今回はキャラクタと出演者の話を。
プログラム順に参ります。

ウィリアム=立樹遥、については既に色々書いたしこれからまだ書くかもしれないので、ひとことだけ。
全編を通して一番格好いいと思ったのは、最後の方、膝をついてエンマを支えて、抱いている姿。
ここを格好いいなんて思って見てるなんて不謹慎の誹りを免れませんが、でも、もう二度と動かないエンマを膝にもたれさせてしっかりと支えている姿が、その大きさに映える赤い軍服、立てた膝の高さが強調されるブーツと相まって、本当に素敵だと思ったんだ。物語に没入する心の一部で。

エンマ=陽月華、についても既に色々書いたしこれからまだ書くかもしれないので、ひとことだけ。
本当にうめちゃんすごい。上手い。上手いと言うか、いい娘役と言うか、いい役者と言うか。『Across』のときも思ったけれど、ダンスは上手いけどガサツな現代っ子、と世間が思っている隙に、陰影を表現できる魅力的な女性になっていた。
エンマの表現。モルニー伯爵を引っ掛けたときのしてやったりと言う表情、シャーベットを諦めるときの無防備な女の子の姿、ケイティのカンカンに目を奪われて心底嬉しそうな顔、そんな表情の一つ一つが、すごく魅力的で、エンマの存在にリアリティを与える。

ニール=涼紫央
何そんなに口とんがらせてるんですか。かわいいじゃないかこいつ。
いやもう、今回のニール=すずみんは永久保存版ですよ。どっから見てもセレブと言う我々(我々?)がすずみんに抱いているイメージを満足させつつ、実は可愛い奴なんだよという一粒で二度美味しい、みたいな役で。本人念願の悪役でなくて残念だったけど、でもすげー楽しそうだし。よく「二番手はオイシイ」と言われるけれど、二枚目半のオイシイ二番手をイキイキと演ってました。「しあわせ、ですか」は名台詞。でもあんまり崩しすぎない方が好みでした。大野先生が「二枚目でやってください」と言ったのは正解かと。
シンシアとの恋の顛末も微笑ましいしねー。悲劇に終る主人公カップルとは別に、堅実に平凡に結ばれるこの二人がいるから、ほっとする面もあるわけで。
コメディばかりでなくて。私が好きなのは、母親のことを「どうして父に相応しい女じゃなかったんだろう」と言うウィリアムに「仕方ない。身分が違うんだ」と言う場面です。この言い方が、言葉に反してすごく優しいので。優しいと言うか、共感。「貴族の社会に馴染めないでいる(byシンシア)」馴染もうとしてそれまでの自分の世界との軋轢を抱えているニールならではの共感。でもそんなことを知らないウィリアムはニールの共感に気づかずに、自分の思いに入り込んだまま話を続けるのだけれど。
結論:やっぱりこの人上手い。

クロード・ブランメル=萬あきら
黒い軍服、黒い眼帯、そして「ダンディの末裔」。素晴らしい。書き込み不足な部分の多い役どころを、存在感で持たせた感も。
ワルツの場面で一人だけ段違いの滑らかさに感動しました。他と全然違う。

退任前のウィリアム=一樹千尋
最初と最後だけの出番という贅沢な使い方。でも良かった、ヒロさんが「その後のウィリアム」で。しぃちゃんのウィリアムの「その後」であることを意識してくれてますよね。表情とか喋り方とか。特に最後去り際の晴れ晴れとした笑顔が。
ナウオンで「お稽古中『仕事の最後の日はこんな感じなのかな』と思って泣いてしまったというエピソードに、あれだけの出番でそこまで掘り下げてくるとは、役者なんだなあと感嘆。

カウリー男爵夫人=万里柚美
占い好きのご夫人。浮気性の旦那に愛想を尽かし優雅に別居中。若くてきれいな男の子が好み。
『花のいそぎ』のときと似たところのある役どころですが、更に屈託のない女性。お笑いやっても品があって綺麗だから、上流階級の奥様というのに説得力あるよなあと。
カンカンに混じっているのが衝撃でした。いや素晴らしかったです。更にフィナーレでにしきさんとみきちぐを両脇に従え踊られた日には、一生の語り草に。

モルニー伯爵=にしき愛
すげーエロいです。色気だだ漏れ。前半の色好み全開な姿もすごいですが、後半のシリアス芝居、「実はわかっている」迫力もすごい。あまり説明はないのですが最後に洩らした言葉、彼は何に何故「傷ついた」のかずっと考え込んでいます。
カンカンではセンターパーツ前髪で若作り。その落差がまたすごい。

