星バウワークショップ『Young Bloods!!−Twinkle Twinkle STAR− 』。
気を取り直して、第1幕の感想を改めて。

【第1幕−彷徨の星くず−】

第1場 モンタージュ
うごめく人影−モンタージュたち。
その中から抜け出した、シナリオライター・彩海早矢が物語の幕開きを告げる「映画でも見るようにくつろいでお楽しみください」。
物語を二重構造にする意味があるのかなあと思いましたが、白いスーツの襟を直して語りだすあかしの気障な仕草がツボったので良しとする(笑)。

第2場 チェリンカ
「1974年。ソビエト、レニングラード」とシナリオライター。
天才ダンサー・チェリンカ=柚希礼音の登場。
……すげー。マジでバレエダンサー。少なくとも私のような素人目には、ぽかーんと口をあけて呆然と見とれてしまうすごさ。『ドン・キホーテ』を結構長く踊ります。つかみはOK。
相手役はマリヤ=稀鳥まりや。「キトリ」という芸名からバレエ好きなのかなと思っていたのですが、やはり。礼音くんと比べてしまうと流石にちょっとかわいそうではありますが、でも可愛かった。

第3場 秘密
終演後、チェリンカを絶賛するマリヤと、付き人にしてチェリンカの親友のアズ=壱城あずさ。二人とも芝居はまだまだこれからかも。いやれおんが出来すぎているからそう見えるのかもしれない。
チェリンカの妻ノノーシャ=花ののみも楽屋を訪れる。病弱なノノーシャが無理をして見に来たのではないかと心配するチェリンカに、ノノーシャは生後間もない息子にも彼の姿を見せたかったのだという。ここ、チェリンカがノノーシャにきつく言いアズにも怒鳴るのだけれど、それが心配と愛情ゆえだと伝わってきて、いいです。
皆が帰り一人になったチェリンカ。彼には誰にも告げていない秘密の計画があった。次のカナダツアーを利用して、アメリカに亡命する。妻と子を残していくことを苦悩しながら「でもソビエトじゃもう踊れない。俺の体は、魂は自由を求めてる。俺の血潮は止められないんだ!」そこでYoung Bloodsにつなげるか、つなげなきゃいかんのかと頭の一部でツッコミつつ、礼音チェリンカの迫真の熱演にそんなことはどうでもよくなり。星ベルばらでも思ったけど、歌上手くなった。何より、感情の乗った魂の叫びに持って行かれました。
子供時代のチェリンカ=天寿光希くんも可愛かったです。

第4場 亡命
姿を消したチェリンカに狼狽するマリヤとアズ。口々に彼をなじる群集。群集のセンターはあかし。コート姿もいいぞ。
そして、彼を信じる、それが彼の選んだ道ならば幸せを祈るだけというノノーシャ。ののちゃんが儚くも健気な妻を好演、泣ける。
逃亡者チェリンカは客席。旅装のコートがこれまた似合う。「Run a way」と責めるような舞台上の群集のコーラスと「Freedom」と訴えるような客席のチェリンカの叫び。掛け合いが格好いい場面です。

第5場 二年後 ブロードウェイ
プログラムには二年後と書いてありますが、実際はシナリオライターが「四年後」と言ってました。ちなみにここコートを脱ぐあかしの仕草がいちいち気障でいいです。
とあるバー。鬱屈した風情でひとり居るチェリンカ。ただ脚を組んで座っているだけなのに格好いい。いつの間にそんな技を身につけたんだ、やるな(笑)。
踊り子・ナルキア=成花まりんに誘われ、戯れに踊るチェリンカ。只者ではないと色めき立つナルキア、レーナ=遥奈瞳、リーナ=南風里名。そこへ現れたブロードウェイプロデューサー・カーマン=七風宇海は、チェリンカを歓迎する。
にゃる可愛い。そしてエンカレ以来何だか気になる七風くん(笑)。上手いとか格好いいとか言うより、何だか味のあるキャラだ。いかにもお芝居好きそうで好感持てるし。

