ギュンターという男(『マラケシュ・紅の墓標』)
2005年4月18日 宝塚類友なせいか、私の周囲の人間は割とこの作品に好意的なのですが。
その人たちが揃ってツッコミを入れるのが、ギュンターのこと。
「薔薇ストーカー?」「イッちゃってる変態?」と(笑)マークつきで。
確かに何だか浮いてると言うかよくわからないと言うか、ヘンだよな。
さて『マラケシュ・紅の墓標』には、この世ならざる存在が出てくる。
その最たるものが「蛇」=鈴懸三由岐。
この作品の核であろう「蛇」についてはあまり語る気がしないのですが。
理由は手に負えないという気持ちと語る必要はないという気持ちが半分半分で。でも少しだけ書くと。
人々には見えない存在。
人々とは別次元の存在。
彼女(女性の姿をしているので便宜上「彼女」と呼ぶ)が現れるのは。
運命が動くところ、生と死の狭間。
砂漠に翻弄され砂漠にさすらう測量隊。
一世一代の賭けを決意したレオン。
薔薇を巡ってもみ合うイヴェットとギュンター、そして手首にナイフを当てるイヴェット。
争い殺し合うリュドヴィークとギュンター。
そこに彼女は現れ、寄り添い、ただ見ている。
その蛇が、一人ホテルで佇むだけのリュドヴィークの傍らにうずくまっているということは、彼の運命はむべなるかなというものですが。
この世のものであるけれどどこか異界を見ている存在が、ベドウィン。イズメル=愛音羽麗とアマン=桜一花。
リュドヴィークの詐欺の元手である石の花を提供する、と言う、現世的な存在なのだけれど。予言めいた言葉を口にし、幽明境に現れて歌い、舞う。
この物語において砂漠は異界であるようなので、砂漠に生きる彼らもまた異界を知る存在なのかもしれない。
(話はそれますが、アマン=一花ちゃんすげー可愛いです。「気にしない」とかの台詞の言い方や、そこはかとなくリュドヴィークに心惹かれている風情とか)
この世ならざるもの、異界を見るもの。
もしかしたら、ギュンターもこの系譜に連なる人物であるはずだったのではないかと、思っているのですが。
最初、彼は意味ありげに現れる。
黒い服に民族衣装を思わせるストール。暗く無表情な立ち姿。
「この街では、誰もが不幸になる」と予言めいた言葉を残す。
その後も、節目節目にすっと現れてはすっと消える。
ギュンターが何者か明かされるのは、回想のパリ。
ここで彼は美術品鑑定家として現れ、金の薔薇に魅せられる。
人類の至宝と称える。イヴェットのパトロンが彼女に送ろうと言うと「冒涜だ!」と尋常ならぬ様子で非難する。
しかし薔薇はイヴェットの手に。
イヴェットと薔薇を巡って男たちは争い、血が流され、愛する男を失って彼女は一人絶望に沈む。
床に倒れ伏すイヴェット。床に転がる薔薇。
ギュンターは薔薇に手を伸ばし、しかし止まる。イヴェットが薔薇を手に取るに任せる。
薔薇と、イヴェットを見る彼の目には狂気が宿っている。
あれ?
あれれれ?
ギュンターは、物語の中の存在?
ただの人?
マラケシュの陰の象徴でも、現世と異界を行き来する者でも、この世ならざるものが見える者でもない?
