「花のいそぎ」
 出演:真飛聖、琴まりえ、柚希礼音、他
 脚本・演出:大野拓史

小野篁を主人公にした、平安時代超能力学園ラブロマンス。

いや、いいお話でした。
切ないラブストーリーで、泣かされました。
さりげない描写や伏線が深くて、あとからじんわり、ほろりときます。(今もきてます)

最初、篁が子供のころの回想シーンから始まるんですが、モノローグ「それが母を見た最後だった……」が寂しげで、思わずハートを鷲づかみにされてしまいました。
真飛さんすごい。

その篁、最初は地味に登場。田舎出で、目立たないようにしている、ちょっと浮世離れした奴。
小野の一族の特異な力を持つ故に、陰に生きる宿命。遣唐使になって唐に渡ることだけが、しがらみを逃れる唯一の道。その日までは目立たず他者と親しくなりすぎず、ひたすら勉学に励まなければならない。
それなのに、常嗣をはじめとする学生仲間たちは何のわだかまりもなく近づいてくる。清原夏野の娘・三の君もまっすぐに思いを寄せてくる。
今まで、同年代の普通の人たちとは出会ったことがなくて。戸惑いながらも篁の心は段々と開かれていく。
でも、常に篁を監視する稗田の一族は、目立つこと、他者と親しむことを禁じて。
そんな中、三の君、それに常嗣が憧れる潔姫の二人ともが、藤原理本家の嫡男・良房と娶わせられることになり。

なんかもう、かわいそうな役です。
でも、その篁が抑えに抑えた感情を爆発させる。
三の君のひたむきな思いと、友人たちのいささか乱暴な気遣いに背を押され、三の君と手に手をとって走り出す。

ここから後はもう、見てもらうしかないって感じですが。(ビデオでもいいから)
最後、唐に行かない篁。
約束したから。たとえ貴女が憶えていなくても。約束を信じているから。
篁の表情は寂しげで、切なくて、でもどこかすがすがしくて。
自分で決めたことだから。自分で選んだことだから、全て引き受ける。
その、迷いのなさがすがすがしい。

本当に、いいお話でした。
出演者それぞれに役が振られていてあてがきされていて、そういう意味でもいい作品でした。
フィナーレがまた豪華絢爛たる美しさで。日本物に対して抱いていた若干の苦手意識も克服。

以下思いつくままに個別。

小野篁:真飛聖
かっこいい。真飛さんって上手いんだなあと今更ながらに。
変な言い方ですが、ヒガシ(少年隊)がやりそうな役だと(ちなみに常嗣が植草、良房が錦織。十年以上前の少年隊ミュージカルのイメージで)。つまり正統派二枚目ってことです。本来私は正統派二枚目はそれほど好みじゃないんですが、今回は心底かっこいいと思いました。
「少し分けてくれるかい?」の無垢ぶりが素敵で。三の君に対する優しげな態度がすごく素敵で。(同行のTちゃんはこの「はい」で真飛さんに落ちました)ほかの場面もみんな素敵で。

三の君:琴まりえ
かーわいー。
いや、まりえちゃんの素顔はもっともっと可愛いとは思うんですが。
ひたむきで一生懸命で、思ったことははっきり言う、自分の気持ちを隠さない女の子。(親の決めた許婚を無視ってのはすごい(^^;)
篁が三の君のことを好き、と言うのはちょっと唐突な感もあったんですが、きっとこのまっすぐなところに惹かれたのね、と納得できました。
「もしも私が命を落とすようなことになったら」と言う三の君と、そっと手でその口をふさぐ篁。良房の刃に倒れ、篁が「目を閉じてください」と言うのに「いやです」と答える三の君。このシーンすごく好きです。

