貧ちゃんが主役!?という驚きが、今回の新公を見ようと思った動機のひとつでした。

今回の主役は朝夏まなとくん。『くらわんか』の貧ちゃん役で初めて認識。
それが主役? この子ってそういうポジションだったの?という驚き。貧ちゃんは二番手格の役だけれど、5パターン役替わりだったし、それまで全然知らなかったし、何たって研4の若手さんだ。

さて、そのまなとくん演じるリュドヴィーク。

台詞回しは本役さんのコピー。ほぼ完璧で驚いた。
歌は破綻なく端正。ちょっと声量が足りない気もするけど、そのくらいは普通でしょう。
スタイル良し。スーツ姿もちゃんと「男役」。

だけど。
オペラグラスで覗くと、童顔で。
すげーギャップがありました(笑)。若いんだなあ。

演出は本公演と同じオギー。基本的にみな本公演と同じ。気づいたのは、クロック長官=紫峰七海くんが笑いを取っていたことくらいかな。

本公演と同じことをやっているのに、違う。
リュドヴィークにべったりと張り付いている厭世感が、ない。
あれはやっぱり本役さんの個性だったんだなと。

と言う訳で、厭世的なオーラを身にまとっていないリュドヴィークの物語は淡々と進み。
パリの回想シーンに入っても、本公演より田舎出の若者らしくてモップが似合うなあ、とか微笑ましく見てたんですが。

が。
イヴェットとのデュエット。金の薔薇を手に「これがおくりもの」と手を取り合い向かい合って歌う二人。
性急に求め合うような歌唱に、急激に上がる温度。
何だこれは。
熱が見えた。白熱する炎が見えた。

まなとくんのリュドヴィークは若くて、本当に若くて。
だから、イヴェットとの恋と別れは、素直に青春の挫折に映る。
そして、同じように挫折して過去に囚われてうずくまったままのオリガと惹かれあうのも、わかる。
二人でパリからやり直せるかもしれない、と切ない希望を持つのもわかる。

オリガは桜乃彩音ちゃん。
彼女も若くて、本当に若くて。まだほんの少女で。
だから、初めての恋の挫折、初めて自分の意思で行動したことが過ちだったことで、深く傷ついたのも当然で。
(もっともそう見えるのはアレクサンドル=悠南はやきくんが本役さんほどうさんくさくないおかげもあるかもしれませんが)

オリガと旅立とうとしていたリュドヴィークは、イヴェットもまた傷つき苛まれていたことを知る。
自分ひとりが罪を背負えばいいと思っていたのに、悲劇に酔っていただけで実は誰も救えなかったことに気づく。
ここの歌詞も、若さゆえの過ち、という感じで、初めて心に響いた。

だから彼はオリガとは行けない。
でも、もしギュンターとの争いで死ななかったならば。
彼はいつか戻ってきて、やり直すことは出来たかもしれないのに。
未来は断ち切られてしまった。

そんな風に思わせられる、リュドヴィークでした。
新人公演についてだけ言えば、リュドヴィークは死んだと確信しています。
だって、このリュドヴィークなら、生きていれば戻るでしょう。
オリガとやり直せる、かどうかはわからないけれど、それでもマラケシュに、現世に戻ってくるでしょう。

やっていることは本役さんのコピーなのにね。
やはり役者の違いだなあ。そして何より、若いんだなあ。

レオンは、華形ひかるくん。
噂は聞いてたけど、ちゃんと見たのは初めて。
歌下手だって聞いてたけどそんなでもないじゃん、と言ったら「大分上達した」と返事が返ってきました。びっくりしたと。
華があるしかわいいとこもあって、陽気だけれど渇望や哀しみを張り付かせているレオン、はまってました。やっぱり若いんでよりチンピラっぽく見えるんだけど、そのせいでより切なかったな。

イヴェット=華城季帆ちゃんは安定して上手かった。本役の迫力には足りなかったけど。つーか今から足りてたら恐ろしい。でも博多座ではそのままこの役が出来そうなくらいだった。

あと気になったのはコルベットやった嶺輝あやとくん。大きい人なのね、と言うのはおいといて、組長さんがやってるこの役を、ちゃんと「大人の男」として格好よくやってました。

終演後のご挨拶。
新人公演の長は桜一花ちゃんでした。蛇役なんだよね。蛇のメイクに衣装で一生懸命ご挨拶。か、かわいい。
いや、もっとしっかりした子イメージがあったんだけど、もちろんちゃんと喋ってるんだけど、でも「えっとえっと」って感じで、いっぱいいっぱいで、途中泣きそうになっちゃって、かわいかった。
主演のまなとくんも、いっぱいいっぱいで感極まっていて、途中何度か詰まってました。配役が発表されたときびっくりしたそうで、そりゃそうだよなあ。

そして今回の新人公演は、初舞台生も舞台に乗っていたんですね。
おかげて本公演とほぼ同じ人数。群集シーンも寂しくない。
と言うか、モブがやたらと熱いよ! 警察に追われる民衆のパニック振りが迫真の演技だよ!
本公演でお芝居に出ていない分、すごく楽しんで工夫してイキイキやっているのが見える。熱演。時々台詞がマイクに拾われちゃってるのもご愛嬌(笑)。

と言う訳で、とても楽しい新人公演でした。
堪能いたしました。

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