ギュンターはずっと、金の薔薇を追って、それを持つイヴェットを追っていた、らしい。
彼はイヴェットを追い詰める。
薔薇を汚した報いを受けるがいい、お前の血で償うがいい。苦しんであがいて見せろ。
私の目に見えたままを言うと。
ギュンターは金の薔薇ではなく、イヴェットに魅せられたんだと思う。
元々尋常でない様子の人物だったけれど、明らかにその表情に狂気が宿るのは、イヴェットがパトロンを殺してからだ。
リュドヴィークを助けようとパトロンを撃ち殺し、その罪を被ってリュドヴィークは去り、絶望に崩れる彼女を見てからだ。
イヴェットを見下ろすギュンターの目には狂気が宿り、哄笑をあげんばかりの顔をしている。
この瞬間、彼の執着は、薔薇そのものからイヴェットに移ったのだと思う。
薔薇から、薔薇を巡る人間の愚かしさ、悲劇と絶望、そして慟哭するイヴェットの凄絶な美しさに。
本来、彼にとって、イヴェットは価値ある存在ではなかった。
彼女に金の薔薇を送ろうとする男にそれは冒涜だと言い、もっと高貴な、物の価値のわかった人物が持つべきだと主張する(とは言え該当する誰かがいる訳ではなく、理想像を描いているだけのように見えるのですが)。
取るに足らない女。
それなのに、魅入られてしまった。
だから、その執着心は一層歪んだ形をとる。
彼は、執着する者。
だから、彼は現世の存在であり、ただ人なのだ。
イヴェットが自らの手首を切るのを見て、彼の狂気は度を増す。
薔薇を残したまま立ち去り、次にリュドヴィークの前に現れたときは完全に正気でない。
執着の対象、イヴェットを失って。
もしくは、イヴェットが目の前で自殺したことで望みが成就して。
彼は完全に壊れたのだ。
と、言うのが、私が見たギュンターなのですが。
……それでいいんだろうか。
物語のパーツとしては、おかしいような気がするぞ。
最初の出方がああなら、最後まで超越した者であるべきなんじゃないだろうか。
でも新公のギュンター=望月理世くんは最初からイッちゃったストーカー風味だったしな。やはりそれが正しいのか?
ええ。
私はこの物語には好意的だし、わからないということもないのですが、ギュンターと言うキャラクターについては位置付けがどうにも消化できないのですよ。
というか、どっか失敗してるんじゃないかなあと……いやその。
勿論、らんとむくんは熱演している。頑張っていると思う。
でも何というか。
結局どういうキャラなんですか? ギュンターって。
(いや、もしかしたら私が勝手に前半を誤読して自爆しているだけなのかもしれませんが。はははー(乾笑))
と言う訳で、今回も何故わかりにくいシリーズPart3でした(シリーズなのか・笑)。
その人たちが揃ってツッコミを入れるのが、ギュンターのこと。
「薔薇ストーカー?」「イッちゃってる変態?」と(笑)マークつきで。
確かに何だか浮いてると言うかよくわからないと言うか、ヘンだよな。
さて『マラケシュ・紅の墓標』には、この世ならざる存在が出てくる。
その最たるものが「蛇」=鈴懸三由岐。
この作品の核であろう「蛇」についてはあまり語る気がしないのですが。
理由は手に負えないという気持ちと語る必要はないという気持ちが半分半分で。でも少しだけ書くと。
人々には見えない存在。
人々とは別次元の存在。
彼女(女性の姿をしているので便宜上「彼女」と呼ぶ)が現れるのは。
運命が動くところ、生と死の狭間。
砂漠に翻弄され砂漠にさすらう測量隊。
一世一代の賭けを決意したレオン。
薔薇を巡ってもみ合うイヴェットとギュンター、そして手首にナイフを当てるイヴェット。
争い殺し合うリュドヴィークとギュンター。
そこに彼女は現れ、寄り添い、ただ見ている。
その蛇が、一人ホテルで佇むだけのリュドヴィークの傍らにうずくまっているということは、彼の運命はむべなるかなというものですが。
この世のものであるけれどどこか異界を見ている存在が、ベドウィン。イズメル=愛音羽麗とアマン=桜一花。
リュドヴィークの詐欺の元手である石の花を提供する、と言う、現世的な存在なのだけれど。予言めいた言葉を口にし、幽明境に現れて歌い、舞う。
この物語において砂漠は異界であるようなので、砂漠に生きる彼らもまた異界を知る存在なのかもしれない。
(話はそれますが、アマン=一花ちゃんすげー可愛いです。「気にしない」とかの台詞の言い方や、そこはかとなくリュドヴィークに心惹かれている風情とか)
この世ならざるもの、異界を見るもの。
もしかしたら、ギュンターもこの系譜に連なる人物であるはずだったのではないかと、思っているのですが。
最初、彼は意味ありげに現れる。
黒い服に民族衣装を思わせるストール。暗く無表情な立ち姿。
「この街では、誰もが不幸になる」と予言めいた言葉を残す。
その後も、節目節目にすっと現れてはすっと消える。
ギュンターが何者か明かされるのは、回想のパリ。
ここで彼は美術品鑑定家として現れ、金の薔薇に魅せられる。
人類の至宝と称える。イヴェットのパトロンが彼女に送ろうと言うと「冒涜だ!」と尋常ならぬ様子で非難する。
しかし薔薇はイヴェットの手に。
イヴェットと薔薇を巡って男たちは争い、血が流され、愛する男を失って彼女は一人絶望に沈む。
床に倒れ伏すイヴェット。床に転がる薔薇。
ギュンターは薔薇に手を伸ばし、しかし止まる。イヴェットが薔薇を手に取るに任せる。
薔薇と、イヴェットを見る彼の目には狂気が宿っている。
あれ?
