頭からっぽのままショーの感想。と言うか雑談。

その1・もう一人の主人公

フィナーレ。少女が両親の元に戻り、どこかで見たような人たちが行き過ぎる。
白いスーツの男が、豪奢なドレスの女を見つける。
男の帽子が落ちる。
白いワンピースの娘の声は男には届かない。さえぎっているのは悪魔? いや、悪魔がいてもいなくとも同じこと。男は見てしまったのだから。
やがて悪魔は手を差し伸べ、男は悪魔の手をとる。

最初に見たとき、汐美さんのソロの場面で頭がホワイトアウトするのは、サヨナラのせいだと思っていました。馬鹿だなあ自分。
違いました。
この場面が痛みに満ちていたから。景色も、旋律も、言葉も、声も。

ドルチェ・ヴィータの姿を追って、ディアボロに導かれ、わだつみに身を投じる男。
今まで綴られた物語と同じ。もう一人の主人公。
でも、違う。
この男は、ディアボロを視ている。自覚的にディアボロの手を取っている。
二度とは戻れない道と知りながら、その道を選び取る。
この世ならぬ異界への道。彼岸への道。

今までの物語の男は、最初から最後までディアボロを見なかった。
ただ、ディアボロの導く方向に誘われ、翻弄されるだけ。女たち−ディアボロの見せる幻、用意した供物を手にしようとあがくだけ。

もしかしたら。
新たな贄を得て、最初の男は要らなくなった、のだろうか。
ディアボロは彼を手放した?
気づかぬまま異界をさまよっていた男は、現し世に突然放逐された?
だから彼は、手の中にあったはずのぬくもりを失って呆然としなければならなかったのだろうか。
無理矢理引き剥がされても、記憶は残る。身も心も元のままではない。
幾夜もうなされ続ける。愛と言う名の終わりのない悪夢に。

かつて彼がそうさせた、少女のように。
それは罰?

でも、彼は自分が何故ディアボロのお眼鏡に適わなかったか、気づかないんだろうな。そもそもディアボロ自体、最後まで見えなかったんだし。
幾度繰り返しても、同じなんだろうな。
それは、彼が彼であるゆえの。

そして彼は、世界に拒絶され続ける。
彼は彼であり続ける。

って。
また世界に拒絶されるネタです。

パレード、ワタさんの階段降りだけ曲が「花市場」なんですよ。
それまでずっと「マスカレード」なのにね。

でも、いいんだな、それはそれで。
全てに対し太陽は輝くものだから。ひとりでも。
それが太陽。

          ***

その2・サテュロス観察日記

博多座から役替り(タニちゃん→まとぶん)のサテュロスS。
だいぶ印象が変わって、あれれ、てな感じだったのですが、現時点での私の解釈は「魔界の王女」です(魔法のプリンセスではありません)。
強大な魔の血脈を受け継ぐ正当な後継者。但し、まだ覚醒してはいない。覚醒した暁には、どれだけの力を持つかわからない怖ろしさを秘めた、未熟な魔女。
後ろの二人はお付きで、先輩魔女なのね。今はこの二人の方が力の使い方を知っている分力があると。
しかし、博多座のタニちゃんは完全にヒトじゃなくて魔物だと思ったんだけど、まとぶんサテュロスは魔女でもヒト(ついでに女性)認識してるんだな、私。
(それ以前に他の人はこんなこと考えないと思いますが)

ついでに、船上のセレブ男A涼さんがしれっとした顔で踊っているのを見ると、毎回「さっきはあんなだったのにー!」と心の中で突っ込んでしまう私(笑)。

          ***

その3・アドリブ集(自分用メモ)

・花市場の花一輪は、昼がハワイアン、午後が恋する乙女(ぶりっ子して花屋の店主に渡す)
・組長さん航海士のオヤジギャグは昼公演がゴルフ「朝なのにバンカー」午後が「不安になるとファンの皆様が頼り」一体いくつ仕込んでるんですか。
・船。セレブ男S、上着を預ける際に航海士と見つめ合った後、相手の耳元で何事か囁いております。航海士は引っ込み際頭掻いて照れてる風情です。昼も午後も似た感じですが、昼の方がわかりやすかったですかね。
 て言うか、ここ、もう一人の航海士はセレブ女Sにうっとりで二人とも心ここにあらずで水兵さんが「あのー、もしもし?」って感じで帽子とか受け取ってるんですが、ここまで段取られてるって既にアドリブの域を超えてるような気が。
 ついでにセレブ男S、後で少女にも目を留めて奥さん(セレブ女S)にやんわり引っ張って行かれます。(絶対いつかここ耳引っ張られると思う)これは演出だというのはわかってますが、あなた一体どういうキャラですか、しょーがないなあ(笑)。
・揺れる船。午後はディアボロがセレブSの背中におんぶ。ぴょこんって感じで。
・セーラーお掃除の場面。一等航海士と一緒に引っ込むディアボロ。昼は飛行機ごっこ?両手を広げたポーズで遊んでいたはずが、いつの間にかディアボロがしらっとした顔をしてばつの悪い一等航海士。午後は一等航海士にもおんぶしてもらってました。そーゆー日なのか。
・銀橋勢ぞろいでの雷鳴にばらばらと逃げる場面。昼はセレブ男Sが紳士(元航海士)の肩に手をかけ腰に手を回しエスコート。奥さん置いてきぼり。(ごめんね檀ちゃん……ってだからあんたの立ち位置は何だ)午後はセレブ男Sがやおら手を両耳に当ててしゃがみこみ(雷怖いのね)、両側から支えてもらって逃げてました。
・銀橋でディアボロと男(汐美さん)がはけていくところ、午後の回でケロさんがとうこさんに挨拶(人差し指と中指を揃えての敬礼みたいなの)してました。とうこさんはちょっと間を置いて返してました(ディアボロとして返すか、安蘭けいとして返すか迷ったような感じ?)。

          ***

その4・ベネチア
『ドルチェ・ヴィータ!』について、多くの人がさまざまな事を語る。
語りたくなるものだから。
人によって、視点によって、そのときそのときの感情によって、見えるものが違う。
美しいプリズムのような。幾重にも重なった騙し絵のような。
群盲、象を撫でる。それは何と美しい象。

更に、これは宝塚の舞台なので、世界を見て人も見て、全体を見て隅っこの小芝居も見てその日のアドリブもチェックして、視覚も聴覚も思考も感情も右脳も左脳もフル動員。
疲れるはずです(笑)。

素晴らしいなあ、と思う。これだけ多くの人にそういうことをさせるって。
とりあえず個人的なことをひとつ言えば。
私は多分、ヴェネツィアに行ったらこのショーのことを思い出すだろう。細い道の曲がり角に、薄暗い袋小路に、澱んだ運河の水面に、ドルチェ・ヴィータやディアボロや少女や、憧れに憑かれた男の姿を探すだろう。
楽しみだ。(と言うか行きたくなってきた)

オギー、オペラの演出やってくれないかな。『ホフマン物語』のヴェネツィアの幕なんてまんまオープニングの世界観でいけると思うんだけどな。
私がもしうなるほど金を持っていたら、オギーを口説き落として『ホフマン』を演出してもらう。歌手はビジュアルも考慮してオーディションで選んで。
取り留めのないまま今日はこの辺で。

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