残される人。(星組全国ツアー『ベルサイユのばら』)
2005年9月29日 宝塚ここに至って思ってしまったこと。
この人は、また取り残されるんだなあ。
手の届かないところへ行ってしまう、美しい女性に。
そしてその人は実は最初から現し世の人ではなかったのかもしれないと思えとしまうところも、また、で。
となみアントワネットの、時に、何を映しているかわからない無表情を見せる大きな瞳も、朗詠調の台詞回しすらも、現実を隔てる壁のようにすら見えてしまったので。
いや元々「長安のラストがベルばらフェルゼンとアントワネット編みたいー」と思っていたせいでもあるんですが(笑)。
ついでにフェルゼンについてもうちょい。ひとつだけ愚痴。
私がフェルゼンを見ていて一番げんなりするのは、メルシー伯のお説教に逆ギレする姿ではなく、実はその後のオスカルとのシーンです。
そりゃ、義のため国のため王妃の名誉ために別れてくれと言うメルシー伯に「あなたは身勝手で卑怯だ!」と切り返した時はさすがに顎が外れますよ。
でも、そういう人ならそれはそれでありだ。「国よりも責任よりも目の前にいる彼女の涙をぬぐうことが大切」って男は、私的にはありです。
仕事では無能で平日に「いい天気だからディズニーランドでも行こうよ」と恋人を誘っちゃうような男でも、彼女には最高の恋人であればそれは主人公としてありでしょう。(ありなのか?そもそもその例えは適切なのか?)『グイン・サーガ』ではマリウスが好きでした、と言った方が伝わるかな(可哀想な一人の少年を殺さなければ国が救われないならそんな国は滅びてしまえ、と言った人。)
でもさ。
その場合その男には「国よりも名誉よりも人の心が大事」ということを終始一貫体現して欲しいわけですよ。感情を抑えて社会を円滑に回すことは出来なくても、ナイーヴでセンシティヴで、人の心の柔らかい部分を大切にできる人間であってこそ成り立つわけですよ。
ところが全ツベルばらのフェルゼン君は、そっちも裏切ってくれちゃうのよ。
オスカルが密かに自分に思いを寄せていると知ったときのデリカシーの無さは目眩もの。いままで気づかなくてごめんねー、先に会っていたのが君だったらなあ、でも僕は君も知ってるあの彼女一筋だからさー、君のことはいい友達だと思ってるんだよ、別れても僕のことは忘れないでねー。
てなことを、相手が口をはさむ間もなくべらべら喋りまくるのはどうなのよ。
私がオスカルだったら、ここで百年の恋も冷めます。
別に、デリカシーの無い男でもいいんです。ニブい体育会系男とか、仕事はできるが恋はからっきし、と言うのは、魅力あるキャラクターとして存在しえます。
でも、常識も無く無能なモラトリアム君で、更にデリカシーが無い馬鹿ってのは、ナシだろう。例え容姿が素晴らしくても、ヒーローとしてそれは許されないだろう(勘違いキャラとしてはあり)。
と言う訳で、オスカルとのやりとりは、追い討ちをかけられるという意味で一番耐えがたいのでした。
あ、オスカルの死を知っての「可哀想に、どんなに苦しんだことだろう。あの若さで」も論外。
これ「あの若さで」が無ければ、市民側に立って戦う道を選ぶに至る苦しみを慮っているように聞えなくもないんだが。「あの若さで」が台無しにしてます。つーか君ら同い年だし。
他の出演者の話行きます。順不同。
ジェローデル(麻尋しゅん)。妙に少年ぽくてかわいくて、生徒会長のオスカル(3年生)に憧れる副会長(2年生)。という雰囲気。それがジェローデルかと言われると違いますが、全ツ版ベルばらにおいて、このオスカルの副隊長としてはありだと思います。プロバンス伯等と話す場面、しゅんくんも一言ごとに反応する細かい演技してます。かわいいです。
