午前公演を観に行ったのに、何故か1幕終了後には午後のチケットも手の中に。
気がついたら幕間にチケット買ってたんですねー。雨降ってたのにわざわざ傘さして(笑)。午前は上手前方、午後はセンター後方と、違った角度で見るのも面白かったです。全体が見えると隅の小芝居にも気づく。

チケットを追加した理由は、多分わかっている。
アラン=悠未ひろの、あの顔を見てしまったから。
恋に落ちる瞬間の表情。

店で一人徹夜したセシルを気遣うアラン。
セシルはそんなアランに、父・ミシェル・シャンティのことを尋ねる。
店を愛し客を幸せにするために尽くした、素晴らしい料理人だったと語るアラン。
だが、セシルにとっては、家庭を顧みない父だった。
「彼が愛したのは、自分の料理とこの店だけ」
そして7歳で両親が離婚した後、彼女は孤独な少女時代を過ごす。
夢見たものは暖かい食卓。家族で食べる幸せなブレックファースト。
けれど、そんなものは手に入れられなかった。

慟哭するセシルのソロ。
そして、そのセシルを見つめるアラン。

アランの表情が変わっていく。
その目にはセシルしか映っていない。
冷血を装い強気で武装した、鎧の下の傷ついた心を知って、急速に彼女への思いが募るのがわかる。
この、目の前で傷つき苦しんでいる孤独なひとを、幸せにしたい。
その思いが燃え上がっていく。
それは、恋に落ちた瞬間。

恋に落ちる瞬間。
そして私は、その情熱に魅入られたんだ。

悠未アランは「大人の男」じゃないよね。まだ若いと言うか青いところがある感じ。いい兄貴分で、店の皆にも信頼されているけれど、結構感情を露にしたり、悩んだりする。
セシル相手にも、最初はムッとしたりムキになったりしている。遼河アランが、最初からセシルの心を見抜いているかのように、優しく大人な態度をとるのとは、ちょっと違う。
でも、だからこそ、セシルの孤独を理解し恋に落ちる瞬間が際立つ。
「セシルを幸せにするディナー」の発想が生まれたのは、この時なんだろう。

対するセシル=和音美桜。
最初、大人っぽく感じたのは、喋り声のせいかな。低め?
前半日程の美羽セシルより、普通に「キャリア女性」っぽく感じた。
アランも「大人の男」でないので、より二人の関係が対等に近く見える。(前半はアランが大人の余裕で傷を抱えたセシルの心を溶かしていく、ように見えた)

和音セシルは、美羽セシルと比べて、心の揺れを表すのが早かったような気がする。
1幕ラストの契約決定の時点で、既にすごく葛藤しているんだよね。悩んでいるのが見える。前半日程は、ここではまだ表面は冷たく取り繕っていて、対決ムードだったような気がするんだが。1回しか見てないし私の理解ではあるけれど。

そんなセシルが、アランへの好意と共感を表現するのは、アランの過去を訊いたとき。
妻が死んだのは自分のせいだと言うアランに「あなたのせいじゃない!」と。相手の心の傷への、共感といたわり。
それは、1幕でアランがセシルに対して見せたものと同じ。

今回は、前半日程でぐわんとやられた「手首にキス」の破壊力はそれほどではありませんでした。悠未アランにはいまいち似合わないのか?
それよりもときめいたのはラストの「おでことおでこをこっつんこして笑いあう二人」。
素敵。ほっこりして微笑ましくて、でもロマンチック。
アランという役は誰がやっても格好いい役だと思いますが、でも個性は出るんだなあと。
そして私は悠未アランの方が好みです(笑)。純粋に格好いいのは遼河アランだろうし、お洒落度が高いのは前半日程の方だろうけど、遼河アランは大人で出来すぎて非の打ち所がなくて個人的にはあまり惹かれなかったもんで。