藤原常嗣:柚希礼音
昨年末DCでわたるくん相手に二番手やっていた礼音くん、しっかり余裕の二番手ぶり。明るく元気なのが似合うのは予想通りでしたが、影や葛藤も似合っていたのが嬉しい意外さでした。「藤の花影から逃げ出せずむせ返る香りに息が詰まる」歌のところ、苦しげでやるせなくてびっくりした(そんな驚かんでも(^^;)。あと「お前がうらやましい」のところも。何だかわからないけど、やられたー!と思いました。

藤原良房:嶺恵斗
藤原北家の息子で主人公たちのライバル、途中まで定番の嫌な奴かと思っていたら、彼も彼で藤原の名を汚さぬよういっぱいいっぱい頑張っていると言うのがわかり。このお話、最初は一面的に嫌な奴に見えた人たちが、実はそれぞれに思いもあり背負うものがある、と描かれているところが好きです。
最初、三の君が自分との結婚に動揺しているところは余裕綽々で憎たらしいくらいなんですが、三の君が意識的に自分を無視して篁に寄り添うのを見てから、だんだん壊れていくのが何とも。三の君を傷つけて呆然となって、最後父親に支えられて退場する姿を、センターを見つつ横目で追ってしまいました。(ここ、お父さんが突き放さないで息子の愚かさを受け止めてやっているところがほっとしました)
芝居では役柄のせいで気がつかなかったけど、青海波(ここはまとぶん礼音くんチームと嶺くん真汐くんチームの4人で踊るんだけど、めちゃくちゃ格好いい)とフィナーレでは、スタイルのよさかっこよさを堪能しました。

源潔姫:南海まり
お姫様。三の君と違い、自分の立場も運命も自覚し自然に受け入れている感じの人。でも最後、篁との会話にそれだけでは収まらない心を覗かせて。
この南海まりちゃんがすごく綺麗で品があって、ザッツお姫様!って感じで、素晴らしかったです。いや綺麗だった。

藤原冬嗣:一樹千尋、清原夏野:萬あきら
おじさま二人。いや、渋いです、かっこいいです。
この二人も単なる若者たちの敵でなく、かつて理想の世を作ろうと夢と野望を抱いた友人同士だった。そして、今の世は若者たちには生きづらいかもしれないと知っている。この会話の終わりで、紗幕の後ろの篁と常嗣がかぶる演出が好きです。
フィナーレでこの二人と喜娘の柚美さんが絡むのもツボ。

済恩院喜娘:万里柚美
学生たちを侍らせてかっとんだ先生(尼さん)と思ったら、この人もやっぱりそれだけじゃなかった、というのが冬嗣、夏野の会話で明かされます。それがしっくり来るのはやっぱりお美しいから。お嬢様育ちな雰囲気が出てます。

稗田呼子:真白ふあり
以前からパンフの写真を見て「かわいい、舞台上で視認したい」と思ってました。叶いました。
やっぱり美人さんだった。今度は笑顔が見たいです。
それはさておき、この役も俊蔭との会話に動揺するでもなくしないでもなく、でもやっぱり心が揺らいでいるあたりがよかったなあと。

清原俊蔭:凜華せら
この人も出待ちのときに見て「すごい美人!誰?」と舞台上で確認したい人でした。叶いましたが、今回でサヨナラ……勿体無い。
いい役ですよね。生意気かと思いきや姉上大好き、先生大好き。それだけかと油断していたら呼子との会話で「わーそうきたか」と。
少年ぽさがすごく良かったです。かわいい。

小野瀧雄/岑守:にしき愛
この人も今までかっこいいと認識していませんでした(失礼)が、かっこよかった。特に篁パパがかっこいいというか美しいー。

文章院のみなさま
君たち楽しいぞ!(大喜)
役どころとしては家継(熱血青春)の彩海早矢くんが目立つんですがみんなキャラ立ってて面白かったです。私は伴須賀雄の銀河亜未ちゃんがやたらと目に付きました。
あと、ここに入れるのは何だけど稗田三尸の夢乃聖夏ちゃん。暗くて目立つ稗田一族、よかった、よく頑張った(?)。いい存在感でした。この人も次は笑顔が見たいけどね。

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