子供のような人が好き。(月組『Ernest in Love』梅田芸術劇場)
2005年7月18日 宝塚梅芸行ってまいりました。
実は2回目。前回はもずえさんパクちゃんと、もずえさん1階パクちゃん2階私3階という妙な取り合わせで。梅芸の3階は3,000円ならコストパフォーマンスはいいと思いますが、1列目は手摺が視界の邪魔かも。
本日は1階後方席。幕間にハイディさんご夫妻とお会いしました。
さて、『Ernest in Love』。瀬奈じゅん・彩乃かなみお披露目公演。
初めて「私アサコちゃんのこと好きかも」と思いました。
いや、今までは「こういう人がもてるんだろうなー」とか傍観者してたんですが。今回は向こうから私のストライクゾーンに歩み寄ってかすってくれた感じで。
だって、瀬奈じゅん演じるアーネストと来たら。
馬鹿で、陽気で、憎めない。
健全で、善良で、どっちかというとヘタレ? でも格好いい。
そして根は真面目で、ひそかにピュア。
そう思うと、フィナーレで「瀬奈じゅん」として踊る姿も好ましく見えてきたりしました。ははは(←単純)。
お話は基本的に、他愛ないコメディ。
お約束満載。偽名に人違いにすれ違い、出生の秘密で混乱混乱また混乱のドタバタ喜劇。
主な登場人物は4人。アーネスト(瀬奈じゅん)とグウェンドレン(彩乃かなみ)、アルジャノン(霧矢大夢)とセシリィ(城咲あい)の二組のカップル。それとグウェンドレンの母でアルジャノンの伯母であるブラックネル夫人(出雲綾)。
男たちは馬鹿で策に溺れて空回って女たちを怒らせ、しゅんとして謝って許してもらったり。
そして最後はハッピーエンド。頭からっぽで楽しめる楽しいミュージカル。
なのだけれど。
それを越えて胸に響く一瞬がある。
アーネストは貴族の育ちだが拾われ子であり出自がわからないため、愛するグウェンドレンとの結婚を彼女の母・ブラックネル夫人に許してもらえない。
そんな彼が「貴族として暮らしてきた自分はしきたりの大切さは知っています。でも今はそれを離れて、ひとりの男の子のことを考えてください」と訴える。
ひとりの男の子。拾われ子でひとりぼっちだった彼・アーネスト自身のこと。暖かい家族が欲しかった、と言う願い。真実の響き。
一人歌うアーネストにそっと歩み寄るグウェンドレン。そして唱和する。
「子供のような人が好き」
何度も繰り返されたフレーズ。子供っぽい不器用なプロポーズが好き、子供のような情熱を持った人が好き、というようなニュアンスでコメディタッチに歌われていた言葉が、別の意味を持つ。慈母の眼差しでアーネストを包み込む。
コメディとしても十分楽しい。
けれど、それまでのお約束コメディを越えて真実の欠片を見せるこの場面が、好きだ。
そして、ああ、いいカップルだなあと思うのさ。
アーネストとグウェンドレンも。それを演じているアサコ氏とかなみちゃんも。
アーネスト=瀬奈氏の、それまでの振り回されラブコメヒーロー姿にプラスして、この場面で見せる寂しさと不器用さと善良さに胸を打たれたように。
グウェンドレン=かなみちゃんの乙女のキュートさとお姉さまの迫力を併せ持ったパワフルな美女ぶりにプラスして、ここで見せる慈愛の聖母が美しいと思う。
よかったなあ、お似合いで。
更に、まだ渋るブラックネル夫人に「言うべき事は言ったよ」とアルジャノンとセシリィの幸せのため二人の結婚を許すあたりのいい奴っぷりが駄目押しでした。
アルジャノン=きりやんはアーネストの悪友。類友だけど彼の方が一枚上手のお調子者。初登場はぼさぼさ頭のパジャマ姿だわ、舞台上で物食ってばっかりだわ、ラブラブデュエットに茶々入れるわ。
主役のアーネストが真っ当に主役なのに対し、いいコントラストです。上手いから見ていて安心。
セシリィ=あいちゃんは……。
