白状します。
実は私、今回の中堅若手バウの中で一番のはずれはこれだと予想していました。きっと可もなく不可もない平々凡々な作品になるんだろうと。
すみません。
予想以上のトンデモ作品でした。←失礼な!

壮くんかわいそう、と言ったら「笑えるからいいじゃないですか」と答えが。
いや、確かに笑えるけど! すげー面白いけど! 
でもこれコメディじゃないから!
一生懸命シリアスに演じている出演者に申し訳なくて必死に笑いをこらえていましたが、ごめん、我慢できなかったよ。

そう。
めちゃくちゃ笑えたし、面白かったです。
抱腹絶倒驚天動地唖然呆然七転八倒。主人公は人格崩壊、ストーリーはめちゃくちゃ、リアリティ皆無。終演後は友人知人一同嵐のようなツッコミ大会。

と言う訳で、その手の作品がお好きな方は是非どうぞ、と言ってしまえば終わりですが、無粋を承知でメモ。

ジェフリー(壮くん)はイギリス人、えーとこのぼんぼん。父(汝鳥さん)に反抗して士官学校に入った、らしい。仕事一筋商人な父は、母が死ぬときも傍にいてくれなかったと。マザコンの逆恨みっぽいけど、パパも身寄りのない美少女エレノア(リサちゃん)を引取って「妻が亡くなった後君の母上に恋をしたんだが、彼女も死んでしまったんだよ」みたいなこと言ってるんで、お互い様なのか。
そんな時、父が公金横領の罪で逮捕される。何故か今までのわだかまりを忘れたように父の味方になるジェフリー。
……あれれ?

でも「疑いはすぐ晴れるから」と言われて素直に士官学校に戻るジェフリー。ところが父は厳しい尋問の末に死んでしまった。父は無実だ、陥れた犯人は誰だ?そうだ、直前に書斎から出てきたクレイトン大尉(緒月くん)が怪しい。
と思ったところで出征命令。犯人探しはころっと忘れて「死なないで」「必ず生きて帰るよ」とエレノアとラブラブに別れを惜しむジェフリー。
……あれれ?
つーか抱き合っているし。
お前らいつの間にそういう関係になったんだーっ!?

戦場でジェフリーはエドウィン中尉(かなめくん)の小隊に配属。小隊と言ってもどう見ても二人+ウィリアム(谷みずせ氏)の3人だけ。いや、役者が3人だけなのは仕方ないけど、せめて「他の皆に知らせてくる」とか台詞でごまかせないかな?
このリアリティ皆無の戦場でエドウィンは斜に構え、イギリス軍と異教徒がどうのこうのと繰り返し強調するけれど、言葉だけなので薄っぺらいことこの上なし。
孤立した部隊を救うため決死の砂漠越えに挑むジェフリー。何故そんな危険なことを?と訊くエドウィンに「生きていても仕方のない人間だから」。
生きて帰ると誓った恋人はどうしたーっ!?

案の定砂漠で行き倒れるジェフリー。しかしエレノアの幻を見て立ち上がる。何だ憶えてたんじゃん。「幻の相手役と踊って立ち直る主人公」と言う中村暁作品のバターンは健在なようです。
どうやら間に合って部隊の危機に舞い戻るジェフリー。でも援軍は彼一人。せめて台詞でごまか(略)。

ある日、ジェフリーはクレイトン大尉と再会。「父の敵!」と目の色変えるジェフリー。
ちょっと待て。彼はただ単に「何か知ってそうな人物」ってだけじゃないのか?
とにかく、彼はクレイトンと話をする。が、から回る質問をはぐらかされて逆ギレ抜刀! 親切なエドウィンが慌てて止めると「やっと追い詰めたのに!」
全然追い詰めてねーよ! 思い込みで問い詰めただけだよ!

小隊には更に危険な任務が。敵の砦に潜入して消息を絶った味方スパイ・エリックと合流し、砦の火薬庫を爆破せよ。生還出来るかわからない任務だと言うのに、ジェフリーは嬉々として参加。おーい、敵討ちは?