まだまだ小公子が似合うお年頃だもんね。
ルイ16世(大真みらん)。見る度イッちゃってるぶりに磨きがかかる恐ろしい男(笑)。ルイ16世としての出番は1場面数分で、正直みらんくんの無駄遣いなのですが、その出番で王政末期の狂気と腐敗を体現したのは流石としか。
ベルナール(綺華れい)、ロザリー(琴まりえ)。この二人も全ツ版だと、ただの「典獄とその妻」だなあ。コトコトいい演技してました。可愛らしく健気でグッジョブ。
みらゆかはアルバイトの方が美味しいかも。ゆかり君のバラの少年はマッシュルーム鬘で微笑まれても妙に恐いというか禍々しさがありましたが、仮面舞踏会とスウェーデン兵士は格好いい。スウェーデン兵、他に役のついている彼らは台詞は喋ってないんですが、ダンス(いかにも宮廷舞踊風の音楽が好き)になると前方センターに出てきて眼に嬉しい。そして何気にみらゆか+一輝慎くんの場面があって、しかも一輝くんが一番アピールしてて驚く(笑)。みらんくんは真顔。
ついでにしぃちゃんもすずみんも、モブで宮廷服姿の方が格好いいような気がするのは私だけでしょうか(何てことを)。特にしぃちゃん、衣装も派手だしすげー目立つんですけど(笑)。スウェーデンではももかさんと組んでめちゃ派手なカップルです。と言うかももかさんのリアクションが派手です。愛を貫くと言うフェルゼンに感激していちいち反応する様子が激しすぎ(ほめてます)。中日王家の伝令の死に嘆き悲しむももかさんを思い出しました。実はこの場面芝居の内容に耐えられずにももかさんピン撮りしている私はわたるファン失格でしょうか。いや役者が悪いわけじゃ無いんだ、無いんだが…。
さて話題騒然の新曲、フェルゼン派とオスカル派に分かれて「大変ざます」と歌い踊る貴婦人達。初見は失笑しましたが今となっては作品屈指の楽しいシーンです(それもどうかと)。従来のオヤジギャグと金切り声の芝居よりずっと楽しい。当然大劇でも入るんですよね、パワーアップして。「○○、○○、わたくしの○○ー!」はどこかの会が楽の出とかでやってくれないかなと思います。あ、貴婦人達に取り巻かれて困惑する涼オスカルも見たかったけど。
濃くてくどい星娘達に一人混じって奮闘の美城れんくん、全然負けてない、と言うかなじんでてすごい(笑)。そうか、男役を入れたのは低音がほしかったのね。ドレスさばきも初日はさすがにちょっと下手かなと思いましたが、段々差がなくなってきました。もっともそれは周りの娘役達がやりすぎて動きが激しくなってはしたなくなってきたせいもあるかも(ほめてますってば)。
スウェーデン組。謎の下僕デュガゾン(青空弥ひろ)の特に何もしてないのにうさんくさい佇まいがすごく面白い。ヨルゲンの前では忠実な手下になっちゃうのも面白い。ヨルゲン陸軍大臣の祐穂さとるも手堅く安心して見られるなあと。ここやってることが馬鹿馬鹿しいので馬鹿っぽく見えちゃうのが気の毒ですが。
柚美さんはフェルゼンの姉(お姉様でなく姉上と呼んでほしい)よりも、モブの貴婦人姿が美しくて良かったです。黒髪でドレス着てきりっとしていると、エリザベートの肖像画に似てるよね。
英真組長もスウェーデン国王よりも、仮面舞踏会の貴族が面白かった。センターに反応する芝居が濃いよなー。
ふありの女官長は出番は少ないけどお固そうででも可愛くて素敵でした。あとコトコトも可愛かったなあ。
毬乃ゆいちゃん、仮面舞踏会では歌手として素晴らしい歌を聞かせてくれました。男役4人に囲まれて歌う姿は堂々たる歌姫。
……何だ結構楽しんでるんじゃないか(いつものこと)。
