなくて、何だか泣き出しそうなのをこらえているように見えて、大丈夫かなと。
でも、芝居もその後はいつもどおりだったし、ショーではずっといい顔をしていた。何と言うか、キザりとかアピールとかの「作り込んだ男役の虚飾」を脱ぎ捨てたような、自然な楽しそうな顔で、踊ったり歌ったりしているように見えた。ので、ちょっとほっとした。

パレードは、退団者は思い思いに白い花をつけて。
赤い衣装に白い花は映えて、ああ、前回星組で退団者を見送ったときもパレードは真っ赤な衣装だったな、と思ったり。
ワタさんは最後までいつものままで。
そりゃ、白い衣装で銀橋で一礼するときとか、いつもより長く大きな拍手だったけれど。でも特に花をつけるとか何とかではなく、いつものままで。

サヨナラショーの準備の間は、昨日と違って退団者からのお手紙を組長が読み上げ。
涼麻くんまで読んだところで「準備が出来たようです」と。

サヨナラショー。
大漁ソーラン。終始ニコリともせず真顔で気合のしぃちゃんと、やんちゃなヤンキー少年のようなあかしがツボでした(いきなりその二人ですか)。
タカラヅカ絢爛。昨日は立つ人はぱらぱらだったんですが、今日は最初総立ち。みんな踊る踊る。
となみちゃんの「花に誓う」、ワタさんの「愛の三叉路」。
「愛の三叉路」は、必ず入ると思っていた。ベルばらが私にとってどうだったかと言うのはおいといて、「歴史ある宝塚の名作」で、新曲が書き下ろされてその創唱者であるというのは、やはり意味のあることなんだろうと思うから。
「アリベデルチ・ローマ」。しのぶさんの歌は当然ながらシビさんとは全然違う(『ドルチェ・ヴィータ』では耳をつんざく歌声の船長夫人だったもんな)けれど、でも魅力的で。続くエンディはあの日と同じだけれど、あの日よりもっと深く、余計なものをそぎ落としつつドラマを感じられるような歌唱で。踊るトミーはオトコマエで改めてスタイルの良さを認識、やっひーは大人の包容力。ひよりちゃんは可憐で愛らしくふありちゃんは楚々として、でも二人ともどこか凛として。
みらんくんの「1914/愛」。「セーヌの川は知っている」から歌いだすんだよね。最初の、短調のメロディはカットして。客席に語りかけるような様子が茶目っ気たっぷりで、楽しそうで、いい笑顔で、良かった。

そして『王家に捧ぐ歌』。
上手からラダメスが登場。「エジプトは領地を広げてる」お披露目の歌。そのまま晴れやかな顔で銀橋を駆け抜ける。(実は前楽では下手席だったので「うわこっち走ってくる」感覚を味わいました)
歌い終わる頃、下手からアイーダが現れる。銀橋中央で巡り合う二人。「月の満ちる頃」。アイーダはラダメスの頬に触れ指でなぞり、ラダメスはアイーダの首筋に顔を埋め口づけし。それは物語から背景から切り取られているが故に、恋人達の瞬間のより純化された再現で。
そう、二人とも完全に「ラダメスとアイーダ」だったんだ。
扮装まで完璧だったおかげもあるだろうけれど(流石にアイーダは色白かったですが。ラダメスもショー用で口紅赤かったですが。衣装鬘は完璧)、それよりも二人のなりきり具合、入り込み方の力だと思う。
「お互いを思い続けよう」と微笑んで暗転の後、手を引いて二人一緒に銀橋からはけていくのが印象的でした。

やっぱり、始まりの歌、だからかな。
二人が組んだ最初の舞台、出会いの役だから、これは外せなかったし、トウコさんとのデュエットはこれでなければならなかったんだ。
檀ちゃんのサヨナラショーでのデュエットが『風と共に去りぬ』であったように。

「ソウル・オブ・シバ!!」「すみれのボレロ」と続き、再度『王家に捧ぐ歌』から「世界に求む」。
ここで一斉にペンライトがつく。全ての客席に貼り付けてあった(立見の人には入口で配られたらしい)青い、星型のペンライト。
実はこのペンライト、『王家に捧ぐ歌』が始まりましたら振ってください、って書いてあったんですね。
で、前楽では「エジプトは領地を広げてる」でみんな点灯しはじめて。でもあれペンライト振るような曲じゃないし、あれ?と思っていたら、どうやらここで振るのが正解だったらしい。(そのあたりの詳細はジュンタさん9/19日記「しあわせのペンライト」参照)(また勝手に紹介して失礼)
千秋楽でもペンライトの注意書きは同じ。でも今日は見事に、この最後の曲で星の海となりました。いや経験と伝聞の力ってすごいね。
ちなみに前楽のペンライトは細長いスティックタイプで「WATARU」とネーム入りでした。

銀橋でのワタさんのソロから始まる「世界に求む」。
「この世に平和を、この地上に喜びを」
この人の声で聞くと、本当にそう思える。いつもいつも。
やがて組子達が階段を下りてきてコーラスに加わる。アイーダのパートになるのかな「たとえ今は」とみんなと別タイミングのソロは、ここではとなみちゃんでした。一生懸命に呼びかけている、と言う感じの、声。
ワタさんは振り返り仲間たちの姿を見渡す。これもまた、始まりの歌。ワタさんと星組との、最初の舞台の歌。
その背中が何とも言えず、幸せそうに映った。

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