ロバート=美稀千草
さっきからみんな褒めてばっかりだけど、みきちぐもすごい良かったですよ。コメディ担当、顔芸だけで笑いを取っていく強者。だけど、アーサーとのやり取りではハートフルな芝居もしていて。上手い人なんだよな、やっぱり。
ウィリアムとの凸凹コンビは最高でした。同期っていいね!つか、同じ組にこんな対照的な同期で残っていたら大野氏ならずともコンビで漫才させたくなるよね(そうか?)。ちなみに私が一番好きなのは「うらやましい」と言ったロバートを「こいつです」とブランメルの前に突き出しておきながら怒鳴られるロバートに「うわぁ」という感じで見ていられず顔を背けるウィリアムと、そんなウィリアムにくわっと怒り顔のロバートです(細かいよ)。君ら小学生か(笑)。
途中暫く出てこなかったのでクリミアの前線送りになったのかと心配していましたが、1幕ラストで再登場して一安心(いきなり殴られてるけど)。
ところで、「英国では中佐以下の階級の売買が可能であったらしい」とわざわざロバートのプロフィール欄に書いてあるのは、要するにそういうことなんですか?(笑)

シンシア=彩愛ひかる
諜報機関の事務方。すごく有能そうなお姉さん。職場に一人ほしい。
手堅く有能で大人、なのに可愛い。ニールに対してもお姉さん的態度なのだけれど、告白のとこは可愛いのよ。このカップル、最初は意外だったけど納得でした。つかこの二人の場面がとても微笑ましい。少女漫画王道。そしてウィリアム=しぃちゃんがニヤニヤしながら微笑ましげに見守っている表情を見るのが好きでした(話ずれてる)。

パイーヴァ侯爵夫人=毬乃ゆい
出番少なくて、歌もここぞという聞かせどころでなくてやや勿体無かったですが。
ロシアに残した息子がいる、と言うのがね。ベタなんだけど、説得力があった。どこか陰と言うか不幸そうな雰囲気が。

ミス・ハワード=南海まり
すげー(圧巻)。すごくてつよくて上手くて可愛い。
79期二人を手玉に取る85期娘役(笑)。「初心な青年を翻弄する経験豊富なご夫人」の図に何の疑問も違和感もないのはどっちがすごいのやら。
堂に入ったものです。本当に上手い。
単なるコメディ担当ではなく、2幕では粋な気遣いを見せる大人の女性で、これまたあったかくて優しくてちょっとお茶目で粋でステキだった。あ、歌も良かったです。

アーサー=麻尋しゅん
その板についたいいとこの坊ちゃんぷりに震撼。そしてウィリアムとの微妙な距離感や機微の表現がすごく上手い。可愛い男の子なのに何かひっかかりのある演技をしてるの。
この、素直で可愛い弟、屈託がなさそうででも口に出せないことを抱えている、というアーサー、しゅんくんはもっと大人っぽい役に挑戦したい年頃かもしれないれど、でもしゅんくんでないと出来ない役だなあと。いやもう本当にねえ、微妙な傷つき方とか戸惑いの表情とか、すごく上手いよね。ロバートのところでも触れたけれど、言うか言うまいか迷ってロバートに視線を向けるところとかすごい好き。
アーサーが可愛い系の役な分(?)群舞ではギラっていてギャップがステキです(笑)。

ケイティ=妃咲せあら
かーわいー。
夢に真っ直ぐなちゃきちゃきした下町娘。若草色のドレスが似合ってた。いやもうほんとに可愛いよねー。可愛くて真っ直ぐできらきらしているからこそ、夢が絶たれたときに気丈に振舞う姿が泣けるのですが。ちなみに私もサトリさんもエンマとケイティのこねずみデュエットが一番の泣き所です。
うめちゃんエンマがシャーベット代を落としちゃったときに「急いで!」とアドリブ飛ばしていたのも驚きました。舞台度胸あるよな。
カンカンで一瞬すずみせあら(『それ船』カップル)が実現していたのが嬉しかったです。

