あけましておめでとうございます。

新年最初に他所様の真似をしてやっている2004年宝塚総括みたいな話をしようと思ったのですが、断念しました。
だって、私のベスト大劇場芝居は『1914/愛』(次点『La Esperanza』)で、ベストショーは『ロマンチカ宝塚04−ドルチェ・ヴィータ!』(次点『タカラヅカ絢爛』)で、ベストバウは『花のいそぎ』(次点『NAKED CITY』)だもん。どこの星組大好きっ子だ(笑)。(でも楽以来ネット巡回していて「星組が大好きです」と書いてあるのを見るとつーんと来ます。私も大好きだ)
何気に次点が花組二つですな。特に花組ファンではないのだけれど。

と言う訳で『天の鼓』の話。ネタばれあり。

12/19と12/29千秋楽、合計2回見ました。
結論から言うと、この作品割と好きです。贔屓が出ていたら通うと思います。
初見より、どんな話かわかっている2回目の方が面白かったんで、回数見ればもっと面白くなったかも。で、穴だらけの話だから、あーだこーだ余白を埋めるために語りまくり書きまくってたかも。『長安』のように(笑)。(そして少なくとも長安よりははるかに面白い)

むかしむかしあるところに帝がおりました。管弦を好む雅な御方でしたが、冷たい心の持ち主でした。帝は国中から優れた楽器、優れた楽人を集めようとしましたが、ただひとつ「天の鼓」の持ち主・虹人だけが言うことをききません。怒った帝は諌める家臣の言葉も聞かず、虹人を殺して「天の鼓」を奪いました。ところが、帝がようやく手に入れた「天の鼓」を叩いても音が出ないのです。驚く帝の前に死んだ虹人が天の使いとして現れ、人を信じる心の大切さを教えました。改心した帝はその後よい支配者となり、虹人の息子に「天の鼓」を返すのでした。

って、話ですよね?(笑)

初見のときは舞台の美しさを愛でつつ、前半のまったり具合にやや眠くなり、終盤の怒濤の展開に腹の中で笑い転げ、ネタ公演の烙印を押していたのですが。それでも、きれいだし笑えたからもう1回見てもいいかなと思っていたんですが。
帝が主役で、寓話だと思えば全然OKかも。この話。

前半が何故まったりしているかと言うと、主人公二人に人格が無いから、ということが大きいかと。何考えてるかわからないので、ヒーローとヒロインに感情移入できない。
あと、捨て子捨て子って、うるさいよね。雪組大劇公演に続き、捨て子ってことにそんなにマイナスの意味を持たせたいかな、と不思議。

でも、主役二人以外は感情移入可能。虹人に思いを寄せる伊吹(あすかちゃん)も、虹人への友情と照葉への愛、それゆえに悩み迷う樹(まっつさん)も。

そして一番キャラが立っているのが、帝(ゆみこちゃん)。
冷酷な絶対君主、そして、変な人(笑)。
既に人外の存在、魔物の域じゃないかという絶対的な権力者なのに、やってることはお間抜け。鼓ひとつ手に入れるために何小細工を弄しまくってるんですか、と突っ込みどころ満載。
が、しかし。
その化物めいた傲慢さの奥に、孤独な少年王の魂が見え隠れするのは、ゆみこちゃんの特性なんだろうなあ。
そんな帝だから、博雅(そのか氏)が彼のために真剣に心を痛めるのもわかるし、改心してからの言動もわかる。

そんな話なら。
人の心を知らない帝が、ひとつの鼓をきっかけに心を取り戻すおとぎばなしなら、これはこれでありかと。他の人物の書き込みが浅くても薄くても、契機となる出来事が唐突でも、田舎の村に楽人しか住んでいなくても(笑)。
おとぎばなしなんだから。それこそ「むかしむかしあるところに」で始まるような。

いや、確かに虹人が鬼だか精霊だかになって登場する場面で笑いの発作が起こりそうになるんだけど。でも皆が帝を囲んで回るあたりの、帝の崩壊と再生の表情を見てると、何かもう素直によかったなあと言う気分にすらなりました。(要するにゆみこちゃんのこわれっぷりが見事だと)

とは言え。
これ、主人公は虹人(すみれ様)で、ヒロインは照葉(ふーちゃん)らしいんですけどね……。

ドラマのクライマックスで変化するのが帝なら、帝が主人公だろう。そりゃ、変化を引き起こしたのは虹人かもしれないけど、その時点で虹人は既に人外の存在だし。

虹人の物語なら。
人の愛を求めた寂しい少年が「鼓が上手くなれば愛してもらえる」と信じて鼓の名手に成長する。しかし、それでも愛されている実感が持てない。そもそも鼓の名手と誉めそやされることさえ、自分の力ではなく「天の鼓」のおかげかもしれない。
と、苦悩する青年の物語なら、その悩みを解決する場面が必要だと思うんですけど。
解決しないまま死んで、人外の者として出てきて、そのときには他人様に愛と信頼を説くって、不思議だ……。

あと「天の鼓」の存在。
あれは結局ただの鼓だったのか、特別な鼓(焼けた倉にあったはずの名器)だったのか。
ただの鼓なら、その事実が明らかになることで「これは天の鼓なんかじゃない! お前の演奏は全てお前の力だ!」とか樹が言えば虹人の悩みがひとつ解決するじゃないですか。
特別な鼓なら、その特別な楽器に愛された、又は呪われた天才・虹人の悲劇がわかりやすくなるし。
どっちにしても、そういうことをちゃんと舞台上で描いてくれないかなあ。

虹人、孤独に悩んでいるように見えないもんなあ。
誰も愛していないから誰に愛されなくても平気、に見えるのは、私の読解力不足なのかなあ。
少なくとも、樹に対しては冷たいよね。友人の許婚を奪った罪悪感なさそうだし。でも、孤独ゆえに全てを捨てて照葉を選んだというほどの熱情も感じられなかった。

そう。主人公たちが主人公らしく見えないもう一つの問題は、愛が見えないこと。
あくまでも私の感性です。「どこ見てたのラブラブだったじゃない」と言う方がいらっしゃったらすみません。
元々脚本に問題があるのは認めます。でも「音楽を通じて心が触れ合った孤独な二人が恋に落ちる」って物語は、それほど無茶な設定じゃないと思うけど。
それに、とにかく「愛し合っている演技」で観客を納得させてしまうのが、タカラヅカのトップコンビじゃないのかと。
特にラスト、帝と北斗(虹人と照葉の息子)をよりそって天上から見守る二人の姿の冷え冷えとした感じに愕然としました。あの世でやっと結ばれた二人なのに(ついでに楽なのに)。北斗を見る帝の目の方が愛があるって、どういうことだ。もしかしてそれが花組さんの売り……いやすいません何も言ってません(^^;

すみれさま、素敵だったんだけどな。好青年ぶりもよかったし、鼓を手に舞う姿も美しかったし、無駄に強い立ち回りもかっこよかったし(帝の刺客相手に素手で立ち向かってあんまり強かったんで、てっきり生きて再登場すると思ってました)。人外の姿も私は好きですよ(笑)。
ふーちゃん、きれいだったんだけどな。平安装束、赤い衣裳がとても似合っていて、美しいお姫様だったんだけど。

そのせいか。
カーテンコールが何度かあったんだけど、何だかえらく「愛が薄い」感じがした。
これは普通のDC公演だから、当然なのかもしれないけど。つい3日前まで星東宝に通い詰めてたからって比べてしまうのがいけないんだろうけど(愛が溢れまくってたからなー、舞台も客席も・笑)。

文字数が足りないので、もう少し次の欄に続く。

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