今回のチラシ、ショーの3パートを表しているんですね。
左上、夜の街に赤い衣装のコムちゃんがPart1。右上の雪景色に白い衣装のまーちゃんがPart2。で、その下の全景がPart3で。

と言う訳で、ショーの感想。

『歌劇』座談会によると本当に3人で相談していないらしい。だからこうなっちゃったのか、と納得。
完全に3本立てで、しかも3本ともしっかりこってり作りこんである。
テイストの類似もさることながら、その「3本とも独立した作品として作りこんである」と言うところが胃もたれの原因かも。緩急が無いと言うか、常にハイテンションで気を抜けないと言うか。
リピートすれば印象が違ってくるのかな。
逆説的に、1時間を1本もののショーとして過不足無く構成するって大変なことなんだろうなあ、と思い知らされたショーでした。

1本のショーとして見た場合疑問符がつくけれど、パーツパーツは面白いし、力作だと思う。

Part1「Rose〜真紅に染まる夢」藤井大介

極楽鳥二羽は、悪夢への導入役ですか? まあ私は1階後方端席でしたが、前方席で見たら……。(いや悪意は全然ないですから!)

オープニング。舞台の色調は赤。そして黒。
……耽美なはずなんだけど、説明調の歌詞が好みでなくて。花組でもそう思ったんで、これが藤井氏の個性なんだなと納得。

世界と同じ、深紅に黒が指し色の衣装。薔薇の美少年、コム氏が踊る。
そこに現れる美女。まーちゃん。

このまーちゃんに驚き。
ビアズリーの挿絵から抜け出してきたような白と黒の衣装。そして雰囲気。
妖艶。退廃。何かに餓えたようなでも倦んだような目つきの大人の女。
勝手に清純派のお嬢さんだと思っていたら、こんな役も出来るんだ。

その二人が絡む。(女が札片ばらまいたソファーの上で!)
女を扱うとき、コム氏が「美少年」でなく「野郎」めいて見えるのがまた、どきどきと言うかはらはらと言うか。
乱暴ではない、が、気の無い手荒な扱い。
それをどう受け取っているのか、冷めた瞳のままの美女。

そして現れる薔薇収集家の男@轟氏。
そうなると今度は、美女と美少年の関係は共犯者めいて。
魔性の美少年と、冷めた瞳の美女が、男を罠にかける。

コム氏と彼に堕ちた轟氏がせり下がっていって(多分。記憶が薄れている)、もうおなかいっぱいー、という感じでした(笑)。
私的に最大の見所はまーちゃんの美女だったけど。こんなに魅力的な人だったなんて。
いやびっくりした。良かった良かった。

Part2「白昼夢― IMITATION DREAM・栄華/幻―」齋藤吉正

一転して白い世界。
雪原の白狼だそうなんだけと、耳つけてロケットされちゃうと、狼って感じじゃないよなあ(苦笑)。いや可愛かったけど。

惑う白い恋人達(コムまー)が綺麗で綺麗で。引き裂こうとする轟氏(なのかな?)も含め美しいです。

そして舞台はいきなり白い大都会(新宿だそうだ)。
白基調なんだけど、警官、ナース、ホストとみんなコスプレめいてどこかキッチュ。その辺がIMITATION DREAMってこと? 楽しいシーンでしたわ。

そして、白チャイナとのお姉さまたちと轟氏のチャンバラ!
一瞬「キル・ビル?」とか思ったけど、何か、この人たちがやっているとネタと思い切れないのは私だけでしょうか。端正さがお笑いを阻む。何だかマジだ。
まーちゃんの白チャイナもうつくしーです。(チャンバラには参加してません)立ってるだけで芸術品。

その後、となみちゃんが轟氏を誘惑しようとして振られてかしげちゃんに洗脳されちゃう?ようなシーンがあったりして。

気が付いたら舞台の上、いきなり真っ黒!?
黒羽つけた黒ずくめの面々がずらっと。
ブラック戦隊。いやーかっこいー!!
いや、ここ一番無邪気に喜んだかもしれない。堕天使とか黒天使とか言うより、どこかキッチュで特撮的なんだよね(笑)。
桂ちゃんの表情がいいです。こういう小悪魔っぽいの似合うなー。
若手路線男役に一人混じっているとなみちゃんもいいわー。毒のある白痴美。似合うー。
(『歌劇』によるとこの黒い人たちはカラスらしいのですが)

その中でやはり惑う白い恋人達と、追う白狼・轟氏。
彼女は消え、気づくと残った二人は同じ姿で。鏡のように踊る二人。
と言うオチでした。

Part3「夢の城〜夢は消えるのではない、ただ人が忘れるだけ〜」三木章雄

最初の紗幕に息を飲む。
って言うか、これジョン・マーティンの『吟遊詩人』じゃん! 確か、王を呪って断崖から身を投げる老詩人の絵。
なんでこんなとこでお目にかかれるんだ。舞台全面の大迫力で!

幕が取り去られると、城の中央階段まわりはウィリアム・ブレイク調。チラシの背景はこれだったんだ。左手のステンドグラスも美しいなあ。ゴシックと言うより、古い時代を模したラファエロ前派な雰囲気だなあ。楽しいなあ。
……あ、今その前を通り過ぎたのはコムさん?
そ、そうだよ。私はヅカ見に来たんだよ。
それなのに何でオペラグラスでセットを凝視してますか!?

どうやら、私の中のスイッチが「ヅカ観劇」から「絵を見る」に切替ってしまったようです。
ほんとーに、舞台美術の印象が強くてショーの記憶が途切れ途切れ……とほほ。

その途切れがちな記憶で、一番印象に残っているのはかしげさんの王子かな。
パート1,2では、なまじ美形なもんだからかえって耽美系衣装や鬘が似合わないような気がして見てたんですが、このいかにもーな王子様は、文句のつけようが無く似合ってました。デコラティブな衣装に金髪で長く緩いウェーブの鬘が美しくて。
お供の黒ずくめの少年@桂ちゃんとの映りもうるわしくて良かったです。(ワイルドの『幸福な王子』王子と燕であるとの由)

あとは、花嫁人形@まーちゃんと彼女に惹かれてその鎖を外すコムちゃんのシーン。まーちゃんの美しい人形振りと、コムちゃんの「人形に惹かれる多感な青年」振りが。
あとハマコ氏の歌はもっと聞かせてください(笑)。東宝では長くなっているといいなあ。(いや東宝は行かないけど)

パレードの衣装、男役の黒青変形燕尾が素敵でした。娘役の同色ドレスも。
(でも、ちょっとパレードには渋すぎるかなという気もしたけど)

打合せしないで作った割には、三本ともキャラクター配置が同じなんですよね。
トップコンビ+轟氏の三角関係(頂点はコムちゃん)。かしげちゃんは語り手、導入役。
そして物語の色調は耽美。
まあ、この布陣で見たい、作りたいと思うものが誰が見ても同じ、ってことなのかもしれないけど。
ある意味実験作だったのではないかと思います。

と言いつつ個人的に今回一番のヒットはまーちゃんでした。あんなに黒から白まで出来る娘役さんだとは知らなかったよ。

            ***

芝居の話の補足。やっぱり私が考えすぎで心が狭いだけかもしれない。
ラスト近くの「産むだけなら豚でも」で笑いが起こっていました。
そこ笑うとこなら、笑えるなら別にこの芝居は何の問題も無いんだと思います。
ただ単に趣味が合わないだけなんだろうなぁ。
せっかくハマコ氏の嫌な奴→でもいい奴に芝居は良かったのに、残念だ(って言うかあんたの問題はそこかい)。

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