いや、ビジュアルとか芸風から、こっちの方が好みだろうことは予想の範疇だったんだが。予想通り過ぎて我ながら苦笑。
ともちん、格好いいよねー。くしゃっとした笑顔が素敵。「笑顔が素敵」は私的にかなり高ポイントなので、かえってちょっと狼狽しました(笑)。
美形とは思わないが(多分私は「顔がアレなんて点数厳しすぎ」と言ったんじゃないかと。>緑野さんに私信。まあどうでもいいことだ)、完璧な美形より愛嬌あるハンサムの方が好みだし。
そしてあの大きな身体で踊られると、すげー素敵です。うっとりです。ロワゾー夫妻夫婦喧嘩のストップモーションもあの体格と長い手足でやられると、妙におかしくて、でも格好よかった。
あと朝食の場面でオレンジを放り投げる仕草が格好よくて、これまたときめきました。男の子っぽい仕草が似合う。

エリーヌ=咲花杏ちゃん。
かわいい。前半のアリスちゃんがはまりすぎだったのでどうかなと思ったけど、杏ちゃんもすごくかわいい。いい子だ。
知らなかったけど、歌上手いんだ。鳥籠を抱いて、自分も籠の鳥と歌う悲しみと寂しさに、胸を打たれる。
セシルの孤独と慟哭のソロはアランが受け止めたけれど、エリーヌの叫びを受け止める人はいないんだと思うと、見ていて辛い。
勿論彼女は、自分の力で立ち直って、皆の前に現れるのだけれど。
誰か受け止めてくれる人と出会って、幸せになってほしいなあ、と思う。

ルイス=夏大海が地味になっていて、ちょっと戸惑いました。
いや、うさんくさいよ。十分うさんくさくてそれはいいんだけど、うさんくさい「色男」には見えない。ちょっと貧相?(失礼) だから余計セシルがアランにさっさと惹かれてもわかる気が(やっぱり失礼)。

サチ=綾花ちかもキャラ変わってました。
かわいい。小柄でさらさら黒髪、かわいい日本人の女の子だ。前半の鮎瀬サチはたくましい姉御肌で、静(王様のレストラン)を髣髴とさせるくらいだったのに。パトリックとの関係も姉さん女房に見えないよ(笑)。あんまりかわいいのでパトリックだけでなくジャンともいい感じに見えた。ディナー成功で大喜びの場面、大きい二人に挟まれてつぶされてるのがかわいい。
表情とか、ちょっとあすかちゃん似に見えました。ロビーで男性客が「とにかくサチが可愛い!」と言っていたのが印象的(笑)。

もうひとり、アリシア=妃宮さくら。
眼鏡っ子で来たか!
ルイスに眼鏡を取り上げられてオロオロするあたり、ベタだけどやってくれます(笑)。

ロワゾー夫妻=風莉じん&白河るり。前半に引き続き絶好調(笑)。小芝居は後半日程の方が派手になる法則(勝手に命名)に則り、子役と若夫婦は派手になっております。老ロワゾー氏も相変わらず泣かせる。

その他の男性陣、ジャン=十輝いりす、クロード=麻音颯斗、パトリック=凪七瑠海、ポール=七海ひろき、は、大体前半踏襲? と言うか、被るキャラをキャスティングしたのかなあ。宙下級生は詳しくないのでわからないけれど。
その中でも、ジャンは派手になってました。特にお笑い系で。あの身長と長い手足で絶望にしゃがみ込んだりしていると、それだけで可笑しい。
クロードについ目が行ってしまうのは、私の好きなキャラってことだな(笑)。真面目でいい人。そして私服のセンスはダサい(ボーダーTシャツにいつもの髪型が似合わない・笑)。アリシアをルイスから庇うところがコミカルになっていて、ファイティングポーズをとるも相手がやるか?と腕まくりするとアリシアの手を取ってそそくさと逃げるのもらしくて良い。

どちらにしろ、いい話でした。
すがすがしく泣けました。
自分の仕事に誠実に生きていこう、と背中を叩かれる作品でした。

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