この人は、また取り残されるんだなあ。
手の届かないところへ行ってしまう、美しい女性に。
そしてその人は実は最初から現し世の人ではなかったのかもしれないと思えとしまうところも、また、で。
となみアントワネットの、時に、何を映しているかわからない無表情を見せる大きな瞳も、朗詠調の台詞回しすらも、現実を隔てる壁のようにすら見えてしまったので。
いや元々「長安のラストがベルばらフェルゼンとアントワネット編みたいー」と思っていたせいでもあるんですが(笑)。
ついでにフェルゼンについてもうちょい。ひとつだけ愚痴。
私がフェルゼンを見ていて一番げんなりするのは、メルシー伯のお説教に逆ギレする姿ではなく、実はその後のオスカルとのシーンです。
そりゃ、義のため国のため王妃の名誉ために別れてくれと言うメルシー伯に「あなたは身勝手で卑怯だ!」と切り返した時はさすがに顎が外れますよ。
でも、そういう人ならそれはそれでありだ。「国よりも責任よりも目の前にいる彼女の涙をぬぐうことが大切」って男は、私的にはありです。
仕事では無能で平日に「いい天気だからディズニーランドでも行こうよ」と恋人を誘っちゃうような男でも、彼女には最高の恋人であればそれは主人公としてありでしょう。(ありなのか?そもそもその例えは適切なのか?)『グイン・サーガ』ではマリウスが好きでした、と言った方が伝わるかな(可哀想な一人の少年を殺さなければ国が救われないならそんな国は滅びてしまえ、と言った人。)
でもさ。
その場合その男には「国よりも名誉よりも人の心が大事」ということを終始一貫体現して欲しいわけですよ。感情を抑えて社会を円滑に回すことは出来なくても、ナイーヴでセンシティヴで、人の心の柔らかい部分を大切にできる人間であってこそ成り立つわけですよ。
ところが全ツベルばらのフェルゼン君は、そっちも裏切ってくれちゃうのよ。
オスカルが密かに自分に思いを寄せていると知ったときのデリカシーの無さは目眩もの。いままで気づかなくてごめんねー、先に会っていたのが君だったらなあ、でも僕は君も知ってるあの彼女一筋だからさー、君のことはいい友達だと思ってるんだよ、別れても僕のことは忘れないでねー。
てなことを、相手が口をはさむ間もなくべらべら喋りまくるのはどうなのよ。
私がオスカルだったら、ここで百年の恋も冷めます。
別に、デリカシーの無い男でもいいんです。ニブい体育会系男とか、仕事はできるが恋はからっきし、と言うのは、魅力あるキャラクターとして存在しえます。
でも、常識も無く無能なモラトリアム君で、更にデリカシーが無い馬鹿ってのは、ナシだろう。例え容姿が素晴らしくても、ヒーローとしてそれは許されないだろう(勘違いキャラとしてはあり)。
と言う訳で、オスカルとのやりとりは、追い討ちをかけられるという意味で一番耐えがたいのでした。
あ、オスカルの死を知っての「可哀想に、どんなに苦しんだことだろう。あの若さで」も論外。
これ「あの若さで」が無ければ、市民側に立って戦う道を選ぶに至る苦しみを慮っているように聞えなくもないんだが。「あの若さで」が台無しにしてます。つーか君ら同い年だし。
他の出演者の話行きます。順不同。
ジェローデル(麻尋しゅん)。妙に少年ぽくてかわいくて、生徒会長のオスカル(3年生)に憧れる副会長(2年生)。という雰囲気。それがジェローデルかと言われると違いますが、全ツ版ベルばらにおいて、このオスカルの副隊長としてはありだと思います。プロバンス伯等と話す場面、しゅんくんも一言ごとに反応する細かい演技してます。かわいいです。
まだまだ小公子が似合うお年頃だもんね。