ここまでがプログラムに扮装写真入り。
残りの中で、私的メインキャスト陣。

タチアナ=真白ふあり
かーわいー。
せあらとは違った意味で可愛い。強気でクールなのにちっちゃくてかわいい、ちっちゃくてかわいいのに強気でクール。『花のいそぎ』の呼子に続き、大野氏はふありちゃんにこういうキャラを振るよね。実際似合ってる。真紅のドレスも甘くない感じにすごく似合います。
しかし強気なのはいいけれどあれだけ体格差のある相手にわざわざ接近戦に持ち込まない方がいいと思うぞタチアナ。せっかく飛び道具持ってるのに。(それに対してウィリアムの「武器を持った相手に素手で格闘戦」率の高さと言ったら(笑)。タチアナ×2、ブランメル、サマービル)
ふありちゃんについては、オープニング後日譚パートのエミリーも可愛かったです。こっちはクリーム色のドレスで普通にお姉さん風。彼女も諜報部員だけど。
本編でクールビューティな分、フィナーレのカンカン(ツインテール!)のはじけっぷりも愛らしかったです。隣がみなみちゃんで、その身長差もたまんない。ここは毎回ふありに釘付けでした。

クリス=銀河亜未
かーわいー。
これまた別の意味で(笑)。可愛い弟くん、シンシア姉さんとのコンビは絶妙。「学校じゃないんだから」「…はい」が好きです。
何と言っても彼の見せ場はニールとシンシアが相思相愛とわかったときの狼狽振り。「何これ」「姉さん?」毎回確実に笑い取ってました。その後の「仲間じゃないか」のときも、最後まで一人だけ嫌そうなの(笑)。面白いな君。
でもコーヒーを持ってくるあたりの、普通に有能なフットマンとしての仕事振りも良かったです。
あとはフィナーレのカンカンで娘役ちゃんの側転補助に備えるところ。ズボンをちょっと引っ張って膝を曲げて構える姿が、本当に男の子みたいで可愛かった(細かいよ)。

サマービル=水輝涼
私的には今回のニュースター。エンカレ以来波が来てますよ彼。
実際「あれは誰?」と聞かれる率高し。(ふありちゃんもかなりだけど)
サマービルと言う役が、シリアスでクールな敵役で美味しい役ではあるのだけれど、それをちゃんとモノにした水輝くんが偉い。
格好いいよねえ、ナイフの取り出し方構え方、銃の扱い方。しかもこの公演期間で上手くなってる、更に格好良くなってるし。何か、人間味みたいなもの、ドラマを感じるようになりました。いや私が回数観てるからそう感じただけかもしれないけど。
群舞でもしゅんくんと対で使われていて違うタイプの二枚目で、見ていて実に楽しいです。あんなに堂々と演じていたのに千秋楽では学年相応に泣いちゃってたのもツボでした(失礼)。これからが楽しみだ88期。

その他の方々、印象に残った点を。

トーマス=紅ゆずる。
ニールとシンシアの息子。最後おいしいとこ持ってきます。2回目以降の観劇だと最初に黒服として彼が出てくるのが何気におかしい。そのせいか楽ごろは帽子をかぶって出てくるようになったけど、やっぱりおかしい(笑)。
そう言えば彼の初台詞を聞いたのはこのバウホール『それ船』。上手くなったなあ。

ヴァイオレット=羽桜しずく
かーわいー(またか)。いや本当に可愛いですよ。ピンクのドレスが良く似合ってた。台詞もすごく上手いって訳じゃないかもしれないけど、恋人を案じる若い娘の真剣さが感じられて、良かったです。

カスティリオーネ伯爵夫人=純花まりい
美人だけどどこか人形のような。「君はまだ若すぎる、あと2,3年待ちたまえ」と言われてしまうのが納得なのは、あてがきか故意かはたまた偶然か。

エミール・ペレール=青空弥ひろ
もみあげに気合を感じました。千秋楽の真顔でアドリブもナイス。

カウリー男爵=美城れん
あごひげに気合を感じました。「火遊びと家柄しか能のない」駐仏大使を体現、柚美さんの旦那役も違和感ない。全ツモンゼットをやったことを考えるとすごい芸幅だ。バンケイさんが美女に囲まれている場面で、すずみんニールと毎回何やら遊んでいた模様。しぃちぐばっかり見てたんであんまり見られなくて残念。

何役もやってくれた涼麻とも君、人形のような美女でドゥミモンドのうつろさを体現していた白妙なつちゃん、最下級生なのにアドリブ頑張った千寿はる君、書ききれなかった人もみんなみんな、この作品を作ってくれてありがとう。出演者の皆様に心からの感謝を捧げます。

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