第6場 ミス・コローネ
芸能事務所の女社長・ミス・コローネ=音花ゆり。外国からのアーティストを育ててデビューさせるのが趣味(趣味って・笑)な彼女の元では、スペインからやってきたルーカ=美弥るりか、ノーチェス=羽鷺つばさ、ぺぺ=海隼人が猛レッスン中。この3人の3バカトリオっぷりがたまりません。憧れのチェリンカが現れて喜んでいたのが、自分達のデビューの機会が後回しにされると気づき慌てて社長にアピールするも突き飛ばされてコケるあたり、可愛い(笑)。中でもやはりみやるりは一日の長か、登場のダンスシーンでアピールが一番板についてました。
コローネが探していたチェリンカをカーマンが連れてきた。感激するコローネは、彼をデビューさせるためにある人物と引き合わせようとするのだった。
コロちゃんすげー。ナチュラルに女社長でコメディエンヌ。今まであまりお芝居する機会はなかったと思うんですが、ふつーに上手い。
カーマン七風くんともいいコンビ。と言うか二人の関係が気になる。「ボス」「ボスはやめて。私はまだ独身なんだから」とか、チェリンカにめろりくらりふらりなコローネを「社長しっかりしてください!」と張り倒して(!)みたり。面白いよこの人たち。
チェリンカと3人で「彼をスターに」と歌い踊るシーンも楽しいです。「月面着陸以来の大ニュース」って(笑)。ひとり二の線を崩さないれおんもナイス。

第7場 ミーシャ
シナリオライター・あかし登場。格好つけてタキシードを着つつ、「退屈し刺激を求める紳士淑女が集うクラブ」へ。このタキシードの上着を着る仕草もいちいち気障です。今回衣装替えプレイ(そんな言葉は無いだろう)多用。
退廃、虚無、刹那的な風情で踊る男女。
そしてスペシャルゲストはミーシャ=華美ゆうか。
……すげー。
世紀末の大女優、氷の女王という表現に負けない大人の女。シャンパンゴールドのドレスが似合う堂々たるマダムっぷり。真打ち登場。
エスコートはあかし。手を取り踊り、彼女がキセルを出すとすかさず火をつけ、ソファにかければその背後に控える。濃い、この二人濃いよ(大喜)。
そこへ現れるチェリンカ一行。コロちゃんもスーツから臙脂のドレスに衣装替えして大人の雰囲気。
ミーシャとコローネの腹の探り合い。ミーシャは余裕だがコローネも負けてないぞ。そして紹介され、踊るチェリンカとミーシャ。毒のある言葉を投げつけ挑発するミーシャだが、毅然と撥ねつけるチェリンカを逆に気に入り、相手役に決める。
ここ、いつの間にか作中の人物になっているあかしがいいです。ミーシャがチェリンカと踊る姿に、どこか忌々しげな表情。チェリンカにハイヒールを投げつけ拾えというミーシャに、なかなかチェリンカが反応しないのを見て自分が拾いに行こうとしてミーシャに止められる。ミーシャを引きずって突き飛ばすチェリンカに激昂して掴みかかろうとする様子を見せるが、気に入ったと高笑いするミーシャに目を見張る。
二人の関係が気になります。台詞が無いのに態度や表情が雄弁なので余計に気になる。また華美ゆうかちゃん、高笑いがはまってるし。

第8場 妻の面影
ミーシャの言葉がチェリンカの心に突き刺さり、彼は妻ノノーシャを思う。君はわがままな俺を恨んでいるだろうか。「君を愛している。愛しているからこそ、君の側で本当の自分を偽れなかったんだ!」
仕方が無いなあ、と思わせられてしまう。愛している、その言葉に偽りは無いけれど、それでも「俺の血潮は止められない」。そういうキャラが似合うのかれおんくんだからそういう風に映るのか。

第9場A スター誕生
ミーシャとチェリンカの新作レビュー。まずはセルリアンブルーの衣装のダンサーたち。ショータイムを宣言し、センターで踊るのはあかし。
あかし絶好調。午前公演は段上がりどセンターで見てたんですが、投げキス直撃でした。楽しかった。狂言回しを意識してかあまり愛想を振りまかずクールに格好つけているのもまた良し。

第9場B スター誕生
群舞と入れ替わりに現れるチェリンカとミーシャ。黒い衣装で、アダルトにセクシーに。
すげー。かっこいー。
れおんもすごいが、そのれおん相手に「大人の女、新天地ブロードウェイの女王、越えるべき壁」として存在感を持つ華美ゆうか嬢、いやいっそ女史がすごい。
いやほんと格好よかったですよここ。