……どうやら彼は一度にひとつのことしか考えられない男なようです。

そして、エドウィン中尉と二人きりの危険な任務の顛末は。
・どうやって忍び込む、と相談した次の瞬間には砦の中。
・扉を開けたら探していた味方スパイ発見。言いたい事だけ言ってスパイ死亡。
・行くぞ、ともう一度扉を開けたら敵兵が。殴られて縛られる二人(弱!)。
・あいつらは俺たちを殺す気だ、って、だったらさっき死んでるって!相手銃持ってたんだから。
・あっさり解ける縄。何故か鍵のかかっていない扉を開けると何故か見張りはいません。
・さあ火薬庫に放火だ。俺が囮になる、いや俺が、死ぬなよと盛り上がった次の瞬間には爆破成功。
……ドリフですか?

さあ脱出だチャンバラだ。そこに突然現れたクレイトン大尉! 援軍か、と思ったら敵兵の真ん中でいきなり斬り合うジェフリーとクレイトン!

すみません全面降伏です。もう笑いが堪えきれません。

仲間割れなんかしている間にエドウィン中尉戦死。彼が落としたペンダントを探していて遺言を聞き逃すジェフリー(間抜け)。

本国では戦死公報にジェフリーの名が。愕然とするエレノア。いきなり出てきてジェフリーを忘れろと言うお節介なおばさま。この期に及んで新キャラ?

勿論ジェフリーは生きている。戦地の病院でぼーっとして記憶喪失にでもなったか? と思ったらそうでもないらしい。
そして彼に思いを寄せる看護婦(大月さゆちゃん)が。この期に及んで新キャラ? エレノアはどうした?
と思ったら彼は彼女を何とも思っていないらしい。エレノアのことも忘れているようですが。どうやらひたすらエドウィン中尉を死なせたことを悔いている様子。
そこへ登場エドウィンの父(汝鳥さん2役)、彼を力づける。えーと、僕の父に似ている、とか、全然そういう設定じゃないんですね。別人として見ろと。そんなー、重要な役なんだからさー。

そこへ唐突に現れるクレイトン! いきなりジェフリーに襲い掛かる! そして苦しげに胸を押さえて倒れる!

すみません展開についていけません。

ジェフリーは「父の敵!」と剣を振り上げるが一人勝手に苦悩した挙句断念。そんな彼をきらきらした目で見守る看護婦さん(でも彼の目には入っていない)。
どうやらクレイトンも戦場での傷が悪化してもう長くない模様。彼は死に際にジェフリーに事件の黒幕を教え、証拠の品を託すのだった。
って、あんた本当に犯人の片棒を担いでたのか! 私はてっきりジェフリーの思い込みだと告白の瞬間まで思ってましたよ! だって今まで全然そんな説明なかったじゃん。

やっと国に帰ったジェフリー。父親の汚名を晴らし屋敷に戻ると、自分は戦死したことになっていて家は人手に渡りかけ…って、汚名を晴らしたのにジェフリーが生きてることを何故誰も知らない訳? これからならわかるけどさ。
ちょっとしたコント(要らんだろこれ)を経てエレノアとも再会してめでたしめでたし。

あ、中村暁作品の美点、フィナーレの格好よさは健在でした。最後出演者たちに迎えられ、電飾つきミニ階段を降りる様子は大劇場のミニチュア版という感で、壮くんよかったねーと。

でもね、フィナーレで帳消しに出来るほど、生易しい作品じゃなかったんだけどね、今回は。
終演後の第一声は「つ、疲れた」
ツッコミと爆笑をこらえるのに必死で疲労困憊。
おっかしいなあ。
中村暁氏の作風って「辻褄は合っているけど平板」「大きなアラはないけど粗雑」だと思っていたのに。
このトンデモぶりは一体どうしたことだろう。
『天の鼓』や『愛しき人よ』を髣髴とさせる迷作でしたよ。

コメント

お気に入り日記の更新

日記内を検索