電波系、だよな、この子。本当にセシリィでいいのかアルジャノン(笑)。
まだ18歳の美少女。突拍子もないです。
あいちゃん、こんな役もできるんだ。『シニョール・ドンファン』の政治家の妻(役名失念)とか『エリザベート』のマデレーネのイメージが強かったので、びっくりした。ハイパー夢見る少女を生き生きと楽しそうに演じてます。かわいい。グウェンドレンとのやりとりのどっちも退かないパワフルさはすごい。
とにかく主役4人がみんな役に合っていて、拮抗する存在感で楽しい。
出雲さんも言うまでもない上手さだし。
あと、特筆すべきは越リュウ氏。
2幕で神父役で出てくるんですが、このうさんくさい格好よさは何なんだ(笑)。瀧川末子嬢演じるミス・プリズムに迫られて気があるんだかないんだかよくわからないのらくらさがたまりません。
そしてフィナーレもすごいぞ。群舞の中階段上から現れてスポットライトで末子さんとデュエットダンスですよ。豪快なリフトは必見。いやいいもん見た。
更に皆で踊っていても一味違う。何と言うか、長い脚をもてあまし気味に、でも格好いい。素敵です。
ミュージカルナンバーはどれも耳に心地よく憶えやすい素直なメロディ。物語の単純さと相まって、古典的なミュージカルという感じ。古典というには新しいのかな。でもこういうのをウェルメイドというのかと思いました。
セットは秀逸。少しの工夫で風景が変わり、すごくお洒落できれいで可愛い。
あ、ハンドバッグには笑いました。メイド軍団も迫力だ。
海外ミュージカルを宝塚でやりました、という感じの舞台で、あまり「宝塚らしく」はなかったかな。役が少ないので大劇場ではできないだろうし。梅芸と日生向けの演目としては良いのかと思います。何よりよくできていてストレスなく見られる。
こんな楽しい作品でお披露目でよかったなあ。
出演者のコンビネーションもいいし、月組のこれからが楽しみです。
実は2回目。前回はもずえさんパクちゃんと、もずえさん1階パクちゃん2階私3階という妙な取り合わせで。梅芸の3階は3,000円ならコストパフォーマンスはいいと思いますが、1列目は手摺が視界の邪魔かも。
本日は1階後方席。幕間にハイディさんご夫妻とお会いしました。
さて、『Ernest in Love』。瀬奈じゅん・彩乃かなみお披露目公演。
初めて「私アサコちゃんのこと好きかも」と思いました。
いや、今までは「こういう人がもてるんだろうなー」とか傍観者してたんですが。今回は向こうから私のストライクゾーンに歩み寄ってかすってくれた感じで。
だって、瀬奈じゅん演じるアーネストと来たら。
馬鹿で、陽気で、憎めない。
健全で、善良で、どっちかというとヘタレ? でも格好いい。
そして根は真面目で、ひそかにピュア。
そう思うと、フィナーレで「瀬奈じゅん」として踊る姿も好ましく見えてきたりしました。ははは(←単純)。
お話は基本的に、他愛ないコメディ。
お約束満載。偽名に人違いにすれ違い、出生の秘密で混乱混乱また混乱のドタバタ喜劇。
主な登場人物は4人。アーネスト(瀬奈じゅん)とグウェンドレン(彩乃かなみ)、アルジャノン(霧矢大夢)とセシリィ(城咲あい)の二組のカップル。それとグウェンドレンの母でアルジャノンの伯母であるブラックネル夫人(出雲綾)。
男たちは馬鹿で策に溺れて空回って女たちを怒らせ、しゅんとして謝って許してもらったり。
そして最後はハッピーエンド。頭からっぽで楽しめる楽しいミュージカル。
なのだけれど。
それを越えて胸に響く一瞬がある。
アーネストは貴族の育ちだが拾われ子であり出自がわからないため、愛するグウェンドレンとの結婚を彼女の母・ブラックネル夫人に許してもらえない。
そんな彼が「貴族として暮らしてきた自分はしきたりの大切さは知っています。でも今はそれを離れて、ひとりの男の子のことを考えてください」と訴える。