第10場 光と影
チェリンカのアメリカデビューは大成功。ナルキアやルーカたち、コローネが祝福する。ミーシャが現れ「全く、全部持っていかれたわ」と言う言葉にコローネは慌てるが「勘違いしないで」「遠慮せずぶつかってくる相手に久しぶりに出会えて喜んでいるわ」と。かっこいー。「一緒に出ましょう。マスコミが待っているわ」いちいちかっけー。
しかし浮かない様子のカーマン。彼はチェリンカに一通の電報を渡す。そこに記されていたのは、妻ノノーシャの死。床にこぶしを叩きつけ慟哭するチェリンカ。抱きかかえて止めようとするカーマン。
今夜の成功も始まったばかりの新しい人生も全て捨てて、ノノーシャに償うためにソビエトに帰ると言うチェリンカ。その前に現れたのはアズ。
ステロな展開ですが、みんなの熱演に持っていかれます。
カーマン七風くんの、電報のことを告げる前の「どうしよう悩んでます」的な細かい芝居。ソビエトに帰ると言ってきかないチェリンカに、最後の手段として「うちとの契約もあるんだぞ」と言う、本当は契約のことなんかより彼を止めたいだけなのがはっきり見えるハートフルな演技。
いきなり現れて「馬鹿野郎!」とチェリンカを殴り飛ばすアズ。正直殴り方はいまいちな気もしなくもないけど、全力投球の熱演にOK。
そして何より、チェリンカ=れおんの慟哭。わがままだし馬鹿だし今更帰っても何にもならないのに、でも、そうするしかできない男なのが伝わってわかるから、見ている方も本気ではらはらする。

チェリンカのアメリカデビューをソビエトから見に来たのは、アズともう一人。チェリンカの息子、ノノーシャの忘れ形見、ミクロフ=天寿光希。
物語的にはせいぜい5歳くらいのはずだがこの子どう見ても10歳は越えてるだろ、というツッコミは、息子を抱きしめるチェリンカの熱演の前に封印しました(って、書いてるじゃん)。
アズに、得意のバレエを父さんに見せてやれ、と言われて、おぼつかないステップで踊りだすミクロフ。その振り付けは『ドン・キホーテ』。バランスを崩して転ぶミクロフを思わず抱きしめるチェリンカ。
チェリンカが踊って見せて、それを真似るミクロフ。やがて二人ともに踊り、遠くで見守るノノーシャ。
ステロだけど、本当にありきたりだけど、いい場面だった。

第11場 血潮
バウのフィナーレでよくあるように、次々と登場人物が出てきて挨拶。
最後にシナリオライターによる「ダンサーとは」という語り。蛇足だとは思いますが「舞台が生きているからです!」と力説するあかしの熱演が見られるので良しとする(笑)。いやもうちょっと抑えてもいいような気はするんだけど、でもいい、全力で力説している感じが青春ぽくていい!(青春?)(まあYoungBloodsだし)。

良かったです。
一時間だから浅かったり書き込み不足でストーリーを追うだけで終った感もありますが、でもふつーの公演でした。ステロな分キャラが立っているのでやりやすい部分もあるでしょうね(そして見ているほうも脳内補完しやすい)。
そして書き込み不足の部分は出演者、特にれおんくんが熱演で埋めてました。全部は埋まりきりませんが、まあそれなりに。スカスカの作品を力技でいいもの見た気にさせる、のがタカラヅカスターの資質であるならば、それが出来る人になりつつあるのかなと。
彼は、スターでした。

プログラムで演出・構成の藤井君が「陽の柚希にあえて翳りのある男の芝居を」と言っていますが、私にとっては柚希礼音は翳を持ったキャラなので、その点は全然意外で無かったです。むしろ個性に合ってたんじゃないかと。「翳」の部分をクローズアップして「陽」一辺倒だと思っていた人に新たな魅力として認識してもらえれば、それは成功だったんじゃないかと。
しかし「かげ」が影でも陰でもなく「翳」なあたり、気が合いますな藤井君(笑)。

「翳」ともうひとつ、柚希礼音の男役としての資質について改めて思ったのが、彼はやっぱり「恋愛よりも大切なものがある」男が似合うのかなあと。
妻も子も愛している。それは本当。でもそれよりも己の魂の飢え、血潮のたぎりを止められない。
基本的に少年の部分を持ったままの男。少年の部分と言うのは、何だかわからない欠落感やここではないどこかへの憧れに突き動かされている、そんな感じの意味合い。
成人した男、妻子持ちに見えるかと言えば、ちゃんと見えます。大人だけれど、少年の孤独や欠落感を抱えたままの男。その「愛よりも大事なものがある」孤独感は翳りにつながり、女はそこに惹かれる、と言うような。
それが彼固有の個性なのか、それともまだ若さゆえでこれから変わるのか、それはまだわからないけれども。
と言うようなことを『ベルばら』で書いたような気がしますが、やっぱり個性なのかも、と言う方に考えが傾きつつあります。うわなんかわかりやすく格好いい男だな。欠落と表裏一体の憧れを抱えた孤独な不良少年の魂。うまく伝われば人気出そうなキャラ。そして私のストライクゾーンからは微妙に外れる(笑)。

何故だか書き直す前より長くなってるんですが。
第2幕は次回(って、いつ?)。

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