ルイ16世(大真みらん)。見る度イッちゃってるぶりに磨きがかかる恐ろしい男(笑)。ルイ16世としての出番は1場面数分で、正直みらんくんの無駄遣いなのですが、その出番で王政末期の狂気と腐敗を体現したのは流石としか。
ベルナール(綺華れい)、ロザリー(琴まりえ)。この二人も全ツ版だと、ただの「典獄とその妻」だなあ。コトコトいい演技してました。可愛らしく健気でグッジョブ。
みらゆかはアルバイトの方が美味しいかも。ゆかり君のバラの少年はマッシュルーム鬘で微笑まれても妙に恐いというか禍々しさがありましたが、仮面舞踏会とスウェーデン兵士は格好いい。スウェーデン兵、他に役のついている彼らは台詞は喋ってないんですが、ダンス(いかにも宮廷舞踊風の音楽が好き)になると前方センターに出てきて眼に嬉しい。そして何気にみらゆか+一輝慎くんの場面があって、しかも一輝くんが一番アピールしてて驚く(笑)。みらんくんは真顔。
ついでにしぃちゃんもすずみんも、モブで宮廷服姿の方が格好いいような気がするのは私だけでしょうか(何てことを)。特にしぃちゃん、衣装も派手だしすげー目立つんですけど(笑)。スウェーデンではももかさんと組んでめちゃ派手なカップルです。と言うかももかさんのリアクションが派手です。愛を貫くと言うフェルゼンに感激していちいち反応する様子が激しすぎ(ほめてます)。中日王家の伝令の死に嘆き悲しむももかさんを思い出しました。実はこの場面芝居の内容に耐えられずにももかさんピン撮りしている私はわたるファン失格でしょうか。いや役者が悪いわけじゃ無いんだ、無いんだが…。
さて話題騒然の新曲、フェルゼン派とオスカル派に分かれて「大変ざます」と歌い踊る貴婦人達。初見は失笑しましたが今となっては作品屈指の楽しいシーンです(それもどうかと)。従来のオヤジギャグと金切り声の芝居よりずっと楽しい。当然大劇でも入るんですよね、パワーアップして。「○○、○○、わたくしの○○ー!」はどこかの会が楽の出とかでやってくれないかなと思います。あ、貴婦人達に取り巻かれて困惑する涼オスカルも見たかったけど。
濃くてくどい星娘達に一人混じって奮闘の美城れんくん、全然負けてない、と言うかなじんでてすごい(笑)。そうか、男役を入れたのは低音がほしかったのね。ドレスさばきも初日はさすがにちょっと下手かなと思いましたが、段々差がなくなってきました。もっともそれは周りの娘役達がやりすぎて動きが激しくなってはしたなくなってきたせいもあるかも(ほめてますってば)。
スウェーデン組。謎の下僕デュガゾン(青空弥ひろ)の特に何もしてないのにうさんくさい佇まいがすごく面白い。ヨルゲンの前では忠実な手下になっちゃうのも面白い。ヨルゲン陸軍大臣の祐穂さとるも手堅く安心して見られるなあと。ここやってることが馬鹿馬鹿しいので馬鹿っぽく見えちゃうのが気の毒ですが。
柚美さんはフェルゼンの姉(お姉様でなく姉上と呼んでほしい)よりも、モブの貴婦人姿が美しくて良かったです。黒髪でドレス着てきりっとしていると、エリザベートの肖像画に似てるよね。
英真組長もスウェーデン国王よりも、仮面舞踏会の貴族が面白かった。センターに反応する芝居が濃いよなー。
ふありの女官長は出番は少ないけどお固そうででも可愛くて素敵でした。あとコトコトも可愛かったなあ。
毬乃ゆいちゃん、仮面舞踏会では歌手として素晴らしい歌を聞かせてくれました。男役4人に囲まれて歌う姿は堂々たる歌姫。
……何だ結構楽しんでるんじゃないか(いつものこと)。
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