ひとりの男の子。拾われ子でひとりぼっちだった彼・アーネスト自身のこと。暖かい家族が欲しかった、と言う願い。真実の響き。
一人歌うアーネストにそっと歩み寄るグウェンドレン。そして唱和する。
「子供のような人が好き」
何度も繰り返されたフレーズ。子供っぽい不器用なプロポーズが好き、子供のような情熱を持った人が好き、というようなニュアンスでコメディタッチに歌われていた言葉が、別の意味を持つ。慈母の眼差しでアーネストを包み込む。
コメディとしても十分楽しい。
けれど、それまでのお約束コメディを越えて真実の欠片を見せるこの場面が、好きだ。
そして、ああ、いいカップルだなあと思うのさ。
アーネストとグウェンドレンも。それを演じているアサコ氏とかなみちゃんも。
アーネスト=瀬奈氏の、それまでの振り回されラブコメヒーロー姿にプラスして、この場面で見せる寂しさと不器用さと善良さに胸を打たれたように。
グウェンドレン=かなみちゃんの乙女のキュートさとお姉さまの迫力を併せ持ったパワフルな美女ぶりにプラスして、ここで見せる慈愛の聖母が美しいと思う。
よかったなあ、お似合いで。
更に、まだ渋るブラックネル夫人に「言うべき事は言ったよ」とアルジャノンとセシリィの幸せのため二人の結婚を許すあたりのいい奴っぷりが駄目押しでした。
アルジャノン=きりやんはアーネストの悪友。類友だけど彼の方が一枚上手のお調子者。初登場はぼさぼさ頭のパジャマ姿だわ、舞台上で物食ってばっかりだわ、ラブラブデュエットに茶々入れるわ。
主役のアーネストが真っ当に主役なのに対し、いいコントラストです。上手いから見ていて安心。
セシリィ=あいちゃんは……。
電波系、だよな、この子。本当にセシリィでいいのかアルジャノン(笑)。
まだ18歳の美少女。突拍子もないです。
あいちゃん、こんな役もできるんだ。『シニョール・ドンファン』の政治家の妻(役名失念)とか『エリザベート』のマデレーネのイメージが強かったので、びっくりした。ハイパー夢見る少女を生き生きと楽しそうに演じてます。かわいい。グウェンドレンとのやりとりのどっちも退かないパワフルさはすごい。
とにかく主役4人がみんな役に合っていて、拮抗する存在感で楽しい。
出雲さんも言うまでもない上手さだし。
あと、特筆すべきは越リュウ氏。
2幕で神父役で出てくるんですが、このうさんくさい格好よさは何なんだ(笑)。瀧川末子嬢演じるミス・プリズムに迫られて気があるんだかないんだかよくわからないのらくらさがたまりません。
そしてフィナーレもすごいぞ。群舞の中階段上から現れてスポットライトで末子さんとデュエットダンスですよ。豪快なリフトは必見。いやいいもん見た。
更に皆で踊っていても一味違う。何と言うか、長い脚をもてあまし気味に、でも格好いい。素敵です。
ミュージカルナンバーはどれも耳に心地よく憶えやすい素直なメロディ。物語の単純さと相まって、古典的なミュージカルという感じ。古典というには新しいのかな。でもこういうのをウェルメイドというのかと思いました。
セットは秀逸。少しの工夫で風景が変わり、すごくお洒落できれいで可愛い。
あ、ハンドバッグには笑いました。メイド軍団も迫力だ。
海外ミュージカルを宝塚でやりました、という感じの舞台で、あまり「宝塚らしく」はなかったかな。役が少ないので大劇場ではできないだろうし。梅芸と日生向けの演目としては良いのかと思います。何よりよくできていてストレスなく見られる。
こんな楽しい作品でお披露目でよかったなあ。
出演者のコンビネーションもいいし、月組のこれからが楽しみです。
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