あれれれ?
ギュンターは、物語の中の存在?
ただの人?
マラケシュの陰の象徴でも、現世と異界を行き来する者でも、この世ならざるものが見える者でもない?
ギュンターはずっと、金の薔薇を追って、それを持つイヴェットを追っていた、らしい。
彼はイヴェットを追い詰める。
薔薇を汚した報いを受けるがいい、お前の血で償うがいい。苦しんであがいて見せろ。
私の目に見えたままを言うと。
ギュンターは金の薔薇ではなく、イヴェットに魅せられたんだと思う。
元々尋常でない様子の人物だったけれど、明らかにその表情に狂気が宿るのは、イヴェットがパトロンを殺してからだ。
リュドヴィークを助けようとパトロンを撃ち殺し、その罪を被ってリュドヴィークは去り、絶望に崩れる彼女を見てからだ。
イヴェットを見下ろすギュンターの目には狂気が宿り、哄笑をあげんばかりの顔をしている。
この瞬間、彼の執着は、薔薇そのものからイヴェットに移ったのだと思う。
薔薇から、薔薇を巡る人間の愚かしさ、悲劇と絶望、そして慟哭するイヴェットの凄絶な美しさに。
本来、彼にとって、イヴェットは価値ある存在ではなかった。
彼女に金の薔薇を送ろうとする男にそれは冒涜だと言い、もっと高貴な、物の価値のわかった人物が持つべきだと主張する(とは言え該当する誰かがいる訳ではなく、理想像を描いているだけのように見えるのですが)。
取るに足らない女。
それなのに、魅入られてしまった。
だから、その執着心は一層歪んだ形をとる。
彼は、執着する者。
だから、彼は現世の存在であり、ただ人なのだ。
イヴェットが自らの手首を切るのを見て、彼の狂気は度を増す。
薔薇を残したまま立ち去り、次にリュドヴィークの前に現れたときは完全に正気でない。
執着の対象、イヴェットを失って。
もしくは、イヴェットが目の前で自殺したことで望みが成就して。
彼は完全に壊れたのだ。
と、言うのが、私が見たギュンターなのですが。
……それでいいんだろうか。
物語のパーツとしては、おかしいような気がするぞ。
最初の出方がああなら、最後まで超越した者であるべきなんじゃないだろうか。
でも新公のギュンター=望月理世くんは最初からイッちゃったストーカー風味だったしな。やはりそれが正しいのか?
ええ。
私はこの物語には好意的だし、わからないということもないのですが、ギュンターと言うキャラクターについては位置付けがどうにも消化できないのですよ。
というか、どっか失敗してるんじゃないかなあと……いやその。
勿論、らんとむくんは熱演している。頑張っていると思う。
でも何というか。
結局どういうキャラなんですか? ギュンターって。
(いや、もしかしたら私が勝手に前半を誤読して自爆しているだけなのかもしれませんが。はははー(乾笑))
と言う訳で、今回も何故わかりにくいシリーズPart3でした(シリーズなのか・笑)。
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