オリジナルミュージカル・コメディー『OH ダディー!』観て参りました。一応初日初回。
作・作詞・演出・福田陽一郎。昨年の作品の再演だそうですが、初演は見ておらず。

雄一は26歳フリーター。母は彼が子供のときに亡くなり、父も彼が18歳のときに一人で旅に出てしまい年に1度のクリスマスカードを寄越すだけ。ところが今年のクリスマス、その父が亡くなったと知らせが届いた。遺言は航空券と彼が訪ねるべき見知らぬ人のリスト。

楽しかったです。
亡き父と関わりのあった人々を訪ねるうち、知らなかった父の姿や自分とのつながりを知り、自分自身を見つめなおすロードムービー風の物語。他愛無く笑えて楽しい、そして心温まるコメディ。

主人公・雄一は川平慈英。フリーターというのは昨年見た『最悪な人生のためのガイドブック』と同じだけれど、あっちがそれでもいいじゃん、という態度なのに対し、こちらの雄一はそんな生き方をしている自分を肯定できない。
正直、最初は雄一に感情移入できませんでした。だって彼は18歳で父に捨てられたことに対して26になるまでわだかまりを引きずってるんですよ。そして父の残した言葉「やりたいことをやりなさい」に反して自分が何をやりたいかわからずフリーター暮らしをしている自分に不満を持っている。18にもなれば、「お前はもう大人だから好きにしていい」と親が出て行ったらかえって嬉しいんじゃないのか?と、首をひねりつつ見てました。それに、川平慈英に無気力なフリーターと言うのもちょっとキャラ違いな気が。

でも、彼が遺言に従って旅を始め、物語が動き出してからはそんな違和感は忘れてしまいました。
次々に出会う登場人物が皆個性的で楽しい。カリカチュアされた典型的お約束なキャラクタばかりなので演者の力に負うところが大きいのだけれど、皆芸達者で生き生きしている。
高嶺ふぶきの弁護士はいかにもニューヨークのキャリアウーマン風ハイテンション。花山佳子は人生経験豊かなビッグママ。佐藤輝と平澤智のマフィア親子もいかにもなルックスいかにもな芝居。マフィア父がオペラ好きと言うことで、最後の登場時の白いハンカチににやりとさせられたり。娯楽に乏しい何もない田舎町の警官・藤浦功一とバス停で日がな一日暇つぶしをしている男達・平澤智と佐藤輝のやりとりもお約束なんだけれど可笑しい。(旅先で出会う人々は殆どひとり2役)
そして、最後に出会う若い娘・ビアンカは堀内敬子。田舎町のマドンナ、素朴で可愛らしい女の子。いやもうどうして堀内敬子はいつもこんなに可愛いんでしょうねえ(笑)。ちょっと古臭い、でも古き良きといった感じのワンピースが似合うこと。
個性的な人々との出会いを、雄一の目線で楽しみました。いや雄一を演じる川平氏本人も持ちネタ(?)「いいんです!」やってたけど(笑)。

そして様々な出会いの後に父へのわだかまりを乗り越え、いつしか気がつくと前向きに自分を肯定して生きて行こうと思っている雄一。いやそんな真面目なだけの話じゃなくて、コメディなんだけれど(笑)。
終演後の客席はみんな何となく笑顔で、暖かい空気が流れていて心も軽くて。うん、楽しかった。いい舞台でした。
あ、「家族」というテーマに肯定的な思い入れのある人なら、もっと感動したかも。私は冒頭で雄一の父への態度に感情移入できなかったことからわかるようにそのあたりへの興味が薄いので。

ミュージカルと言うことで歌もダンスもふんだんに盛り込まれています。盛り込まれすぎてその分ストーリーが薄くなったのかも、と思うほど(失礼)。でもこういう難しいことを考えず素直に楽しめるオリジナルミュージカルがあってもいいと思うので、これはこれで好きです。
歌はどれもいい曲で耳に心地よかったです。高嶺ふぶき演じる弁護士キャサリンの「Lawyer’s Song」が面白かったなあ。最初は振り回されっぱなしだった雄一が旅から帰ってのリプライズではしっかり言い返すのが上手い使い方だと思ったし。主題歌CD「予期せぬ出会い」「いつもON YOUR SIDE」はうっかり買ってしまいました。川平慈英と堀内敬子のデュエット曲。爽やかな感じでなかなか良かった。
ダンスでは、クラブで高嶺ふぶき(ここではマフィアの情婦ミランダ役)が平澤智、藤浦功一と踊る場面が格好よかった! セクシーかつシャープな場面。ここもストーリーのバランス的に長いかなと思わなくもありませんが、格好いいからいいや(笑)。見て得した感のある場面。

と言う訳で、とても楽しんだ1時間45分でした。
が、ひとつ気になったのはチケット料金。
長ければいいというものではないけれど、S席7,800円A席6,500円と言うのは、2時間に満たない1幕ものの料金としては若干高いような気がします。気軽に誰にでも楽しめる内容なので、値段ももう少し敷居が低いといいかなと思いました。まあ色々そうもいかんのでしょうが。(ちなみに私はオクで安くゲットしたのでそういう意味では不満はないのですが←をい)

またキャストを変えたり、そのキャストに合わせて細部を変えたりしながら再演を繰り返してくれたら面白いだろうな、また見に行きたいな、と思っています。

***

しかし、去年から見ている数少ない舞台で、宝塚男役出身者の役がハイテンションなキャリアウーマンばかりなのは何故だろう(笑い)。『最悪な人生のためのガイドブック』伊織直加、『風を結んで』絵麻緒ゆう、そして今回の高嶺ふぶき。やはりそういうキャラがイメージしやすいのか。(あ、さえちゃんは違ったけど)

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