藤原の『アドリアーナ・ルクヴルール』観て参りました。

ロビーに入って、まず、ショックなことが。
主役の二人、ダニエラ・デッシーとブァビオ・アルミリアートが身内の不幸のため休演、代役と発表されておりました。
木曜発売のぴあには既に出ていてので、ちょっと前にはわかっていたようですが。でもプログラムは間に合わなくて挟み込みになっていました。

ファビオには去年の2月にボローニャでも振られてるんだよなー。やはりデッシーと共演のはずだったアンドレア・シェニエ、目の前で病気休演の紙が貼られた……。
縁が無いのかなー、好きなんだけどなー(泣)。
(ちなみにその旅ではトリエステでも中島康晴が休演と、テノールには振られっぱなしでした。とほほ)

ちなみに変更後のキャストはヴェロニカ・ヴィッラロエルとマルチェッロ・ジョルダー二。代役でこのクラスを呼べるのが藤原の偉いところだと常々思っております。

さて、気を取り直して『アドリアーナ・ルクヴルール』。
きらきらした甘い、甘ったるい音楽とベタベタなストーリー展開の怒涛のメロドラマ(褒めてます)。
大好きなオペラです。

幕が開いて、かなりクラシカルな装置と衣装に少々驚く。藤原は比較的正統派の演出が多いけれど、今回は特に、と思ったら、1966年ローマ歌劇場の歴史的演出なのだそうな。アドリアーナというオペラには合っていると思う。セットや衣装、小道具も本物らしい重厚感に溢れていて、すごく素敵。
演出はマウロ・ボロニーニ。
指揮は菊池彦典、オーケストラは東京交響楽団。

以下、役ごとに。

アドリアーナ=ヴェロニカ・ヴィッラロエル
やっぱりデッシーを期待した分ちょっと……。
1幕の登場のアリアが、いまひとつ安定感や表現力、つまりは魅力に欠けた気がします。4幕のアリアもいまいち。
でも、朗誦やドラマ部分は良かった。特に2幕のブイヨン公妃との激しいやりとりと、3幕の朗誦! 朗誦の後の「復讐してやったわ!」も迫力。
あと言ってはなんですが、ちょっと顔も恐いかも、ヴィッラロエル(失礼な!)

マウリッツィオ=マルチェッロ・ジョルダー二
いかにもイタリアンテノール。カーンと高音を出したときの突き抜け方はやっぱり気持ちいいなあと。粗もありそうなんだが張り上げたときの勢いと輝かしさで、ま、いいかという気分に。その辺マウリッツィオという役にも合っている気がする(笑)。
思えば、このオペラを初めて見たのはボローニャ歌劇場の来日公演。アドリアーナ=フレーニとブイヨン公妃=コッソットの迫力対決に頭がぐらんぐらんして、マウリッツィオの印象が殆どありませんでした。
が、今回。
マウリッツィオって、とんでもねー奴だな(呆笑)。格好のよさと甘い言葉だけが取得の、調子のいいのーてんきな男。でもどこか憎めない。
それはやはり、ジョルダーニの持ち味なのではないかと。
……もしかしたらボローニャのときはドヴォルスキーだったので、もうちょっと誠実そうに見えたのかもしれない。

あ、ラテン系二人のラヴシーンはやたらと濃かったです。日本人ではこうはならないだろう(笑)。

ブイヨン公妃=エレーナ・カッシアン
多分この人を聞くのは初めて……と思ったがスカラ座来日公演のリゴレットでマッダレーナをやっているそうなので、初めてではないかもしれない。
まだ若そう。でも迫力。2幕登場のアリアもがーっと勢いでドラマチックに歌いきる。もうちょっと声が太くなるともっと貫禄や幅が出てくるかも。

ミショネ=堀内康雄
最初に見て、随分年寄り臭いミショネだなあと。これも、初めて見たボローニャのアンジェリスがナイスミドルだったから思ってしまうことかも。三つ子の魂百まで。
しかし、その野暮ったさがしみじみと切なかったです。叶わぬ恋を断念して、父親のような愛でアドリアーナの側にいるのが沁みました。
歌も幕開きはちょっとかき消されぎみてもどかしく感じたけれど、ここぞというところは外さず、深い声で聞かせてくれました。今まで割と堀内康雄の声や歌い方は苦手だったのだけれど、二枚目よりこういう役の方がはまるのかも。

ブイヨン公爵=久保田真澄、シャズイユ修道院長=持木弘
二人でごちゃごちゃ芝居して、いい味出してました。
ブイヨン公は尊大かつ俗物な感じが良く出ていたなあと。
修道院長もあっちにへつらいこっちにおべっかぶりが面白かった。持木さん、すっかりこういう路線になっちゃったのかなあ(去年のイル・カンピエッロといい)。もう二枚目はやらないのかしら。

今回、友人が急に行けなくなり、ドリーさんにお付き合いいただきました。
オペラは初めてに近いということでしたが、楽しんでいただけたようで何より。特に火花散る女同士の争いや怒濤のストーリーにはウケてくれました。ラストの展開は「こだまっちか齋藤か!(どちらも宝塚が誇るトンデモ劇作家)」とお褒めいただきました(いや褒めてないから)。うん、確かに、これで死ぬのか!?ってのは、わかる。
まあ私は多少のトンデモ展開は、特に古典劇の場合は「あー、現代人には思いつかないなー、すげー」と素直に楽しむことにしているので。このオペラの場合、2幕3幕の恋敵同士の対立と緊迫感溢れる探りあいから一気呵成のカタストロフィの盛り上がりが快感なので、好きです。あとやっぱり音楽の力かな。あの繊細な甘さは癖になる。

終演後に「面白かった、オペラって難しくないんだ」と言われて、改めて「オペラは難しい」というイメージがあるんだなあと気づきました。そうそう、殆どが色恋の話なんだしさ。
と言う訳で、キムシンだけでなく他の演出家諸氏も、ラヴストーリーのネタとしてオペラを使ってくれてもいいのにな、と思ったりしました。
(つーか、ワタ檀瞳子で『仮面舞踏会』が見たかった。叶わぬ夢だったけど)

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